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宇宙からの地球観測第8章 オルソ変換と地図投影

2024/06/02に公開

宇宙からの地球観測 第8章の章末問題はオルソ補正についてです。地面の標高情報も利用することで、どのように位置を正確に合わせていくのか、とても面白そうです。

問題 8.1

SAR を地図投影した画像として,システム補正とオルソ補正ののち、地図投影したものがある。後者が,正しい定義で地図投影されており、幾何学誤差が発生しないものである。以下の問いに答えなさい。
(1) システム補正した画像を地図に映してみたら,地図とおおむね100mのずれが見られた。この場合、SAR の入射角(地球橋円体上での)を45度とすると,ここの平均高度はいくらか?
(2) この100mのずれはどの方向に発生したと思われるか?

基本数式の理解

SARの場合システム補正段階だと、この図の 本来P'' に表示したい点がP' として表示されます。
三角形 O-SS-P' において SARの原理上R=OP' なので、
(本文式8.4) R^2=(H-h)^2+x^2=H^2+x'^2
x でまとめると
(本文式8.5) x=\sqrt{x'^2+2hH-h^2}

式 (8.5) から、近似的に式 (8.6) を導出します。

小さい h の近似

h が小さい場合を考えます。このとき、式 (8.5) をテイラー展開の考え方を用いて近似します。

参考:
https://manabitimes.jp/math/1018#2

\sqrt{x'^2 + 2hH - h^2} \approx x' + \frac{2hH - h^2}{2x'}

ここで、\Delta x = x - x' と定義します。これにより、次のように書き換えることができます:

\Delta x = \sqrt{x'^2 + 2hH - h^2} - x'

したがって、

\Delta x = \left( x' + \frac{2hH - h^2}{2x'} \right) - x' = \frac{2hH - h^2}{2x'}

ここで、h^2 は非常に小さいため無視できるとすると:

\Delta x \approx \frac{2hH}{2x'} = \frac{hH}{x'}

角度を用いた近似

図を考えると、角度 \theta' は次のように表せます:

\tan \theta' = \frac{x'}{H}

したがって、

\Delta x \approx \frac{h}{\tan \theta'}

これにより、本文式 (8.6) が得られます:

\Delta x = x - x' \approx \frac{h}{\tan \theta'}

回答8.1

さて、問題を読んでいて下記の部分でだいぶ悩みました。

SAR の入射角(地球橋円体上での)を45度とすると,

問題で指定のある入射角は、上記8.6の公式でいっているのは \theta 'のtangentではないですし、また\thetaとも厳密に言えばちがうはずです。

ただ、実際にはHは500km 程度で、offnadir もそんなに大きくは入射角とずれないことをかんがえると45度だとすると xも500km 程度です。 だとすると今回\Delta xが100mとすると実際には下記のような状況であり(実際はもっと極端)、あんまり細かい角度の違いは小数点2桁までにはでてこないのかと理解しました。

なので素直に8.6 に 問題の設定を代入して

\Delta x = 100 \approx \frac{h}{\tan 45\degree}

h \approx 100

平均高度は100m ですね。

また、SAR衛星ではシステム補正段階では 上記の図のx'' と捉えてしまうので、
衛星の近接方向に誤差は発生しています

問題 8.2

光学センサを地図投影した画像として,システム補正とオルソ補正ののち、地図投影したものがある。後者が、正しい定義で地図投影されており,幾何学誤差が発生しないものである。以下の問いに答えなさい。
(1) システム補正した画像を地図に映してみたら,地図とおおむね100mのずれが見られた。この場合,光学センサの入射角(地球橋円体上での)を45度とすると,ここの平均高度はいくらか?
(2) この100mのずれはどの方向に発生したと思われるか?

基本公式の理解

光学のズレ量の計算はSARにくらべて直線で考えられるので大分簡単です。

基本的な三角関数 \tan \theta = \frac{b}{a}

これを上記の図三角形PP''P''' に当てはめれば
\tan \theta = \dfrac{\Delta x}{h}
問題の設定より
\tan 45\degree = \dfrac{100}{h}
h=100m と分かりました。

また、光学の場合はずれるのは対象物から衛星とは反対の方向にずれます。

問題 8.3

等緯度経度座標系を使う場合,赤道上で10mのスペーシングを設定した。その際,北緯60度での1ピクセルの大きさ(サイズと面積)を求めなさい。基準緯度は0度とする。

基本用語の理解

最後の問題はちょっとひどいです。
本文の説明で一言も等緯度経度座標系、スペーシングなど説明してくれていないです。また色々検索をしましたが、等緯度経度だけではどうもあいまいで回答を一意に決められないように思います。

等緯度経度座標系の説明

等緯度経度座標系(Latitude-Longitude Grid)は、地球を緯度と経度のグリッドに分割して表現する座標系です。この座標系では、緯度は地球の赤道からの角度で表され、経度は地球の子午線からの角度で表されます。

  • 緯度 ((\phi)):
    • 赤道を基準に0度とし、北極に向かって90度、南極に向かって-90度までの範囲です。
  • 経度 ((\lambda)):
    • 本初子午線を基準に0度とし、東へ向かって180度、西へ向かって-180度までの範囲です。

スペーシングの概念

スペーシングとは、地球表面上の等緯度経度グリッドの各セル(ピクセル)の大きさを指します。赤道上のスペーシングが10mで設定されている場合、緯度や経度方向に沿ったセルのサイズが10mとなります。

地図投影技法あれこれ

メルカトル図法

  1. 概念と別名:

    • 概念: メルカトル図法は、角度を保つ円筒図法の一種で、航海図として広く使われます。経線と緯線が直交するため、角度を正確に測定できます。
    • 別名: 正角円筒図法 (Cylindrical Conformal Projection)
  2. 高緯度での緯度経度1度の拡大縮小:

    • 経度方向: 高緯度では経度の距離が大きくなります。
    • 緯度方向: 高緯度では緯度の距離も大きくなります。
  3. 実際の距離と投影図上の距離の変化:

    • 赤道付近では実際の距離と投影図上の距離がほぼ一致します。
    • 高緯度帯では投影図上の距離が無限大に近づきます。

正距円筒図法

  1. 概念と別名:

    • 概念: 正距円筒図法は、緯度経度の距離を等距離で表現する図法です。経線と緯線は直交し、各経線間の距離が等しく保たれます。
    • 別名: 等距円筒図法 (Equidistant Cylindrical Projection)
  2. 高緯度での緯度経度1度の拡大縮小:

    • 経度方向: 緯度に関係なく一定の距離。
    • 緯度方向: 高緯度では緯度の距離が圧縮されます。
  3. 実際の距離と投影図上の距離の変化:

    • 赤道付近では実際の距離と投影図上の距離がほぼ一致します。
    • 高緯度帯では実際の距離が短くなります。

ユニバーサル横メルカトル図法 (UTM)

  1. 概念と別名:

    • 概念: UTM図法は、地球を60のゾーンに分け、各ゾーンを個別に横メルカトル図法で投影します。地球全体を均一に扱うのではなく、局所的に正確な地図を作成することを目指しています。
    • 別名: Universal Transverse Mercator Projection
  2. 高緯度での緯度経度1度の拡大縮小:

    • 経度方向: 各ゾーンの中央で正確で、端に向かうほど歪みます。
    • 緯度方向: 高緯度では若干の歪みが生じますが、メルカトル図法ほどではありません。
  3. 実際の距離と投影図上の距離の変化:

    • 赤道付近では実際の距離と投影図上の距離がほぼ一致します。
    • 高緯度帯でも一定の精度が保たれますが、ゾーンの端で若干の歪みが生じます。

まとめ表

図法 概念と別名 高緯度での拡大縮小 実際の距離と投影図上の距離の変化
メルカトル図法 正角円筒図法(Cylindrical Conformal Projection) 経度方向・緯度方向ともに拡大 赤道付近で一致、高緯度帯で無限大に近づく
正距円筒図法 等距円筒図法(Equidistant Cylindrical Projection) 経度方向は一定、緯度方向は圧縮 赤道付近で一致、高緯度帯で短くなる
ユニバーサル横メルカトル図法 Universal Transverse Mercator Projection ゾーン中央で正確、端で歪み 赤道付近で一致、高緯度帯でも一定の精度保つが端で歪む

回答8.3

正距円筒図法を想定して回答します。

北緯60度での経度方向のピクセルサイズ

地球を簡易的に球とみなすと、緯度 \phi における経度方向の距離は、赤道上の距離に \cos \phi を掛けたものになります。これは、地球が球体であるため、緯度が高くなると円周が小さくなることによります。
北緯60度における経度方向の1ピクセルのサイズ S_{\lambda} は次のように計算されます:

S_{\lambda} = 10 \times \cos 60^\circ = 10 \times 0.5 = 5 \text{ m}

北緯60度での緯度方向のピクセルサイズ

緯度方向の1ピクセルのサイズは緯度によらず一定です。したがって、赤道上でのスペーシング10mは北緯60度でも変わりません

結論

北緯60度での1ピクセルの大きさは次の通りです:

  • サイズ:

    • 経度方向:5 m
    • 緯度方向:10 m
  • 面積:

    • 50 m^2

Discussion