Encraft #17 「マルチプロダクト開発におけるデザイナーの役割 」開催レポート
はじめに
こんにちは、ナレッジワーク デザイナー本郷です。
8月29日に開催された Encraft #17のイベントレポートをお届けします!
今回のテーマは「マルチプロダクトを推進するデザイナーの役割」
マルチプロダクト開発における戦略やデザイナーの役割について、3社の代表者をお招きしてパネルディスカッションを行いました。
登壇者紹介
今回は以下のメンバーにご登壇いただきました。
大堀 祐一 / 株式会社ナレッジワーク プロダクトデザイナー
現職ではコンパウンド戦略にもとづく複数プロダクトの立ち上げに従事。前職は株式会社グッドパッチにてフリーランスを中心にチームを組織するGoodpatch Anywhereのマネージメントを担う。千葉大学工学部デザイン工学科意匠系卒業。2016-2020年、同学科で非常勤講師を務める。
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小林 謙太郎 / LINEヤフー株式会社 プログラムマネージャー/エバンジェリスト
デザイナーとしてキャリアをスタートさせたのち、ナショナルクライアントのデジタルマーケティングを中心にプロデュース実績を重ね、2019年にLINE(現LINEヤフー)社初のクリエイティブ領域のエバンジェリストとして入社。現在はプログラムマネージャーとしてデザイン組織全体の戦略設計を担うとともに、LYプロダクトのUXリサーチ・UXライティング、デザインPRのロールを持つチームのマネジメントを
担当。
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古長 克彦 / 株式会社マネーフォワード デザインマネージャー
新卒では金融SIerにてシステムエンジニア/UXデザイナーを11年。前職ではウェブ制作会社で業務システムUI/UXデザイン事業の責任者および執行役員。2022年マネーフォワードにジョイン。現在はバックオフィスSaaSのマルチプロダクト展開における横断体験の向上、ビジネス戦略でのデザイン、デザイナーのピープルマネジメント、採用推進など幅広く担当している。
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【モデレーター】小久保 浩大郎 / 株式会社ナレッジワーク 執行役員VP of Design
複数社でフロントエンドエンジニアや情報アーキテクトを務め、2011年、Google入社。デジタルコミュニケーション施策やフォント開発に携わる。2017年CAMPFIRE社CXOを経て2019年GMOペパボ入社。執行役員CDOとしてデザイン戦略立案とその実行のための組織組成、デザインシステム開発などに従事。2024年、ナレッジワーク入社。執行役員 VP of Designを務める。
Xアカウント:@kotarok
パネルディスカッションの内容
1. 各社のマルチプロダクト戦略
マネーフォワード 古長さん「マネーフォワードは55以上のプロダクトを展開しています。会計システムがサービスに中心にあって、周辺に複数のプロダクトがあるという、ドメインが一領域にある中でのマルチプロダクト戦略になっています。それぞれのプロダクトは機能ごとにつながっていって、お客様の業務によって複数のプロダクトをを活用する形でのサービスを提供しています。」
LINEヤフー 小林さん「LINEヤフーは昨年10月に合併したばかりで、サービス数は国内だけで200以上あります。そもそもマルチプロダクトということを意識しているかというと元々LINEではコミュニケーションを起点としたスマートポータル構想があり、ヤフーは検索をはじめ様々なサービスや情報につながるポータルサイトがあって、それが当たり前の状態だったりするので深いところでの共通認識としてはあるかもしれませんが表立って意識する場面はないかもしれません。「WOW」なライフプラットフォームを創り、日常に「!」を届ける。というミッションのもと、ユーザーの周りにある困りごとを解決し世の中を便利にしていくために様々なサービス、プロダクトを提供しており、今はそうした多くのサービスを例えば「Connect One」構想※1のようにどう連携させシナジーを出していくかというフェーズです。」
ナレッジワーク 大堀「創業4年目のスタートアップ。社員数110〜120人、デザイナーはプロダクトチームが6名、BXチームが3名の合わせて9人です。マルチプロダクトよりも、コンパウンド戦略※2を取ることでより各プロダクトからのシナジーを生むようにプロダクトを増やしていこうと、社内で強く押し出しているところがあります。具体的に言うと、Aというサービスを契約している状態でBも契約していただくと、よりそのBというプロダクトが便利に使えます。」
※1 「Connect One」構想:LINE公式アカウントを中心とした統合プラットフォーム。企業はこれを通じて、ユーザーのLINEやYahoo!JAPANなどでの行動データを一元管理し、集客、予約、購買、顧客管理(CRM)までを一貫して行える。
※2 コンパウンド戦略:プロダクトを複数提供することで提供する価値を乗数的に向上させる戦略
小久保 浩大郎 / 株式会社ナレッジワーク 執行役員VP of Design
2. デザイン組織と役割分担
マネーフォワード 古長さん「プロダクト開発チームと、デザイン基盤専門組織それぞれにデザイナーが所属し、デザインマネージャーが両者を統括する体制をとっています。デザイン基盤が作成したデザインシステムやガイドラインを、プロダクト開発チームが活用して開発効率化を進めています。」
LINEヤフー 小林さん「各プロダクトに紐づいたデザインチームとは別にそれらを横断的にサポートするでDesign Executive Centerがあり、全社プロダクトの品質やデザイナーの生産性の向上を担っています。兼務含めると180人くらいが所属しています。また「Design SWATチーム」があり、各プロダクトに紐づいたデザインチームのリソースやスキル面を短期的にサポートする遊撃部隊で、柔軟にリソースをアサインしています。」
ナレッジワーク 大堀「プロダクトデザイナーは6名で、そのうちOpsとVPが1名ずついます。Opsはプロセスや仕組みの整備を担当しています。」
マネーフォワード 古長さん「Opsの立ち上げは早ければ早いほどいいですか?このタイミングで作る意思決定はなぜですか?」
ナレッジワーク 小久保 「答えが出るのはこれからです。この規模・フェーズだと早いのでは、という考え方もあります。会社の文化と結びついていて、事業も組織も構造化してイネーブルメントを加速させるためです。デザインOpsの役割は、プロセスや仕組みの整備です。小規模な組織でもこれを重視しているのは、イネーブルメントを推進するという我々の会社のミッションと深く関連しています。早期からこの機能を持つことで、成長に備えた基盤づくりを行っています。」
古長 克彦 / 株式会社マネーフォワード デザインマネージャー
3. 一貫性を担保する仕組み
各社ともデザインシステムを導入していますが、その運用方法は様々でした。
マネーフォワード 古長さん「Money Forward UI (MFUI)という共通UIライブラリとそれにひもづくコンポーネントやアセットを活用中。レガシーUIに即座に適用するのは難しいので、デザインガイドや情報設計上のルールを整え適応することから始めています。」
LINEヤフー 小林さん「大きいところではLINEブランドのLDS、ヤフーブランドのRIFF、社内システム用の3つのデザインシステムがあります。また、LINEとヤフーのID連携や、サービス間での遷移の挙動のガイドラインの制定など、ユーザーがLINEヤフーのサービス利用において一貫した体験を提供できるよう注力しています。」
ナレッジワーク 大堀「デザインシステムは活用していますが、新規プロダクト開発時はデザイントークンなどの低レイヤーは活用しつつ、コンポーネントやテンプレートは自由に考えるようにしています。」
小林 謙太郎 / LINEヤフー株式会社 プログラムマネージャー/エバンジェリスト
会場からの質問とその回答
Q1: デザインシステムの初期構築について
質問:「デザインシステムの初期構築時に特に重視したポイントは何ですか?」
会場にナレッジワークの1人目のデザイナー小川がいたため、急遽登壇し質問に回答しました。
ナレッジワーク 小川「スピード以外に重視したのは、フロントエンドとの連携です。デザインだけ先行してもしょうがないところがあるので、ガイドラインの整備などは最初からフロントエンドと話し合いながら作っていました。のちのちの負債などを作らないように、スケーラブルなものを最初から意識して作るというところは結構意識してやっていたと思います。」
ナレッジワーク 小久保「現在デザインシステムのバージョン2.0を作っていますが、当時20〜30人くらいの規模でも既にデザインシステムを作り、プロダクトとブランドの一貫性を保とうとしていました。カバレッジと決め方の深さのバランス感覚がとても良いと思いました。デザインシステムを作りたい人は往々にしてやりすぎてしまい、今必要ではないものまで作ってしまうことがありますが、そうではありませんでした。」
Q2: マルチプラットフォーム対応の課題
質問:「各プラットフォームに準じた設計をすると、中間成果物が指数関数的に増えたり、抽象化が難しい部分が出てきて難しいと思った経験があります。何か対策があったらお聞きしたいです。」
LINEヤフー 小林さん「デザイン変更が簡易的なものであっても、1ヶ所だけでなくいくつもの画面を変える必要はありますね。またレスポンシブデザインなど柔軟性、効率性を意識することも重要です。ターゲットとなるユーザーが老若男女全てなので、対応する範囲、ブラウザやOSを含めて取りこぼさないよう意識しています。
影響範囲が広がると、一つのチームだけでは対応できないので、プロジェクト化してそれを推進する役割のチームを作ったりしています。2021年頃にLINE自体が大規模なリニューアルをした際には、ほぼ全てのサービスに影響が出ました。
サービスごとのタイミングによって、新しいデザインシステムを使えるかどうかが変わってきます。全てのサービスを一度に変更するのは難しいので、それぞれのサービスの開発タイミングに合わせて段階的に変更していくことが多いです。」
まとめ
今回のパネルディスカッションで特に印象的だったのは、組織の柔軟性と将来を見据えた基盤づくりの重要性についての議論です。LINEヤフーの「SWATチーム」は、リソース不足時に即座に対応できる遊撃部隊として機能し、大規模組織における柔軟な人員配置の一例として紹介されました。一方、ナレッジワークの早期からのデザインOpsの導入は、小規模組織であっても将来の成長を見据えた基盤構築の重要性を強調していました。「この規模・フェーズだと早いのでは」という疑問に対して、「会社の文化と結びついていて、事業も組織も構造化してイネーブルメントを加速させるため」という回答がありました。これにより、組織設計が単なる効率化だけでなく、企業文化や長期的なビジョンと密接に関連させることが重要だと再認識しました。
イベントの様子
登壇者の皆さん
懇親会も盛り上がりました!
Triple-WIN アンケート
Encraft では、参加者のアンケート回答に連動してナレッジワーク社が OSS プロジェクトに寄付をする試みを行っております。参加者の1回答当たり8ドルをナレッジワークが OSS に寄付することで、参加者と OSS プロジェクトをナレッジワーク社が繋ぐ仕組みです。
今回は25名の方がアンケートに回答してくださり、200ドルをStorybookに寄付いたしました。
ご回答いただいた皆様、ありがとうございました!
最後に、各社ともデザイナーを募集中とのこと。マルチプロダクト開発の最前線で活躍したい方、ぜひチェックしてみてください!
次回のEncraftもお楽しみに!
Discussion