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SAR衛星基礎

2024/02/11に公開

SAR衛星基礎

下記総務省サイトにある資料がとてもわかり易い。
9GHz帯航空機搭載型合成開口レーダーシステム作業班
(第1回) 東海大学情報技術センター 須 藤 昇
https://www.soumu.go.jp/main_content/000362101.pdf
以下いくつか抜粋します。

SAR用語

用語 解説
SAR synthetic aperture radar 合成開口レーダー 移動させることによって仮想的に大きな開口面(レーダーの直径)として働くレーダー
ドップラーシフト (Doppler Shift) 波源の動きにより波長や周波数が変わる現象。SARでの解析に重要。
バックスキャター (Backscatter) SARが放射した電波が地表に反射して戻ってくる強度。物体の種類や形状、湿度などにより異なる。
ポーラリメトリ (Polarimetry) 電磁波の偏波状態を測定・解析する技術。SAR画像の解析に使われる。
①Azimuth direction(アジマス方向) SAR搭載衛星の飛行方向
②Slant range(スラントレンジ) SARから地上の対象物までに 引かれた線この線上に対象物から反射されたデータが記録される
③Ground range(グランドレンジ) SAR衛星の直下から地表面上の対象物の位置の方向
④Swath(スワス) レンジ方向の画像 シーンの幅。
⑤Range direction(レンジ方向) 衛星の飛行方向から直角に対象物に向かう方向

用語 解説
① Off nadir angle(オフナディア角) 衛星の直下と衛星から対象物を覗いた線とがなす角
② Incident angle(入射角) 対象物の法線と対象物から衛星まで引いた線とがなす角
③ Far range(ファーレンジ) SARが地表を照射する範囲のうち、衛星から遠い部分
④ Near range(ニアレンジ) SARが地表を照射する範囲のうち、衛星に近い部分
⑤ Nadir(ナディア) 衛星から地表への真下の地点

合成開口とは

  • レーダは、自ら電波を発出し、対象物から反射された電波を受信し映像化する
  • 通常、レーダーで観測する場合、分解能を向上させるためにはレーダーのアンテナの
    指向性を絞って細いビームを照射すればよいが、指向性を高めるにはアンテナを大きく
    する必要がある
  • 衛星に搭載する機器としては非現実的な大きさになるそのため、人工衛星の安定高
    速飛行を利用して、レーダービームの幅全体を使用して連続観測を行う

アジマス(直進)方向はドップラー処理で合成することで分解能をあげる

  • 連続観測したデータをドップラー処理することによって、あたかも大きいな開口のアンテ
    ナで観測したように分解能を高めるように工夫したものが合成開口レーダである
  • しかし、合成開口によって向上するのは衛星の進行方向(アジマス方向)の分解能
    だけである

レンジ(直行)方向はパルス圧縮技術

  • 高分解能を実現するためには、送信波のパルス幅を小さくすればよい
  • パルスのエネルギーはパルスのピーク電力とパルス幅で定義されるが、ピーク電力には限界が
    あるので、必然的に、パルス幅が広くなる
    • レンジ分解能を上げるためにパルス幅を狭くするとパルスのエネルギーが小さくなり、信号対雑
    音比(SNR)が低下する
    • そこで、パルス圧縮技術(チャープ変調)を用いて、送信電力を大きくしたまま見かけ上の
    送信パルス幅を小さくする
    • チャープ変調とは、周波数を時間に対して直線的に変化させる変調方式である
    • 合成開口とチャープ変調により、高高度から高い地上解像力を得ることが可能となる

分解能の計算方法

SARの分解能の理論式は次のようになります。

  • アジマス方向の分解能: (R_a)
    アジマス方向のアンテナ長を (l)[m] とすると
    [ R_a = \frac{l}{2} ] [m]

  • レンジ方向の分解能: ( R_r )
    チャープ信号の帯域幅を ( B ) [Hz]、光の速度を ( c ) [m/s]とすると
    [ R_r = \frac{c}{2B} ] [m]

  • グラウンドレンジの分解能は: ( R_g )
    入射角を ( \theta ) とすると
    [ R_g = \frac{c}{2B \sin \theta} ] [m]

上記の式をpythonで確認してみます。 光の速度は簡易的に30万km/s として計算します。
PALSAR-2の帯域幅は84MHz なので代入してみると入射角により2-10m のグランドレンジの分解能が計算できることがわかりました。

>>> c=30*10000*1000
>>> B=84*1000*1000
>>> c/(2*B)
1.7857142857142858
>>> c/(2*B*math.sin(math.radians(45)))
2.525381361380527
>>> c/(2*B*math.sin(math.radians(10)))
10.283518719899346
>>> c/(2*B*math.sin(math.radians(70)))
1.9003174508498433

In-SAR(インターフェロメトリ測量)

SARによって観測されるデータには、後方散乱の情報に加えて、地道上のSARと地上の電磁波の往復の時間差(位相情報)に依存するマイクロ秒の位相情報が含まれている。

インターフェロメトリ測量では、地道上においる衛星に搭載されたSARが別の時点で同じ位置から観測した2つの電磁波データを手法に基づいて位相情報の差を解析するものであり、標高データの作成や地形の変移を計測する手法

なお、手法させる2つのSAR画像のうち、一方を「マスタ画像」もう一方を「スレーブ画像」と呼ぶ
インターフェロメトリ測量を行うことで、標高データの算出が可能
差分インターフェロメトリ測量を行うことで、地形変移を抽出することが可能

標高データ算出処理の概要

SARのインターフェロメトリ測量による標高データの算出の概念的な原理は以下の図に示す
図より、標高 (h) は以下の式で算出することができる
[ h = H - r \times \cos \theta ]

ここで、衛星の高度 (H) と、衛星と地表点との距離 (r) は衛星の軌道情報と観測データから取得できる。

そして、θ (オフナジア角) の値をΔrに起因する2つのSAR画像の位相差から算出することが、SARインターフェロメトリ測量による標高データ算出の原理である。

なお、衛星の高度 (H) と、衛星と地表点との距離 (r) を正確に把握するとが、標高データの精度に大きく影響する

よって、衛星の軌道データや観測データの精度は、SARインターフェロメトリ測量による標高の算出に極めて重要な要素となる

データ利用方法例

  • 散乱強度データの、𝜎0の値を使い、判別等に使用
    • 例えば、森林伐採や水稲の生長に伴い、反射強度が変化する
    • 伐採監視や水田の面積を計測したりすることが可能
  • SARのデータの、位相情報の利用(Interferometry解析)
    • 地表の高度や地震による地殻変動、地下水のくみ上げによる地盤沈下等を観測
  • SARのデータの、偏波の情報の利用(Polarimetry解析)
    • 地表物からの散乱で偏波面が変化
    • 地表物の分類
  • 樹木の、高さと樹木の種類による偏波の反射の違いの利用
    • Interferometry とPolarimetry を組み合わせて、バイオマス量の推定が可能

https://sorabatake.jp/3364/

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