宇宙からの地球観測第5章 受動型センサ
宇宙からの地球観測 第5章の章末問題は受動型センサの代表として光学レンズの性質についての問題です。高校の時になんとなく勉強したなという内容が詳しく説明されていて、わかりやすかったです。高校の物理の授業は宇宙という科目に置き換えると理解しやすいですね。
問題5.1
人間が感じることができる波長の範囲は400~700 nmといわれる。
今,直径1cmのレンズを用いて,38万km離れた月を見たとすると,月の表面で認識できる大きさ(分解能)はいくらか?その範囲を示しなさい。
基本用語の理解
この章ではレンズの分解能、特に「回折限界」について説明しています。これを理解するには、光の波の性質とレンズがどのように光を集めるかについて知る必要があるようです。
光の回折
光は波の性質を持っており、狭い隙間を通過するときには「回折」という現象が起こります。これは、光が隙間の端を「曲がる」現象で、その結果、光は直進するのではなく広がってしまいます。
レンズの回折限界
レンズが光を集めるとき、理想的にはすべての光を一点に集中させたいのですが、回折によって完全な一点には集まらず、ある程度広がった点(焦点)となります。この点の広がり具合がレンズの「分解能」を決定し、これが小さいほど細かい詳細を見ることができます。
利得(Gain)
光学における「利得」は、レンズが光をどれだけ効果的に集中させるかを示す指標です。光学系では、この利得は主にレンズがどれだけ多くの光を集光点に集めるか、つまりレンズが受け取る光の量と、焦点に集める光の強度との比率によって決まります。具体的には、レンズの絞り(アパーチャー)の大きさ、レンズの形状、そして材質が利得に影響を及ぼします。
メインビーム(Main Beam)
レンズにおける「メインビーム」は、レンズを通過した光が最も集中する領域、つまり焦点となる部分を指します。これは光の経路がレンズの屈折によって最も効率よく収束される方向です。カメラレンズであれば、このメインビームが被写体を明瞭に映す部分に相当し、望遠鏡の場合は天体を観測する際の主要な視野になります。
半値幅(Half-Power Beamwidth, HPBW)
光学において、「半値幅」はレンズが形成するイメージの焦点の鋭さまたは解像度を示します。具体的には、光が焦点を形成する際に、その最高点(ピーク)から強度が半分(半値)に落ちるまでの広がりの角度または距離です。半値幅が狭いほど、レンズはより高い解像度でイメージを形成できることを意味し、より鋭い焦点を提供します。
数式とその意味
分解能の限界(半値幅)は以下の式で与えられます:
(本文5.6)
ここで、
-
(シータ)は、レンズが作る像の最小の角度の広がりです。\theta -
(ラムダ)は、光の波長です。\lambda -
はレンズの開口部の直径です。L
この式は、レンズの直径が大きくなるほど、または使用する光の波長が短くなるほど、分解能が高くなる(
(本文5.7)
ここで、
-
は分解能(物体上の最小の詳細を見分ける能力、例えば月面上のクレーターの最小サイズ)。\delta -
は使用する光の波長。\lambda -
は観察対象までの距離(例えば地球から月までの距離)。D -
はレンズの直径です。L
回答5.1
import numpy as np
# 定数の定義
D = 380000e3 # 月までの距離 [m]
L = 0.01 #Lens 直径
# 式 (5.8)
def calc_resolution(wave):
return (wave * D ) / L
# 課題5.1 での人間の可視光範囲
print(f"Min:{calc_resolution(400e-9):.2f}")
print(f"Max:{calc_resolution(700e-9):.2f}")
--
Min:15200.00
Max:26600.00
よって、分解能は、15.2kmから26.6 km までということが分かりました。
(レンズの直径と波長だけで決まってしまうというのは少し不思議な気がします。レンズの材質とか、磨き方とかは理想のものを想定しているんですかね。)
問題 5.2
(1) 人工衛星の周期を100分,衛星の観測幅を100km とする。この衛星が1秒あたり、50000バイトのデータを取得したとする。そうすると,衛星は地球を1周する間に何バイト取得するか?
(2) 次に,地球は自転している。上記衛星が赤道を起点として南北方向に地球を1周して帰ってきたとき,地球は東に100km移動していた。このようにして,衛星が全地球を観測したとき、人工衛星が取得するデータの総量はいくらか?
回答5.2
(1)は単純に掛け算するだけですね
50000 byte * 100 * 60 = 300,000,000 byte です。
(2) は観測幅100km で、100km 移動するので重なりは0% 赤道一周4万キロとして400周で全地球観測となるので掛け算すると
300e6 * 400 = 12e10 byte です
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