Encraft #19「今日から始めるエンジニアリングマネジメント」開催レポート
株式会社ナレッジワークのEngineer Enabler、三木鉄平(miki)です。
本記事では、2024年10月30日に開催されたEncraft #19「今日から始めるエンジニアリングマネジメント」のイベントレポートをお届けします。最後までご覧ください。
Encraftとは?
Encraft(エンクラフト)は、株式会社ナレッジワークが提供する "Enablement" と "Craftsmanship" をテーマにした勉強会シリーズです。技術にこだわりを持つ人々が集まって互いに知見を交換し、できることを増やしていく場を作りたいと考え、運営しています。オフラインで参加することが難しい方向けに、YouTubeでのLive配信も行っています。
過去の開催会のレポートについてはこちらからご覧いただけます。
イベント概要
Encraft #19「今日から始めるエンジニアリングマネジメント」では、今後のキャリアステップにおいてマネージャーを目指されているエンジニアのために、マインドセットや実践方法を学ぶ、ヒントが得られるようなイベントとして開催されました。
ゲストとして、LayerXの新多真琴さん(@ar_tama)とGROOVE Xの林淳哉さん(@loose_agilist)に登壇いただきました。これまでのEMとしての経験を通して得られた知見と実践的なエクササイズが紹介され、参加者にとって有意義な学びの機会となりました。
(LtoR)辻純さん、林淳哉さん、新多真琴さん
セッション1:「チームを主語にしてみる」 新多真琴さん(LayerX)
新多さんのセッションでは、エンジニアリングマネジメント(EM)において「チームのアウトプットを最大化すること」の重要性が語られました。
EMは単にマネージャーの職務にとどまらず、誰もが担うことができる役割であると強調しました。座学と実践によってマネジメントスキルを磨いてきたご自身の経験を踏まえて、チーム目標の達成と個人の行動をつなげる考え方を紹介しました(「マネジメントされビリティ」という表現が印象的でした)。
さらに、参加者の理解を深めるため、簡単なエクササイズも行い、「チームを主語にして自分の行動を捉え直す」ことを通じ、チーム目標への貢献を改めて考える機会を提供しました。
セッション2:「マネージャーじゃなくても、小さな挑戦からはじめよう」 林淳哉さん(GROOVE X)
林さんは、GROOVE Xにはマネージャーというポジションが存在しないことを踏まえ、社内の多様な開発プロジェクトに携わってきた経験をもとにお話しされました。
これまで、エンジニアによる技術情報発信の活性化や、QA効率化プロジェクトを推進してきた経験を通じ、「自分が課題と感じることには率先して取り組むべきであり、行動を起こすことで周囲の協力が得られる」「立場が不明瞭だと周囲に不安を与えるため、自分のコミットメントを明確にすることが大切」と述べられました。
「EMがいない組織であってもEM的な動きはできる。小さな挑戦から始めよう」というメッセージで講演は締めくくられました。
パネルディスカッション:新多真琴さん(LayerX)/ 林淳哉さん(GROOVE X)/ 辻純さん(ナレッジワーク)
最後に、登壇者の二人にナレッジワークのEMである辻純さんを加え、3社によるパネルディスカッションが行われました。まず前半では、各パネリストがいくつかのトピックに答える形で、それぞれの視点からマネージャーとしてのキャリアやスタイルについて語りました。
新多さんは、最初の職場で出会ったマネージャーの存在が、自身のマネジメント観に大きな影響を与えたとのことでした。また、チーム内で「自分の取扱説明書」を共有し、自身の得意・不得意をあらかじめ伝えているそうです。メンバーの期待や意欲(WILL)を確認するなど日頃からのコミュニケーションを重視しており、柔軟で丁寧なマネジメントスタイルが垣間見えました。
林さんは、スタートアップでプレイングマネージャーとしての経験を積み、システム的な視点でチーム全体を俯瞰して捉えるスタイルを築いてきたと語りました。個別のメンバーサポートには苦手意識があるものの、全体の課題を的確に見つけ出し迅速に対処することで、チームを強力に支えていることが伝わってきました。
辻さんは、システムエンジニアからキャリアをスタートし、現場で実務をこなしながら自然にマネジメントの役割を担うようになった自身の経験を紹介。ナレッジワークでもプレイングマネージャーとしてチームに深く関わり、手を動かしながら支える姿勢に重きを置いています。苦手な分野もあえてオープンにし、信頼を基盤としたマネジメントを実践している姿勢が印象的でした。
後半では、参加者の皆さんからの質問にパネリストが回答。以下に印象的なやり取りをピックアップしてご紹介します。
質問「開発にも参加していますか?1日の時間の使い方はどんな感じですか?」
新多さんは、日によって開発とマネジメントのバランスが異なると述べました。評価の時期などでは、一時的に開発を控えてマネジメントに専念することもありますが、通常は5~7割ほどの力を開発にも注いでいるとのことです。「自ら手を動かすか、メンバーに任せてサポート役に回るかは、状況に応じて判断している。開発から離れることで生じるプロダクトへの理解の不足は、メンバーとの対話を通じて補っている」と、柔軟な姿勢がうかがえました。
質問 「メンバーに能動的に動いてもらうためには何をすれば良いでしょうか?」
林さんは、GROOVE Xにおける技術ブログ執筆の取り組みを例に挙げました。「技術ブログ番長」と呼ばれる役割のメンバーが、積極的に執筆を促す役割を担っているとのことです。このメンバーが月に一度チームに声をかけることで、メンバーが「書き忘れる」ことを防ぐ環境が整えられています。特定の人物がこの役割にコミットすることが重要であり、「自発的な行動が難しいメンバーもいるため、適度な『プレッシャー』がある方が成果に結びつきやすい」という見解も示されました。
質問「様々なマネジメント業務の中で、やらないことの定義はどうしていますか?」
辻さんは、プロジェクトの状況に応じて「やらないこと」を決めていると述べました。たとえば、リソースが限られていたりスケジュールがタイトな場合には、自分はコードに集中し、プロジェクト管理は他のメンバーに任せるなど、役割を分担しているとのことです。役割分担を工夫することで、チーム全体のパフォーマンスを最適化しようとする姿勢が伝わってきました。
Triple-WIN アンケート
Encraftでは、参加者のアンケート回答数に応じてナレッジワークがOSSプロジェクトに寄付をする取り組みを行っています。1件の回答ごとにナレッジワークが8ドルをOSSに寄付し、参加者とOSSプロジェクトをナレッジワークがつなぐ仕組みです。
今回のEncraftでは、17名の方にアンケートにご回答いただき、合計136ドルをOpen Collectiveを通じてFloating UIに寄付しました。オフライン・オンライン問わず、ご回答いただいた皆様、ありがとうございました!
なお、これまでOpen Collectiveを通してナレッジワークが寄付してきたOSSの一覧はこちらです。
参加者の声(一部)
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それぞれの発表もパネルディスカッションもとても良かったです。EMとして働いているわけではありませんが、EMがどのようなマインドで動くと良いのかが少し分かりました。
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マネジメントはエンジニアから見ると技術から離れて「人を管理する」というイメージでしたが、プレイングしながらマネジメントすることや、テクニカルな部分で先手を打つことについて学べてとてもためになりました。
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考え方が似ていると感じる部分があり、親近感を覚えました。また、「空いたボールを拾いに行く」という点について、今の自分にはまだできていないことだと気づきました。
本編終了後は引き続き懇親会を行い、参加者の皆様と盛り上がりました
まとめ
今回のEncraftイベントは、将来マネージャー職に興味を持っている方が、今の自分の役割でもできることを見つける良いきっかけになりました。エンジニアリングマネジメントとは「チームの成果を引き出すために行うすべてのアクション」であり、必ずしもマネージャー職だけでなく、さまざまな立場の人が積極的に関われるものだというメッセージが、強く印象に残るイベントでした。
ナレッジワークでは今後も、エンジニアリングマネジメント分野の知見を登壇者や参加者の皆さんと一緒に学び、考えるイベントを企画していきます。
次回予告
次回のEncraft #20は12月4日に開催予定です。テーマは「他部門も巻き込んでの業務効率化の事例発表(仮)」です。興味のある方は、ぜひご参加ください!
次回のEncraftもお楽しみに!
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