📌

熱方程式(偏微分方程式)をラプラス変換を用いて解く手法

2022/02/10に公開

偏微分方程式で記述される非定常熱伝導は時間の変数と位置の変数によって偏微分方程式で記述されます(熱方程式).ここでは一次元熱方程式をラプラス変換によって解く方法を示します。

熱方程式

以下の熱方程式を考えます.

\begin{equation} \frac{\partial u}{\partial t}=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2} \end{equation}
\begin{equation} \begin{cases} u|_{x=0}=0,u|_{x=1}=1 & (境界条件) \\ u|_{t=0}=0 & (初期条件) \end{cases} \end{equation}

\mathcal{L}[u(z,t)]=U(z,s)とすると(1),(2)式は次のようにラプラス変換されます.

\begin{equation} \frac{d^2 U}{d x^2}-sU+u|_{t=0}=\frac{d^2 U}{d x^2}-sU=0 \end{equation}
\begin{equation} \begin{cases} u|_{x=0}=0,u|_{x=1}=\frac{1}{s} & (境界条件) \\ u|_{t=0}=0 & (初期条件) \end{cases} \end{equation}

(3),(4)式を解くことによってU(z,s)を導出します.導出過程は省略しますがU(z,s)は以下のようになります.

\begin{equation} U(x,s)=\frac{\sinh{(x\sqrt{s})}}{s\sinh{(\sqrt{s})}} \end{equation}

ブロムウィッチ積分を用いた逆ラプラス変換

(5)式を逆ラプラス変換によって時間領域における解の導出を試みます.有理多項式で記述されるs関数の逆ラプラス変換は部分分数分解によって導出することができますが一方でU(z,s)は非有理多項式です.この場合,以下のブロムウィッチ積分と留数定理を利用します.

\begin{equation} f(t)=\frac{1}{2\pi i}\int_{c-\infty i}^{c+\infty i}F(s)e^{ts}ds=\sum_{n=0}^\infty \mathrm{Res} [F(s)e^{ts},s_n] \end{equation}

ここで,\mathcal{L}[f(z,t)]=F(z,s)です.また,cはラプラス変換における収束座標です.今回扱う熱方程式では\mathrm{Re}(s)>0であるため足し合わせる留数は虚軸を含む複素平面の右側の全ての極における留数です.

\mathrm{Res} [U(x,s)e^{ts},s_n]を計算するために極の座標を求めます.\sqrt{s}=i\alphaと変数変換するとU(s)e^{ts}は次のようになります.

\begin{equation} U(x,s)e^{ts}=\frac{\sin{(x\alpha)}}{-\alpha^2\sin{(\alpha)}}e^{-t\alpha^2} \end{equation}

\alpha^2\sin{(\alpha)}=0を解くと

\begin{equation} \alpha= \begin{cases} \ 0 \\ n\pi & (n=1,2,3\cdots) \end{cases} \end{equation}

(8)式より\alpha=0の留数は

\begin{equation} \mathrm{Res} [U(x,s)e^{ts},0]= \lim_{\alpha \to 0}\frac{\sin{(x\alpha)}}{\sin{(\alpha)}}e^{-t\alpha^2}=x \end{equation}

(8)式より\alpha=n\pi \quad (n=1,2,3\cdots)の留数は

\begin{align} \mathrm{Res} [U(x,s)e^{ts},-n^2\pi^2]&= \lim_{\alpha \to n\pi}\frac{(-\alpha^2-(-n^2\pi^2))\sin{(x\alpha)}}{-\alpha^2\sin{(\alpha)}}e^{-t\alpha^2} \\ &=\frac{2(-1)^n}{n\pi}\sin{(n\pi x)}e^{-n^2\pi^2t} \end{align}

以上より

\begin{equation} u(z,t)=x+ \frac{2}{\pi}\sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^n}{n}\sin{(n\pi x)}e^{-n^2\pi^2t} \end{equation}

となり時間領域での厳密解を導出することができました.

Discussion