Agentforce導入前にやっておくべき2つの準備(共通)
Salesforceが提供する次世代AIエージェント「Agentforce」は、自律的な業務処理を実現する非常にパワフルなツールです。とはいえ、「すぐに導入して劇的に業務改善できる」と期待していると、痛い目を見るかもしれません。
実際、GruveのVPであるダニエル・ラドマン氏はこう語っています:
「AIには構造化されたプロセスが必要です。組織が複雑で矛盾に満ちていると、AIはうまく機能しません。」
AgentforceのようなAIエージェントを導入する前に、まず見直すべきは「組織そのものの準備状態」です。この記事では、導入前にやっておくべき2つの重要な準備
― プロセス整備とデータ整備 ― に加え、プロセス定義に必要なスキルについても紹介します。
🧭 プロセスを整える:AIのための“道筋”を作る
AIは魔法のように見えるかもしれませんが、その実体はアルゴリズムに基づいた「予測と判断」です。つまり、はっきりとした業務フローがないと、AIは“何をすべきか”がわからないのです。
ラドマン氏の発言にもあるように、「矛盾した組織構造」「地域ごとのルールの違い」「非定型業務の多さ」などは、AIエージェントにとって大きな障害となります。
導入前には以下のようなプロセス整理が必要です:
- ワークフローの可視化(Salesforce Flowなどでフロー化)
- 業務に関わるルールや例外の明確化
- 標準化できる業務と、そうでない業務の仕分け
🎓 プロセス定義に必要なスキルセット
プロセスを構造化するには、ただ業務を「見える化」するだけでは不十分です。以下のスキルや視点が求められます:
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業務分析力(Business Analysis)
現場のヒアリングから課題を抽出し、どこを自動化すべきかを判断する力。As-Is/To-Be分析などが有効です。 -
プロセス設計スキル(BPM/業務フロー設計)
フロー図(例:BPMN)を作成し、フローの中でAIが担うべき役割を明確化します。 -
Salesforceオブジェクトの理解
標準オブジェクト(例:Case, Opportunity)とカスタムオブジェクトの構成やリレーションが分かっていないと、正確な業務モデルを構築できません。 -
現場とのコミュニケーション能力
部門横断で業務が絡むケースが多いため、ITと現場の橋渡しができる力が非常に重要です。
Agentforceの設計は「設計者」「業務マネージャー」「Salesforceエンジニア」の連携で初めて成立します。どこにAIを“任せるか”を組織として合意できるかが、成功の鍵となります。
📊 データを整える:体に悪いものを食べれば、健康は保てない
AIが業務をこなす存在だとすれば、**データはその“栄養”です。**つまり、どれだけ優れたAgentforceを導入しても、日々与えられる情報(データ)が偏っていたり、不正確だったりすれば、まともな判断はできません。
これはまさに人間の体と同じで、「ジャンクな食事を続ければ、体調は崩れる」のと一緒。Agentforceも「健康的でバランスの取れたデータ」がなければ、本来のパフォーマンスを発揮できません。
以下のような“食生活の見直し”ならぬ“データの見直し”が必要です::
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データの一貫性:
「朝はプロテインとバナナ、昼はパン、夜は何も食べない」では栄養が偏りますよね?同じく、項目の表記揺れや入力ルールが部署ごとにバラバラだと、AIの学習は進みません。 -
欠損値の処理:
入力されていないデータが多すぎると、Agentforceは判断材料が不足して“ボッー”とします。
最低限の必須項目が確実に入力されているか確認しましょう。 -
正確なラベル付け栄養成分表示:
「タンパク質?ビタミン?脂質?」と分からない料理を食べ続けたら健康を保てません。
AIにとっても、「この商談はどのフェーズにあるのか」等が分からないままでは、的確なフィードバックは不可能です。
⚠️ 最も難しいのはAIではなく“人と仕組み”
Salesforce Benのレポートでも指摘されているように、Agentforce導入が思うように進まない理由の多くは、エージェントの性能の問題ではなく、導入側の準備不足です。
「多くの企業にとって、障害となっているのはエージェントそのものではなく、組織を整備し、導入準備を整えるために今やらなければならない作業です。」
AI導入=エンジニアリングと思われがちですが、実は業務設計や情報整理の地味な部分こそが、成功のカギなのです。
✅ まとめ
AgentforceをはじめとしたAIエージェントの可能性は無限大ですが、それを引き出すには**「準備」**がすべてです。
- ✅ 構造化された業務プロセスを定義する(+そのスキルを持つ人材を確保する)
- ✅ クリーンで活用しやすいデータを整える
この2つをしっかりやっておけば、Agentforceはあなたの組織にとって頼れる“デジタル社員”になってくれるはずです。(おそらく)
📎 引用元:Why Agentforce Adoption is Slower Than Expected (salesforceben.com)
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