ブリッジ回路の問題は3種類の解法で対処![例題つき]

2024/09/15に公開

本記事の内容

本記事では以下の内容について解説します。

  • 平衡条件が成立するブリッジ回路の解法
  • テブナンの定理・Δ-Y変換・ループ法を用いて、不平衡ブリッジ回路の電流や合成抵抗を求める方法

平衡条件が成立するブリッジ回路の解法

下図のように、中間で橋を渡すように抵抗が接続された直並列回路をブリッジ回路といいます。

ブリッジ回路の平衡条件R_1 R_4 = R_2 R_3 で表されます。これが成立するときは橋渡しに接続された抵抗 R_5 には電流が流れないため、ブリッジ回路から除去しても回路の動作には影響を与えません。平衡条件が成立するブリッジ回路の問題を解く上では、初めに平衡条件が成立しているかを調べ、成立している場合は抵抗を除去して考えると見通しが良くなります。

不平衡ブリッジ回路の解法

不平衡ブリッジ回路は、ブリッジ回路の平衡条件 R_1 R_4 = R_2 R_3 が成立しないブリッジ回路です。この場合、橋渡しに接続された抵抗 R_5 にも電流が流れるので、平衡時のようにその抵抗を除去して考えることはできません。

では、どのようにして不平衡ブリッジ回路を解析すればよいのでしょうか。ここでは、その具体的な方法として3つ紹介します。

解法1 テブナンの定理

テブナンの定理は、「回路上の任意の2端子を選んだ時、その間の開放電圧・内部抵抗を用いて等価回路を構成できる」というものです。この定理を用いれば、抵抗 R_5 に流れる電流を見通しよく求めることができます。

下図のように抵抗 R_5 の両端の節点を a, b として、この端子間の開放電圧 V_0 を求めます。

a の電位から、点 b の電位を引くことで、開放電圧 V_0 は次式で与えられます。

V_0 = \left(\frac{R_2}{R_1 + R_2} - \frac{R_4}{R_3 + R_4}\right) E

次に、内部抵抗を求めます。テブナンの定理を用いて内部抵抗を求めるときは、電圧源を短絡、電流源を開放します。今回は電圧源 E を短絡することで、内部抵抗 R_0 は次式で与えられます。

R_0 = \frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2} + \frac{R_3 R_4}{R_3 + R_4}

抵抗 R_5 を除去し、電圧源 E を短絡したときの回路は、右側の回路と等価であることに注意してください。

以上より、ブリッジ回路は V_0 の電圧源と内部抵抗 R_0 の等価回路で表現されるので、抵抗 R_5に流れる電流 I は次式で表されます。

I = \frac{V_0}{R_0+R_5}

解法2 デルタスター変換(Δ-Y変換)

ブリッジ回路にあるΔ(デルタ)回路の部分をY(スター)回路に変換することで、ブリッジ回路の合成抵抗を見通しよく求めることができます。

Δ回路、Y回路の各抵抗は、次式で与えられます。

R_a = \frac{R_{ab}R_{ca}}{R_{ab}+R_{bc}+R_{ca}}
R_b = \frac{R_{bc}R_{ab}}{R_{ab}+R_{bc}+R_{ca}}
R_c = \frac{R_{ca}R_{bc}}{R_{ab}+R_{bc}+R_{ca}}

下図のようにΔ-Y変換を施すことで、ブリッジ回路全体の合成抵抗を求めることができます。

解法3 ループ法

ブリッジ回路における閉ループに、時計回り(または反時計回り)の電流を仮定し、それらを未知数とする連立方程式を解くことで回路を解析する手法をループ法といいます。

ブリッジ回路には、下図の3つのループがあります。

各ループに時計回りの電流を仮定し、電圧則から次式の連立方程式を得ます。

\left\{ \begin{align*} R_1I_1+R_3(I_1-I_3)+R_5(I_1-I_2) &= 0 \\ R_2I_2+R_4(I_2-I_3)+R_5(I_2-I_1) &= 0 \\ R_3(I_3-I_1) + R_4(I_3-I_2) &= E \end{align*} \right.

連立方程式を整理すると

\left\{ \begin{align*} (R_1 + R_3 + R_5)I_1 - R_5 I_2 - R_3 I_3 &= 0 \\ -R_5I_1 + (R_2+R_4+R_5)I_2 - R_4I_3 &= 0 \\ -R_3I_1 - R_4 I_2 + (R_3+R_4)I_3 &= E \end{align*} \right.

となります。行列の形で表現すると次式のようになります。

\left[ \begin{array}{ccc} R_1+R_3+R_5 & - R_5 & - R_3 \\ -R_5 & R_2+R_4+R_5 & - R_4 \\ -R_3 & - R_4 & R_3+R_4 \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} I_1 \\ I_2 \\ I_3 \end{array} \right] = \left[ \begin{array}{c} 0 \\ 0 \\ E \end{array} \right]

以上より、各ループの電流は3次正方行列の逆行列を求めることで算出できます。

\left[ \begin{array}{c} I_1 \\ I_2 \\ I_3 \end{array} \right] = \left[ \begin{array}{ccc} R_1+R_3+R_5 & - R_5 & - R_3 \\ -R_5 & R_2+R_4+R_5 & - R_4 \\ -R_3 & - R_4 & R_3+R_4 \end{array} \right]^{-1} \left[ \begin{array}{c} 0 \\ 0 \\ E \end{array} \right]

例題: 平衡条件が成立するブリッジ回路

問題

図に示したブリッジ回路について、以下を求めてください。ただし、答えは小数第2位を四捨五入して小数第1位まで求めてください。

(1) 橋渡しに接続された抵抗に流れる電流 I

(2) ブリッジ回路の合成抵抗

答え

(1) 0\,\mathrm{A}
(2) 2.0\,\mathrm{\Omega}

解説

(1)
与えられたブリッジ回路の抵抗値を調べると、平衡条件を満たすことが分かります(1\times4 - 2\times 2 = 0)。よって、橋渡しに接続された抵抗には電流が流れません。

(2)
(1)より、ブリッジ回路の橋渡しに接続された抵抗を除去しても、ブリッジ回路の動作に影響を与えません。橋渡しに接続された抵抗を除去した回路は、下図と等価です。

これは 3\,\mathrm{\Omega}6\,\mathrm{\Omega} の並列接続なので、求める合成抵抗は次式で与えられます。

R = \dfrac{3\cdot 6}{3 + 6}\,\mathrm{\Omega} = 2.0\,\mathrm{\Omega}

例題: 不平衡ブリッジ回路

問題

図に示したブリッジ回路について、以下を求めてください。ただし、答えは小数第2位を四捨五入して小数第1位まで求めてください。

(1) 橋渡しに接続された抵抗に流れる電流 I

(2) ブリッジ回路の合成抵抗

答え

(1) 1.0\,\mathrm{A}
(2) 1.4\,\mathrm{\Omega}

解説

(1)
この回路は平衡条件を満たさないため、橋渡しに接続された抵抗を除外することはできません。ここでは、テブナンの定理を利用して解くことを考えます。橋渡しに接続された抵抗の開放電圧 V_0 は次式で与えられます。

V_0 = \left(\frac{3}{2+3} - \frac{1}{1+1}\right)\times 27\,\mathrm{V} = 2.7\,\mathrm{V}

電圧源を短絡したときの両端子から見た内部抵抗 R_0 は次式で与えられます。

R_0 = \frac{1\cdot 1}{1+1} + \frac{2\cdot 3}{2+3} = 1.7\,\Omega

したがって、テブナンの定理より電流 I が求められます。

I = \frac{2.7\,\mathrm{V}}{1\,\Omega + 1.7\,\Omega} = 1.0\,\mathrm{A} (2)

ブリッジ回路にΔ-Y変換を適用すると、下図のような等価回路が得られます。

したがって、合成抵抗 R が求められます。

\begin{align*} R = \dfrac{1}{2} + \dfrac{\dfrac{5}{4}\cdot \dfrac{7}{2}}{\dfrac{5}{4} + \dfrac{7}{2}} &= \dfrac{27}{19}\,\Omega \\ &= 1.42...\,\Omega \\ &\sim 1.4\,\Omega \end{align*}

別解: ループ法を用いた解法

ループ法を用いる解法を考えます。下図のように、時計回りのループ電流を仮定します。

各ループに電圧則を適用して、次式を得ます。

\left[ \begin{array}{ccc} 4 & -1 & -1 \\ -1 & 5 & -1 \\ -1 & -1 & 2 \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} I_1 \\I_2 \\I_3 \end{array} \right] = \left[ \begin{array}{c} 0 \\ 0 \\ 27 \end{array} \right]

3次正方行列の逆行列を計算することで、各ループの電流は以下のように求められます。

\left[ \begin{array}{c} I_1 \\ I_2 \\ I_3 \end{array} \right] = \frac{1}{27} \left[ \begin{array}{ccc} 9 & 3 & 6 \\ 3 & 7 & 5 \\ 6 & 5 & 19 \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} 0 \\ 0 \\ 27 \end{array} \right] = \left[ \begin{array}{c} 6\,\mathrm{A} \\ 5\,\mathrm{A} \\ 19\,\mathrm{A} \end{array} \right] (1)

橋渡しに接続された抵抗に流れる電流 I は、電流の向きに注意して I_1 - I_2 で与えられます。

I = I_1 - I_2 = 1.0\,\mathrm{A} (2)

電流 I_3 より、合成抵抗 R は電圧源を E とおくと、R=E/I_3 で与えられます。したがって、求める合成抵抗は次式で表されます。

R = \frac{27}{19}\,\Omega \sim 1.4\,\Omega

https://manabitimes.jp/math/1153

参考文献

  • 塩沢考則(2019)『完全マスター 電験三種受験テキスト 理論(改訂3版)』オーム社

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