MacにWindowsライクなショートカットを割り当てる
i. はじめに
転職に伴い、仕事用PCがWindows&UbuntuからMacになりました[1]。人生初Macです。一方で、個人ではまだWindowsやUbuntuを利用します。そのため、これらOS間の操作感の差はできる限りなくしたいところです [2]。
ということで、MacをWindowsの操作感に"できるだけ"近づけるために、私が講じたいくつかの施策についてご紹介したいと思います。当記事の内容を実施することで、以下の操作をWindowsライクに行うことができるようになります。
- 日本語入力時のライブ変換無効化
- アプリケーションウィンドウの移動
- 画面ロック
- Finder起動
- アプリケーションおよびウィンドウ切り替え
なお、ここでいう操作とは、GUIやマウスを利用した操作のことではなく、キーボードを利用した操作、つまりショートカットのことです。
ii. 対象読者
- Macを"できるだけ"Windowsライクに操作したい方
- Windowsライクな操作感のMacに興味がある方
- WindowsからMacへ乗り換えたいけど操作感の違いが気になる方
iii. 動作環境
PC
項目 | 値 |
---|---|
Host | Mac mini 9[3] |
OS | macOS 13.1 arm64 |
CPU | Apple M1 |
GPU | Apple M1 |
Memory | 16GB |
キーボード
「Mistel BAROCCO MD770 (US配列)」を使用しています。
このキーボードにはDIPスイッチが搭載されており、これを利用することで「Mac風配列最適化モード」にすることができます[4]。「Mac風配列最適化モード」にすると、以下のようにキー割り当てが変更されます[5]。
- 左Command(Windows) ⇄ 左Option(Alt)
- 右Option(Alt) ⇄ Command(Windows)
なお、同様の変更は「番外編:キー入れ替え」で取り上げる設定画面にて行うことが可能です(1.2. 参照)。Windows用キーボードを使用していて、同様の設定を行いたい方はそちらをご参照ください。
さて、ようやく本題。ここから設定・導入内容をツラツラと書いていきます。
1. キーボード設定
1.1. 日本語入力時のライブ変換を無効化
デフォルトで、日本語入力をする際に「ライブ変換」という機能がONになっています。「ライブ変換」とは、日本語入力時にSpaceキーを押して変換しなくても、自動的に漢字などに変換してくれる機能です。
この機能は不要なのでOFFにします。以下の手順でOFFにすることができます。
- System Settings > Keyboard > Text Input > Input Sources > [Edit]
ライブ変換を無効化する手順その1
- Japanese - Romaji > [Live Conversion]チェックボックスを外す
ライブ変換を無効化する手順その2
1.2. 番外編: キー入力速度を変更
私はvimを使うこともあって、キー入力速度はMaxにしています。
- System Settings > Keyboard
- [Key repeat rate]を"Fastest(一番右端)"に変更
- [Delay until repeat]を"Short(一番右端)"に変更
キー入力速度をMaxにする方法
この辺は好みによるところかなと思います。
1.3. 番外編: キー入れ替え
CapsLockキーはほとんど使用しないのに、とても良い位置にあります[6]。一方で、Ctrlキーは良く使うのに少し遠いです。ということで入れ替えてしまいましょう[7]。
- System Settings > Keyboard > [Keyboard Shortcuts...]
キーを入れ替える手順その1
- [Caps Lock (⇪) key]を
^ Control
に変更 - [Control (^) key]を
⇪ Caps Lock
に変更
キーを入れ替える手順その2
また、Windowsキーボードを使用している場合、OptionキーとCommandキーの入れ替えもおすすめです。私の環境ではキーボード側で対応しているため、ここでは変更していません(iii. 参照)。
2. Raycastの導入および設定
Raycastというアプリケーションを利用することによって、以下の操作をWindowsのショートカットに合わせていきます。
- アプリケーションウィンドウの移動
- 画面ロック
- Finder起動
Raycastを用いた、そのほかおすすめ設定については番外編にて取り上げています。
2.1. Raycastとは
Raycastとは、拡張可能なランチャーアプリケーションです。WindowsでいうところのPowerToys Always on Topのようなものです。
Raycast is a blazingly fast, totally extendable launcher. It lets you complete tasks, calculate, share common links, and much more.
Raycastはアプリケーションを素早く起動できるだけでなく、キーを割り当てることで任意の操作を一発で実行(Hotkey)することもできます。このHotkey機能を用います。
Hotkeyは以下の手順で設定画面を開くことができます。
- Raycast起動
-
Extensions
を入力し、[Extensions Raycast Settings]を選択
:Raycastで"Extensions"を入力
Raycast ExtensionsのHotkey設定画面("Window Management"で絞り込んだ場合)
もしくは、以下のようにコマンド入力を利用して設定画面を開くこともできます。(デフォルト設定の場合)
Option + Space
Command + ,
- 「Extensions」を選択
2.2. アプリケーションウィンドウの移動
アプリケーションウィンドウの移動に関する操作に対して、以下のようにHotkeyを割り当てます。
Name | Alias | Hotkey |
---|---|---|
Bottom Half | - | ⌥ ↓ |
Left Half | - | ⌥ ← |
Right Half | - | ⌥ → |
Top Half | - | ⌥ ↑ |
※表の「Hotkey」列のキー表記方法が文章中と統一されていませんが、Raycastの設定画面に合わせているのと、表幅を狭くさせるためです。
上記表に加えて、私はAliasも割り当てています。こちらについては番外編をご参照ください(2.6.2. 参照)。
2.3. 画面ロック
離席するときなど、すぐに画面ロックしたいときってありますよね[8]。
Name | Alias | Hotkey |
---|---|---|
Lock Screen | - | ⌥ L |
ちなみに、デフォルトのショートカットはControl + Command + Q
です。
2.4. Finder起動
Finder起動も、WindowsのExplorer起動に合わせてHotkeyを割り当てます。
Name | Alias | Hotkey |
---|---|---|
Finder | - | ⌥ E |
ちなみに、デフォルトのショートカットはOption + Command + Space
です[9]。ただし、デフォルトのショートカットを利用した場合と、RaycastでHotkeyを割り当てた場合では少し挙動が異なるので注意が必要です。デフォルトショートカットを使用した場合、入力する度に新しいウィンドウが立ち上がります。Raycastを使用した場合、既に開いているFinderがトグルします。
2.5. 番外編: Ubuntuライクなターミナル起動
私は、ターミナルアプリ起動のHotkeyとしてCommand + Control + T
を割り当てています。これはUbuntuのデフォルトのターミナル起動を意識しての設定です[10]。設定する場合は、皆さんの好みに合わせると良いでしょう。
設定方法は、前述したWindows Managementのときと同様です。私はAlacrittyをターミナルとして利用しているので、下図のようになっています。
ターミナルアプリケーションにHotkeyを割り当て(Alacrittyを使用している場合)
2.6. 番外編: そのほかおすすめ設定
Raycastを実際に触ってみて、WindowsやUbuntuでも使いたくなるほどかなり強力なアプリケーションだと感じました。Hotkey機能以外にも便利な機能が標準で備わっています。
- Alias: 別名を割り当てることにより、アプリケーションの起動、コマンド実行などを素早く行うことが可能
- Quicklinks: Google検索など、リンクへのアクセスを素早く行うことが可能
- Store (Extension): Raycastコミュニティメンバーが作成した拡張機能をインストールして使用することが可能
これらRaycastの機能を活用し、個人的におすすめする設定を書きます。ぜひ参考にしてみてください。
2.6.1. Raycast Settings
2.6.1.1. General
ここはデフォルトのままです。Windows PowerToysの起動ショートカットにあわせて、Raycast HotkeyはそのままOption + Space
としています。
RaycastのGeneral設定画面
2.6.1.2. Advanced
デフォルトから、以下の二つの設定を明示的に変更しています。
設定項目 | 設定値 | 備考 |
---|---|---|
Auto-switch Input Source | ABC |
Raycast起動時に日本語入力を無効化するため |
Navigation Bindings | Vim Style (^J, ^K, ^L, ^H) |
- |
「Auto-switch Input Source」の変更は、日本人なら必須といって良いほど設定すべきものです。
「Navigation Bindings」については、好みが分かれるところです。実際に使ってみて、自分に合う方を選択されると良いかと思います。私はvimを常用しているので、Vim Styleとしています。
2.6.2. Extensions: Alias, Hotkey, Quicklinks
私がカスタマイズしている設定を表にしました。おすすめの設定には★
をつけています。一つでも皆さんの参考になれば幸いです。
Applications
おすすめ | Name | Alias | Hotkey | 備考 |
---|---|---|---|---|
★ | Alacritty | term |
^ ⌘ T |
ターミナル |
★ | Finder | - | ⌥ E |
- |
★ | Screenshot | - | ⌥ ⇧ S |
- |
Visual Studio Code | code |
- | - |
Floating Notes
おすすめ | Name | Alias | Hotkey | 備考 |
---|---|---|---|---|
Toogle Floating Notes Window | - | ⌘ . |
チュートリアルで設定、たまに使用 |
Navigation
おすすめ | Name | Alias | Hotkey | 備考 |
---|---|---|---|---|
Switch Windows | - | ⌥ Tab |
- |
Quicklinks
おすすめ | Name | Alias | Hotkey | Link | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
★ | Search Google | sg |
- | https://google.com/search?q={Query} |
デフォルトで作成されている |
★ | Search Amazon | sa |
- | https://www.amazon.co.jp/s?k={Query} |
- |
System
おすすめ | Name | Alias | Hotkey |
---|---|---|---|
★ | Lock Screen | - | ⌥ L |
Window Management
私は、現状ウルトラワイドディスプレイ一枚で運用しているため、ウィンドウ移動を結構します[11]。
そのため、Window Managementにエイリアスを多く割り当てています。
おすすめ | Name | Alias | Hotkey |
---|---|---|---|
Bottom Center Sixth | wbcs |
- | |
★ | Bottom Half | wbh |
⌥ ↓ |
Bottom Left Quarter | wblq |
- | |
Bottom Left Sixth | wbls |
- | |
Bottom Right Quarter | wbrq |
- | |
Bottom Right Sixth | wbrs |
- | |
Bottom Third | wbt |
- | |
Bottom Third Fourths | wb34 |
- | |
Bottom Two Thirds | wb23 |
- | |
Center | wc |
- | |
Center Half | wch |
- | |
Center Third | wct |
- | |
★ | Center Three Fourths | wc34 |
⌥ E |
Center Two Thirds | wc23 |
- | |
First Fourth | wlq |
- | |
First Third | wlt |
- | |
First Three Fourths | wl34 |
- | |
First Two Thirds | wl23 |
- | |
Last Fourth | wrq |
- | |
Last Third | wrt |
- | |
Last Three Fourths | wr34 |
- | |
Last Two Thirds | wr23 |
- | |
★ | Left Half | wlh |
⌥ ← |
Make Larger | - | ⌥ ] |
|
Make Smaller | - | ⌥ [ |
|
★ | Maximize | wmx |
⌥ = |
★ | Maximize Height | wmh |
- |
Maximize Width | wmw |
- | |
★ | Right Half | - | ⌥ → |
Top Center Sixth | wcs |
- | |
★ | Top Half | - | ⌥ ↑ |
Top Left Quarter | wtlq |
- | |
Top Left Sixth | wtls |
- | |
Top Right Quarter | wtrq |
- | |
Top Right Sixth | wtrs |
- | |
Top Three Fourths | wt34 |
- | |
Top Two Thirds | wt23 |
- |
といっても、良く使うのはHotkeyを割り当てているものくらいで、その他は稀にしか使っていません。
さらにいうと、Hotkeyを割り当てている「(Bottom or Left or Top or Right) Half」を連続して実行すると、ウィンドウサイズは「1/2 → 2/3 → 1/3 → 1/2 → ...」という挙動になります。
Option + → (Right Half)
を連続入力した場合の挙動
そのため、「(Bottom or Left or Top or Right) Two Thirds」や「(Bottom or Left or Top or Right) Third」に関しては、Aliasを定義しなくても実行することが可能です。
Others
おすすめ | Name | Alias | Hotkey | 備考 |
---|---|---|---|---|
★ | Clipboard History | ch | ⌥ H |
- |
Define Word | dw |
- | チュートリアルで設定しただけ |
3. AltTabの導入および設定
次は、「アプリケーション切り替え」・「ウィンドウ切り替え」について設定していきます。
もちろん、Macにも標準で「アプリケーション切り替え」・「ウィンドウ切り替え」を行うことができる機能が備わっています。ただし、「アプリケーション切り替え」と「ウィンドウ切り替え」にそれぞれ別のショートカットが割り当てられています。「アプリケーション切り替え」のショートカットはAlt+Tab
、「ウィンドウ切り替え」のショートカットはCommand + `
といった具合です。
一方で、Windowsでは「アプリケーション切り替え」も「ウィンドウ切り替え」も同じショートカットAlt+Tab
で実行できます。Windowsのこの挙動に慣れていると、Macのショートカットがとても億劫です。
そこで、この差を埋めるためにAltTabというアプリケーションを導入します。
3.1. AltTabとは
AltTabとは、MacでWindowsライクなウィンドウ切り替えを実現するアプリケーションです。
AltTab brings the power of Windows’s “alt-tab” window switcher to macOS.
3.2. ショートカット変更
設定変更を行うのは一箇所だけです。ショートカットを変更していきます。
- AltTab起動
- Controls > Shortcut1を選択し、次の内容を入力
- [Hold]:
⌘ (Command)
and press:⇥ (Tab)
Select next window
AltTab Shortcut1のショートカットキー変更
おわりに
以上です。"ある程度"Windowsライクな操作感のMacになったのではないでしょうか。
WindowsOSのショートカットの最も良いところは、ショートカットの起点となるキーが分かりやすいところです。ウィンドウ移動や画面ロック、エクスプローラ起動など全アプリに共通して行う操作にはWin + <any>
が割り当てられており、コピー・ペーストなど各アプリケーション上で使用するショートカットにはほとんどCtrl + <any>
が割り当てられています。
対して、Macの場合、ショートカットのほとんどがCommandキーを起点となっています。長年使われている方にはしっくりくるのかもしれませんが、ずっとWindowsを使ってきた身としては「使えたもんじゃないな」となりました[12]。それが、今回行った設定によって"ある程度"解消されたのではないかなと思います。
ただし、完全にWindowsの操作感と一致しているわけではなく、「どれだっけ」とおどおどしてしまったり、「ちゃうやん!」となることがまだまだあります。特に、コピー・カット・ペーストがCommand
キー起点となっているのを、できればControl
キー起点に変えたいところです。何か良い方法をご存知の方いらっしゃったらぜひ教えてください。
今回ご紹介した以外にも、「これ良いよ!」などありましたら教えていただけると幸いです。特に、コピー・カット・ペーストをCommand
キー起点にする良い方法を教えてください(切実)。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
参考
Raycastについて、以下の記事を参考にさせていただきました。ありがとうございました。
-
実際は自由にOSを選択できたのですが、興味本位でMacにしました。Ubuntuを良く触ってるからUnixでも余裕だろう、という軽いノリで。 ↩︎
-
WindowsとUbuntu間でも操作は異なっていましたが、Macほどの違和感はありませんでした。 ↩︎
-
会社PCはMacBook Proですが、会社のPCでいろいろ試すわけにはいかないので個人的にMac miniを購入して遊んでいます。 ↩︎
-
メカニカルキーボードであればDIPスイッチが搭載されていることはままあります。 ↩︎
-
ほかにもFnキーの動作も変更されますが、私は大して利用しないので割愛しています。 ↩︎
-
連続して定数入力するときとかは使ったりしますが、そんな状況めったにないですよね。 ↩︎
-
キーボードによってはDIPスイッチで対応できるかもしれません。私の持っているキーボードでは、「Mac風配列最適化モード」にした状態ではうまく動いてくれませんでした。 ↩︎
-
というより、離席するときは原則画面ロックするべきです。日頃から習慣づけましょう。たとえフルリモートでも。 ↩︎
-
これはなかなか良い配置だなと感じました。 ↩︎
-
ちょっと押しにくいのですが、私は慣れてしまいました。 ↩︎
-
Apple siliconはマルチディスプレイがしにくい... ↩︎
-
Macの方が優れていると思ったショートカットもあります。例えば、日本語変換時に「半角カナ」や「全角かな」などの変換を
Control + \<|J|K|L|M\>
で切り替えられることには感動しました。 ↩︎
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