🔌Amazonで見かける格安マルチポートUSB充電器の出力表記と現実を調べてみた

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USB-C対応機器が増え、ノートPCからスマートフォン、タブレットまで多くの機器をUSBで充電できるようになりました。ミニPCもUSB-Cからの給電に対応している製品は電源アダプタを使わなくても動作し、モバイルディスプレイもUSB-Cで動きます。

あらゆる機器がUSB-Cに対応し便利になるにつれ、充電ポートの不足やACアダプタの増加といった問題を解決するため、マルチポート充電器の需要が高まっています。通販サイトでは、6ポートや10ポートを備え、合計で数百ワットの大出力を謳う製品が安価に販売されているのを見かけます。

🔌 「最大800W」表記と実際の総出力

Amazonで「800W」と表記された10ポート充電器が3,000円台で販売されているのを見つけました。
「800W」と表記された10ポート充電器
10ポートもあり、非常に高い出力ができるならコスパ最強の製品のように思えますが、商品説明の詳細な仕様を確認してみると、同時出力時の各ポートはこのようになっていました。

ポート 公称最大出力
C1 65W
C2 45W
C3 30W
C4-C8 15W
C9-C10 15W

これらの数値をすべて合計すると245Wとなります。製品名に掲げられた「800W」という数値は、全ポートを単体で個別利用した際の理論上の最大値を、単純に合算した誇張表現ということになります。この誇張表記を差し引いても、総出力245Wで3000円台というのはコストパフォーマンスに優れていると言えます。

このように、販売ページのタイトルや説明文とスペック表の数値が一致しない製品は珍しくなく、複数出力時に各ポートの割り当て出力がどうなっているかは自分で調べたり計算する必要があります。

この商品は複数ポート接続時の出力状況を網羅的に図で記載しているので、まだ良心的です。記載していない商品も数多く存在します。
複数ポート接続時の出力状況

⚡️ 高価格帯製品に見る単一ポート高出力の制約

高価格帯製品を調べてみました。UGREEN Nexode 500W 6-Portという製品は約24,000円と高価ですが、合計出力はタイトル通り500Wに達します。
合計出力はタイトル通り500W

しかし、その内訳を見ると、さきほどの格安商品とはまた別でした。

ポート 公称最大出力
C1 240W
C2 60W
C3 60W
C4 60W
C5 60W
A 20W

合計出力は確かに500Wですが、100Wを超える高出力はC1ポートに限定されています。他のUSB-Cポートは最大60Wなので、ノートPCへの給電は問題ありませんが、例えば100W以上の電力を必要とするハイスペックなノートPCやミニPCへ、2台同時に給電することはできません。

たとえ合計出力が大きくても、その能力が単一のポートに集中しているケースは多いようです。
単一のポートに集中

🛠️ 複数ポートでの高出力が難しい理由

100Wを超えるような高出力ポートを複数搭載するのが難しい主な理由は、コストと放熱にあるようです。USB-PD 3.1規格では最大240Wもの給電が可能ですが、これを安全に実現するには、高耐圧な電子部品や大型の冷却機構が不可欠です。この構成を一つのポートに実装することはできても、複数のポートに採用すれば、製品サイズは大きくなり、価格も跳ね上がってしまうことが分かりました。そのため、多くの製品では「1ポートだけ高出力、残りは中出力」という設計が現実的な落としどころとなっているようです。

💡 利用目的で考える充電器の選び方

高性能なノートPCや一部のミニPCは瞬間的に100Wを超える電力を要求しますが、一方で60W前後の電力で十分なタブレットや他のPCも多くあります。今回比較した製品の特性を整理すると、以下のようになります。

製品名 ポート数 各ポート最大 総出力 実勢価格 特徴
Amazon格安10ポート(800W表記) 10 65W,45W,30W,15W×7 245W 約3,480円 安価だが表記は誇大。合計出力は245W。
UGREEN Nexode 500W 6-Port 6 240W,60W×4,20W 500W 約23,984円 高価で信頼性も高いが、100W超は1ポートのみ。

現状、100W級の出力を複数ポートで同時に安定して供給できる製品は非常に少ないのが実情です。60W級の出力を複数同時に供給できる製品は存在しますが、やはり高価になります。

最初に見つけた「800W」表記の格安充電器も、合計245Wという出力(同時利用時の最低15W)は、モバイルバッテリーやスマートフォン、タブレット、Nintendo Switch/Switch2など多数の小型機器を同時に充電するには十分な性能です。一晩寝ていればフル充電されるはずです。

つまり、60W以上の高出力を同時に複数必要とするシーンがなければ、800Wという誇大表記を承知の上で、コストパフォーマンスを重視するなら選択肢として考えられるでしょう。

製品を選ぶ上で重要なのは、謳い文句の数字に惑わされず、実際の出力配分とご自身の利用目的を冷静に照らし合わせることですね。

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