x402scanで可視化される、自律的に支払うWebの未来
こんにちは!Web3 Advent Calendar2025の8日目を務めさせていただく、ブロックチェーンエンジニアの小原冬威です。
ブロックチェーン×AI Agentで自律経済圏を創るWeb3開発組織Komlock labでエンジニアをしています。
今年の1月にWeb3になんとなく興味を持ち始めてから、気が付けばこの領域で本格的に開発を進めるようになりました。感慨深いです。
最近は特に、AIが自律的に価値交換を行う新しいインターネット経済に関心があります。
今回紹介するx402scanは、まさにその世界を垣間見ることができるサービスです。
x402とは
x402は、Web上のリソースに対して支払いを前提としたアクセス制御を行うためのプロトコルです。HTTPには本来「402 Payment Required」というステータスコードが存在しており、これを利用することで支払いが必要なリクエストを表現します。
例えば、AIがAPIを1回呼び出すたびに「0.01ドル支払う」といった仕組みが自然に実現できます。サブスクではなく、利用した分だけ支払うAPI経済を成立させるアプローチです。
x402scanとは
x402scanは、x402プロトコルを利用するサービスやエージェントの活動状況を可視化するダッシュボードです。
- トランザクション件数
- 決済額
- 利用ユーザー数(エージェント数)
- サービス提供者の数
- チェーンごとの稼働状況
など、AIが支払いをする経済圏全体の動きをリアルタイムに確認できます。
Overview:全体像を把握する
Overviewでは、x402に対応したサービスやファシリテーター、チェーン別の稼働状況が一覧できます。

主に確認できる情報は以下の通りです。
- トランザクション件数
- 決済額
- 支払いを行ったエージェント数
- 支払いを受けたサービス数
- チェーンごとの構成
見てみると、想像以上に多くの取引が発生していることがわかります。過去24時間だけでも多くのAPIリクエストが処理され、それに対して支払いが発生しています。
また、支払いの大部分はCoinbaseのファシリテーター経由で処理され、ブロックチェーンはBaseチェーンが圧倒的多数を占めています。
ただ、最近の動向として、x402の支払いボリュームが急速にシフトしています。たとえば、30日間でBaseのシェアが95%から減少し、Solanaのシェアが90%に達しています。理由はSolanaのトランザクショコストがBaseの100倍安い点で、AIエージェントが1日10,000回のAPIコールでSolanaなら$1、Baseなら$100かかります。
このトレンドは、x402の未来像(AIが自律的に低コストチェーンを選ぶ世界)を象徴しており、将来的にSolanaの台頭がマイクロペイメントのスケーラビリティをさらに向上させる可能性が高いです。
Marketplace:支払いを伴うAPI市場
Marketplaceは、x402対応のAPIサービスが一覧化されています。

カテゴリとしては、
- Search(検索/データ取得)
- Crypto(暗号資産データ)
- Resource(一般的なリソース提供)
- Trading(取引/シグナル生成)
などがあり、AIがデータを得るために利用しているAPIがほとんどです。
どれが人気で、どこで経済が成立しているのかがわかり、AI向けAPI市場の全体像を掴みやすいです。
Composer AIに財布を持たせて動かす
Composerは、x402対応のAPIを利用するAIエージェントをコード不要で構築・実行できる機能です。
- 自然言語で指示
- 必要に応じてツール実行
- 支払いが自動発生
- 履歴がリアルタイム表示
という仕組みで、BaseやSolana上で動作します。

実際にComposerを触ってみる
ComposerのChat画面から、実際にAPIを呼び出してみました。

自然言語で依頼すると、AIが適切なツールを選択し、APIの実行と支払いが自動で行われます。支払いは数円程度で、履歴がリアルタイムに表示されます。
AIが情報取得のために支払いを行っている様子が、体験としてみえるのが面白い点です。
「AIが何かの情報を取ってきて、それに対して支払いが発生する」という流れが体験として見えるのが面白いポイントです。
USDCを持っていない人向け
Composerでは、x402実行ごとに少額のUSDC支払いが発生します。
USDCを持っていなくて、JPYCなどを持っている人はMetaMask等のウォレットでスワップしてBaseチェーンのUSDCを取得しましょう。
数百円あれば十分だと思います。
実際にスワップしてみた画面はこちら。

では、「x402を実際に利用したサービスについて教えてください」とAIに聞いてみます。


実際にツールを実行すると、0.01ドル程度の支払いが必要になります。execute Toolを押すと、Pay $0.01 USDCというダイアログが表示されるので承認します。すると、ウォレットに署名要求が届き、確認すると API が実行されます。
実行が完了すると、支払いが行われた上で API の結果が返却され、利用可能なサービスが一覧表示されます。
これは従来のAPI利用では見えにくかった、リクエスト単位の経済行為が前面に出るユースケースであり、今までとは異なる形のWeb利用体験と言えます。

その他のタブ
Transactions
どのサービスがいつ支払いを受けたのか、どの程度の金額かを追跡できます。AIの支払い行動が可視化される点が特徴です。
Facilitators
x402支払いを中継・処理する役割のサーバーの一覧が確認できます。現状では、Coinbaseのファシリテーターが圧倒的シェアを持っています。
Networks
支払いがどのブロックチェーンで処理されているかを表示します。Baseがほとんどを占め、Solanaが一部という状況です。
Ecosystem
サービスやインフラ、ファシリテーターなど、x402の周辺ツールが一覧化されており、エコシステムの広がりが見えます。
JPYCとx402の可能性
x402では、マイクロペイメントが前提となります。その点でJPYCは非常に相性が良いと感じます。
- 低コスト
- 国内利用者が多い
- 少額決済に強い
JPYCはすでにx402上で利用可能であることは確認できていますが、現状ではJPYCを前提としたサービスやユースケースがまだ十分に存在していない状況です。したがって、単に使える状態であるだけではなく、JPYCを活用したx402アプリケーションやエージェントが普及していくことが重要だと考えています。
おわりに
x402scanはまだ発展途上ですが、AIが自律的に支払いを行う未来を具体的に感じられるサービスです。
「AIが自分で稼ぎ、自分で使う世界」。
その入り口がすでに動いているという実感があります。
興味があれば、ぜひ触ってみてください。
そして、JPYC×x402の未来も一緒に考えていければ嬉しいです。
記事が参考になった方は、ぜひZennのフォローや
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