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Railsでのselectメソッドとpluckメソッドの使い分け

2023/11/08に公開

RailsのActiveRecordを使う際には、効率的にデータを取得するための二つの強力なツール、select メソッドと pluck メソッドがあります。これらは似ていますが、適切に使い分けることでアプリケーションのパフォーマンスを大きく向上させることができます。

pluckメソッドの利用と返り値

pluck メソッドは、指定されたカラムの値を直接データベースから取得し、ActiveRecord オブジェクトのインスタンス化をせずに値の配列として返します。これは特に、カラムの値を素早く配列として取得したい場合に便利です。

すべてのユーザーのIDを配列として取得

user_ids = User.pluck(:id)
# => [1, 2, 3, 4, ...]
pluckメソッドの利用場面(具体的なコード例)
単一のカラムの値だけが必要な場合、メモリの使用量を削減するために pluck を使用します。

特定の投稿のすべてのコメントのIDを取得

comment_ids = Post.find(1).comments.pluck(:id)
# => [10, 11, 12, 13, ...]
データベースから取得したデータをRubyの配列として直接操作したい場合。

ユーザー名の配列を取得してアルファベット順に並べ替え

user_names = User.pluck(:name).sort
=> ["Alice", "Bob", "Charlie", ...]

selectメソッドの利用と返り値

select メソッドを使うと、指定されたカラムのみを含むActiveRecord::Relationオブジェクトを返します。このオブジェクトは、後続のクエリやメソッドチェーンにActiveRecordの機能を利用することが可能です。

activeなユーザーのIDと名前のみを取得

active_users = User.select(:id, :name).where(active: true)
# => #<ActiveRecord::Relation [#<User id: 1, name: "Alice">, #<User id: 2, name: "Bob">, ...]>

取得したデータに対してActiveRecordのスコープやメソッドチェーンを適用したい場合。

# 名前に"Smith"が含まれるユーザーを探し、彼らの年齢の平均を計算
average_age = User.select(:age).where('name LIKE ?', '%Smith%').average(:age)
# => 35.5

インスタンスメソッドやその他のモデルのメソッドを呼び出す必要がある場合。

# すべてのユーザーにメールを送信(Userモデルにsend_emailメソッドが定義されていると仮定)
User.select(:id, :email).find_each do |user|
  user.send_email
end

selectメソッドでは利用できてpluckメソッドでは利用できない場面

select メソッドを使用すると、指定されたカラムのみを含むActiveRecordオブジェクトが生成されます。これらのオブジェクトには、選択されたカラム以外のデータにアクセスしようとするとエラーが発生します。pluck メソッドでは、カラムの単純な値の配列が返されるため、モデルのインスタンスメソッドは利用できません。

エラーが発生する pluck の使用例:

# pluckメソッドを使ってIDと収益を取得
partnership_ids_and_revenues = Partnership.pluck(:id, :revenue)
partnership_ids_and_revenues.each do |id, revenue|
  # calculate_profitメソッドを呼び出そうとするが、これは配列に対して呼び出されるためエラーが発生する。
  profit = calculate_profit(revenue)
  # => NoMethodError: undefined method `calculate_profit' for Array
end

この例では、calculate_profit が定義されている Partnership のインスタンスメソッドであり、単純な数値の配列である revenue には適用できないため、NoMethodError が発生します。

select を使用した場合でも、取得していないカラムにアクセスはできない

# selectメソッドを使ってIDと収益を取得
partnerships = Partnership.select(:id, :revenue).where(active: true)
partnerships.each do |partnership|
  # costカラムがselectで取得されていないため、calculate_profitメソッド内でエラーが発生する。
  profit = partnership.calculate_profit
  # => NoMethodError: undefined method `cost' for #<Partnership:0x00007f...>
end

calculate_profit メソッドが cost カラムを参照すると仮定すると、select メソッドで cost カラムを指定していないため、partnership オブジェクトに cost メソッドが存在しないことにより NoMethodError が発生します。

selectメソッドの正しい利用例

## selectメソッドを使って必要なすべてのカラムを取得
partnerships = Partnership.select(:id, :revenue, :cost).where(active: true)
partnerships.each do |partnership|
  # ここではselectでrevenueとcostカラムを取得しているため、calculate_profitメソッドが正常に動作する
  profit = partnership.calculate_profit
  # calculate_profitメソッドは正常にrevenueとcostの値を使用でき、エラーは発生しない
end

このコードでは、calculate_profit メソッドが revenue と cost カラムに依存していると仮定しています。select メソッドでこれらのカラムを取得しているので、メソッド内で必要なデータにアクセスでき、エラーは発生しません。

pluck と select メソッドは、データベースからデータを取得する際にRailsで使用される強力なツールです。pluck は単純な値の配列を素早く取得したい場合に、select はActiveRecordの機能を利用した複雑なクエリを構築したい場合に適しています。エラーを避けるためには、使用するメソッドに応じて必要なカラムを適切に取得することが重要です。これにより、アプリケーションのパフォーマンスとメモリ効率を最大化することができます。

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