暗号通貨には手を出すな
TL;DR 長期的に見て投資価値が無いという話
これはパブリック型のブロックチェーンをベースにした暗号通貨の話で、プライベート(コンソーシアム)型ブロックチェーンの話は知りません。
解決の糸口すらない問題:金融犯罪
Bitcoinが電力を食い過ぎる問題は有名で、世界中の主要なスパコンを凌ぐ電力を地球規模で消費している。そこに関してはProof of Stakeだのの亜種で解けるかも知れないという話は出ている。実際、ゲーム理論の応用で「悪用しようとすると損をするので経済的利得の観点から協力する事になる」という方向で悪意のないシステムを作ろうというアイデアは面白い。
しかしながらこの方向性でどこまで掘っても解決しそうに見えない問題がある。金融犯罪である。
ゲーム理論によって守れるのは通貨システムを崩壊させない事までであって、その通貨システムのルールの上での詐欺まで防げるわけではない。ATMをガンダリウム合金で作ってもオレオレ詐欺は防げないのと同じである。PoSの仕組み上で大量の通貨を持っている人(≒マイナー)は基本的にその通貨の価値をわざわざ傷つける真似はしないが、マイナーはそもそもが投資家でありその通貨に投資した利回りを遥かに超える利得が見込める詐欺が行えそうなら喜んで"利確"するのはゲーム理論上で当然と言える。例えばこんな風に↓
暗号通貨は当初から匿名であることが価値であり、構造上簡単に匿名のwalletが作成できるので現実の人間と全てのwalletを紐付けるのは現実的ではない。というかそれが出来たらもはや普通の通貨であり、マイニングなんかせずに普通の金融の仕組みでトラザクションするのが経済的である。
現状の暗号通貨が作っている市場は無政府主義の理想のもとに地獄の無法地帯が錬成されており、見せ板でも仕手でも金持ちの思いのままに犯罪が出来うる。ちょっと手を出して小銭が稼げましたとか億り人になりましたという人が実在することは全く否定しないが、暗号通貨に関わった人全体で損益の統計を取れるならズルをしたプロが多く儲けており、その原資は深く考えずに手を出した一般人の損失であろう。
PoWとPoSに共通する「壊すのに掛かるコスト以上の利得が無いのにアルゴリズムを攻撃するやつは居ないはずだ」という理屈自体は正しかったが「ブロックチェーンの外で得られる分を加味すると利得は時折平気で破壊に掛かるコストを超える」という経済と犯罪の妙はアルゴリズムのレイヤーで解決しそうな気がしない、というか解決させたらそれはもはや暗号通貨ではないし、少なくともBitcoinやEthereumではない。
通貨としての安定性が疑問
他にも、例えばインフレ・デフレを調整する手段がないという問題がある。Bitcoinに至ってはむしろ通貨が自然にデフレになり続けるように設計されているがそんな方針で通貨システムがまともに機能するような自浄作用というか自律性が通貨自体にあるならFRBや日銀がやれ政策金利だの量的緩和だのイールドカーブだのを注意深く調整する必要はない。通貨システムは少なくともサトシ・ナカモトが考えていたよりも複雑で、デフレし続けてもインフレし続けてもどこかで綻びるしほったらかしでプロが四六時中見張っている通貨よりも優れたものへ自然に辿り着くと期待するのは楽観的に過ぎる。
また仮にそこを調整できる弁を設けようにも匿名で組織的にやり取りされる通貨の移動ログの何を見て調整したらいいというのか。
研究が進みにくい
暗号通貨はその消費エネルギーをメインにして問題だらけであり、色んな人からツッコミを受け続けて来たが「誰か頭のいい人が解決策を考えてくれるはずだから長期的に未来は明るいはず」という楽観論はよく投資家から耳にした。実はここが一番の問題なのだが、研究者(あるいはその雇用者)もある意味では投資家であり資金や時間やキャリアをこの分野につぎ込んで研究活動を行っており、匿名の裁けない詐欺が跋扈する世界に新しい物を持ち込む人が詐欺師ではないことを証明する手段がない。もちろん純粋な興味から取り組んでいるピュアな研究者が存在する事は想像に難くないが、この分野の任意の論文を取り出してきてそれが(故意もしくは無意識な)詐欺師のポジショントークではないという事を立証するのは容易ではない。安全な犯罪で巨額を手に入れうる研究分野はあまりにもお金に近すぎて歪みがちであるし歪んでいないことを保証する事すらままならない。
そんなわけで2040年を待たずして失望され尽くすか各国の政府から完全に違法扱いされて価値が暴落すると思っている。それまでに2000万円/BTCぐらいになっても驚きはしないけどそれはそれとして。
Discussion
よくわからずに乗っかている人が多いように感じます。
当記事を読んでバズワードに流されないように気をつけようと思いました。
投機対象として買う人が全体の99%の物を、
通貨と呼ぶことに違和感を覚えてしまいます。