『原神』の剣の軌跡
本記事は『原神』の VFX がどういったテクニックで制作されているかを観察・推察しながら紐解き、開発者向けに知見として形に残しておくことを目的としており、ゲームプレイ時の録画を引用させていただいています。
🐸剣の軌跡
今回は『原神』のキャラクターの通常攻撃の軌跡をみていきます。
まずはナタの炎神マーヴィカさんの通常コンボ最初の2段。2段目が2回攻撃です。
後半の2段。武器を投げ飛ばしてキャッチしながらの横振り。
✨攻撃に合わせた動きの流れ
まず、原神はいわゆる Trail と一般的に言われる「剣が移動した位置にポリゴンを生成していく機能/技術」が通常攻撃では基本的に使われていません。円形モデルを回転させつつ UV スクロール + ちぎれで見せています。時系列で見てみます。
まず、剣をこれから振ろうとする時すでに軌跡モデル全体が表示され、剣を追い越しています。これは剣の振りの速さに対して軌跡の表示時間を延ばしたいことによるものだと思います。
剣を振った際に軌跡モデルは少し回転しているだけで、UV スクロール + ちぎれで回転の動きを見せていて、剣は軌跡モデルの先端を追い越しました。またうっすら渦巻く風も重ねています。
攻撃判定が残ってないであろう振りぬき後はちぎれなから消しています。そして動画で見ると振りぬくあたりから軌跡に屈折(背景を歪ませる)を重ねていることが分かります。
歪みが入っているのが分かりますか?
✨真横から見ると‥
軌跡モデルの端をみるとポリゴンで作られていて、分割数は控えめになっていることが分かります。
また真横から見てもペラペラに見えないように、ベースとなる黄色い軌跡のモデルは完全な平面ではなくお皿型にして上下2枚で挟んでいる気がします。
さらに円の外周の白く高輝度に光っている部分は別のモデルを重ねているように見えます。風切りがベースの軌跡から大分離れた位置に配置していることと、こちらも横から見ても立体に見えるようお皿のような形状をしています。
🐸バリエーション
他のキャラクターも少し見てみます。優雅でおしゃれなイメージのあるフォンテーヌより。
✨フリーナの場合
こちらは通常攻撃まで優雅な水神フリーナ様。フリーナは細身の剣に合わせて軌跡も細めですが、波打つ半透明のパーツが可愛いのとキラキラと十字の光が添えられていてお洒落!
波打つパーツは真横から見ると、進行方向に対してねじっているような形状に見えます。
ねじりの感じからは、もしかしたら Trail でやっているかも知れないですね。
また、細いラインを余韻で見せてシャープな印象を残しています。
✨エスコフィエの場合
こちらは料理長であり槍キャラのエスコフィエが重撃を出したときの軌跡です。
時系列で見ると、マーヴィカとは違ってエスコフィエはしっぽが掴んでいる槍を振り切ってから軌跡モデルが表示され始めています。斬撃が遅れて表示されているような感じです。こちらは素早い一撃の印象が強まっているのと、余韻を見せることを重視するコンセプトなのだと思います。
地面をえぐるように斬撃が追加されています。
軌跡全体が一瞬ものすごく高輝度になり、強いブルームが入ります。
地面から立つ斬撃と、それに合わせて小石が飛びつつ光の破片も飛び散っていて、さらに2つの細くて白い軌跡が追加されています。
最後に3本の軌跡が細くなりながら大量の粒子が表示されます。
この大量の粒子はスクリーンスペース UV の一枚絵をベースにしているように見えます。
🐸原神の通常攻撃の軌跡について
以上のように、原神の通常攻撃の VFX は星5のキャラクターでも星4のキャラクターでも、基本的に同じデザインです。フリーナやエスコフィエのようにキャラクターに合わせて少し装飾が入っている場合もありますが、剣も槍も弓もベースは黄色い斬撃です。
これは制作面においてはかなりの省コストになっていると思いますし、原神の「元素」という属性を扱ったシステム面では「物理属性」を表現するために分かりやすく統一している意味が強いかも知れません。
ただ、原神の通常攻撃が退屈に見える面も結構あると感じてしまっています。。特に円盤モデルの剣の軌跡は X で流れてくる色んな海外の人の作例を見ていても定番であることが分かりますが、マーヴィカのようにシンプルで正円なだけではかなり単調な印象になります。フリーナやエスコフィエくらい凝りたいところです。
他のゲームでは、Trail だけを表示させているタイプや一直線の剣筋を見せるタイプもオーソドックスですが、どのタイプにしても歪みだけで見せるものもよく見かけますね。特にフォトリアル系。
という訳で、どういう軌跡がカッコ良いかを探っていくためにも引き続き色んなゲームを見ていきたいと思います✨
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