関西データエンジニア/アナリティクスエンジニアMeetupに参加してきました
先日関西データエンジニア/アナリティクスエンジニアMeetupに参加してきました。
「関西で“実務ど真ん中”のデータ活用を語る場を、継続的に作っていきたい」
とMeetupの冒頭で話されたように実務ゴリゴリの内容で私自身とても有意義な時間を過ごせました。
なので今回は、その内容を書こうと思います。
イベント概要
- 正式名称:関西データエンジニア/アナリティクスエンジニアMeetup
- 開催日:8/22(金)
- 会場:株式会社MonotaRO 本社オフィス
- 主催:モノタロウ
- 参加規模:来場 約50名
イベント内容
1. 会社にデータエンジニアがいることでできるようになること
登壇者:株式会社10X 吉田 康久さん
要旨
社内にデータエンジニア(DE)がいる価値は、単なる安定運用の維持ではなく、事業インパクトに直結する“データUX”を底上げすることと述べられていました。
10Xさんの事例では、個別の火消しに追われるのではなく、全体最適を見通すために以下の実践が紹介されていました。
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可観測性と信頼性の担保
スキーマ管理、パイプラインのヘルスチェック、品質指標の見える化などを通じて運用改善を継続。 -
定義の固定化
指標・語彙・集計ロジックをコードに落とし込み、再現性を確保(セマンティックレイヤーやモデルによる組織横断の一貫性)。 -
入口と出口の両面ケア
- 入口=Data Contractで上流から品質を守る
- 出口=Data Reliability Levelを設定し、利用側の期待値を明確化
所感
データマネジメントでデータ品質について学んでも、正直「実務にどう落とすか」にいつも悩まされています。
今回の登壇をお聞きして、実務のイメージが一気にクリアになりました。
自分の業務でも、課題を特定し、出口の期待値を決めるところから品質改善を始められそうです。
2. 組織的データ活用をスケールさせる、アナリティクスエンジニアリングの実践
登壇者:株式会社MonotaRO 小谷 行樹さん
要旨
MonotaROさんでは、月間 1100人以上の利用者、クエリ実行数500万回超/月(1日16万回) という大規模データ基盤を運用しているそうです。初期には以下のような課題が存在していました。
- データの使い方が分からない
- アクセス性は向上したが、1000を超えるテーブルの中身がブラックボックス化
- 指標やデータ知識が属人化
- データマートごとに指標が揺れる
そこで、アナリティクスエンジニア(AE)チームを立ち上げ、データマートのモデリングや指標管理を体系化したそうです。
また、「データ活用の高度化」と「活用範囲の拡大」の両方を同時に伸ばす取り組みを進めました。
営業部門との協業では、商談準備や評価に必要なデータ抽出に時間がかかっていたため、Lookerのセマンティックレイヤーを導入。営業現場と粘り強く対話し、指標ロジックを言語化して整備しました。
その結果以下の成果が出たそうです。
- 営業メンバーのほぼ全員が月1回以上Lookerを利用
- 1年で200を超えるダッシュボードが誕生
- 施策の指標をめぐる議論が活発化
さらに商談音声データから議事録を自動生成し、記録作成の工数を40分→5分に短縮するなど、非構造データを有効活用する事例も紹介されました。
所感
私自身、データエンジニアの仕事をして実際に耳にする課題感が多く、MonotaROさんの事例はその突破口を示してくれたと感じました。
特に、営業現場との対話を通じて指標を整備し、セマンティックレイヤーで共通化するプロセスは、自分の業務にも直結する学びです。現場部門と密に連携し、指標の言語化・共通化を進めることで、データが「見るだけ」から「議論と行動の土台」へと進化させたのは感銘を受けました。
さらに、生成AIを用いた議事録自動化の事例は、非構造データをどう資産化するかという課題に対して大きなヒントになりました。
3. Analytics Engineeringがもたらした実インパクトと未来のロードマップ
登壇者:株式会社タイミー okodoonさん
要旨
タイミーにおけるAnalytics Engineering(AE)は、**「データ活用のUXを向上させる仕事」**として定義されています。
そのAEは以下を行ったそうです。
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モデリングと定義の確定
社内の指標をFIXし、SQL定義対応表を整備。セマンティックレイヤーを導入し、指標の揺れを防止。 -
データセキュリティ強化
個人情報を参照するテーブルやアウトプットにラベリングを行い、監視可能に。 -
データUXを上げるヒアリング活動
- ユーザー業務の理解(ジョブ理論、ユーザーストーリーマッピング)
- ヒアリングの型を作り、アジャイルデータモデリングを実践
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モダンデータスタックとAIの活用
モデリングやセマンティックレイヤーを通じ、LookerやAI Agentからの高度な問い合わせが可能に。
その結果、以下の成果が出たそうです。 -
月間600人以上がLookerを利用
これまでアナリストに依頼していたデータ抽出が、営業メンバー自身で可能に。 -
1年間で定義の統一が進行
「アクティブ率とは何か」といった指標が明確に定義・管理され、社内で共通認識に。 -
利用体験の向上
商談準備や施策評価のスピードが大幅に向上。取引先責任者ごとの架電回数など、以前は難しかった指標も容易に抽出できるように。 -
データUXが“人間だけでなくAIにも”拡張
モデリングされた定義を活用し、AIエージェントからの問い合わせにも対応可能に。
「人向けのデータ管理から、AI向けのデータ管理へ」という視点の転換が強調されていました。
所感
「データUXを上げる」という言葉は抽象的に聞こえるけれど、今回の登壇でその意味がぐっと具体化しました。
やはり徹底的なヒアリングの重要さと価値を改めて感じました。自分の現場にも応用しようと思いました。
特に「AI向けにデータを整備する」という視点は新鮮でした。データUXを人間の利便性に限らず、AIが誤解せず利用できるように設計することが、これから求められる役割だと実感しました。
4. 製造業におけるデジタル人材の活躍ポイント
登壇者:ダイハツ工業株式会社 太古 無限さん
要旨
製造業の現場では「PCをほとんど使ったことがない」社員も多く、デジタル人材育成は一筋縄ではいきません。
ダイハツでは、AI・BI・アプリ開発の3領域で人材を定義し、体系的に育成する取り組みを推進しています。
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AI活用人材
- 「AIブートキャンプ」で、製造現場にAI活用のノウハウを伝授
- 短期間で基礎から実務に使えるレベルまで育成
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BIツール活用人材
- DATA Saberチャレンジを通じて、BIを人に教えられるレベルにまで習熟
- 現場改善を自らリードできるように
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アプリ開発人材
- 研修を通じてプログラミングを習得
- ノーコード/ローコードツールを駆使し、現場主導でアプリを内製
さらに、AI画像検知×人間のチェックを併用した品質向上の事例も紹介。
「工場はカメラをつけ放題=データを取り放題」という製造業特有の強みを活かし、データ利活用を現場レベルまで浸透させています。
トップ層の理解も深く、役員がDX推進に積極的に関与。現場と経営の両輪で進められているのが特徴的でした。
所感
PCを触ったことのない人でもAI活用を学ぶ、BIを人に教えられるレベルまで育成するといった施策は、規模と本気度の高さを感じさせられました。
また、DX推進にはトップの理解が必要になるのだなと改めて感じさせられました。
さいごに
将来的には関西で働くことを考えているので、その場でデータエンジニアの集まりに参加できたことが何よりの収穫でした。
また、個人的には吉田さんの登壇が非常に勉強になり、セッション終わりも個人的にお話させていただきました。
テックの話だけでなく、監査や教育といった“人とプロセス”が多く語られ、再現性のある実務知が積み上がったと思います。
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