[InnoDB]INSERT-SELECT実行時のテーブルロックの原因を読み解く
背景
以下記事の続きです
データ移行時でINSERT-SELECTをした際に、行ロック想定だったのにもかかわらずテーブルロックがかかってしまいました。
その原因が曖昧なままだったので引き続き調べてみます。
EXPLAINで調べる
実行前にやっておけよ定期
実行クエリのEXPLAINを確認
テーブルロックになっていたということは、SELECTクエリのEXPLAIN結果のTYPEがALLになっているのでは?と予想。
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クエリ
explain select * from hoge_table1 join hoge_table2 on hoge_table1.hoge_table2_id = hoge_table2.id join hoge_table3 on hoge_table2.hoge_table3_id = hoge_table3.id where hoge_table1.fuge_colmun2 is not null and hoge_table1.fuge_colmun3 != 50 and hoge_table1.deletes_at is null and hoge_table3.fuge_colmun1 = 1 ;
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結果
id select_type table partitions type possible_keys key key_len ref rows filtered Extra 1 SIMPLE hoge_table1 range idx_hoge_table1,idx_fuge_colmun3 idx_fuge_colmun2 5 3916698 2.82 Using index condition; Using where 1 SIMPLE hoge_table2 eq_ref PRIMARY,idx_fuge_colmun3 PRIMARY 4 hoge_table1.hoge_table2_id 1 100 1 SIMPLE hoge_table3 eq_ref PRIMARY PRIMARY 4 hoge_table2.hoge_table3_id 1 10 Using where - rowsが3916698(全件数は7500万件ほど)なのとtypeが
range
,eq_ref
になっているところから、フルテーブルスキャンしているわけではなさそう
- rowsが3916698(全件数は7500万件ほど)なのとtypeが
EXPLAINではテーブルロックの原因は特定できなかった🤔
EXPLAINの結果で気になった点をさらに確認
WHERE句に使用しているhoge_table3.fuge_colmun1
はindexの貼っていないカラムなのにtype:ALL
にならないことが気になったのでそこも調べてみました👀
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ALLになるパターン
- クエリ
explain select * from hoge_table1 join hoge_table2 on hoge_table1.hoge_table2_id = hoge_table2.id join hoge_table3 on hoge_table2.hoge_table3_id = hoge_table3.id where hoge_table1.fuge_colmun2 is not null and hoge_table1.fuge_colmun3 is not null and hoge_table3.fuge_colmun1 = 1 ;
- 結果(着目した部分のみ抜粋)
id table type 1 hoge_table3 ALL 1 hoge_table2 ref 1 hoge_table1 ref -
ALLにならないパターン
- クエリ
explain select * from hoge_table1 join hoge_table2 on hoge_table1.hoge_table2_id = hoge_table2.id join hoge_table3 on hoge_table2.hoge_table3_id = hoge_table3.id where hoge_table1.fuge_colmun2 is not null and hoge_table1.fuge_colmun3 is not null and hoge_table1.fuge_colmun4 is not null and // この条件を追加! hoge_table3.fuge_colmun1 = 1 ;
- 結果(着目した部分のみ抜粋)
id table type 1 hoge_table1 range 1 hoge_table2 eq_ref 1 hoge_table3 eq_ref -
1つ目のクエリはhoge_table1への条件が緩いため、hoge_table3をフルテーブルスキャンする必要がある
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2つ目のクエリははhoge_table1への条件が厳しいため、hoge_table1を先にスキャンしてその結果に紐づくhoge_table3に対して
hoge_table3.fuge_colmun1 = 1
の条件を適用している- そのためhoge_table3をフルテーブルスキャンする必要がないように思える
実際にクエリ実行して、しらみつぶしに調べる
トランザクション貼ってクエリ実行し、INSERTクエリを流して待機になるかを調べていきました。
主キー(idカラム)で条件指定してみる
- WHERE句にidで全件指定してみる
- 対象件数は200万件ほど(この調査はローカル環境でやっていたので本番のデータ数とは異なります...)
- 結果
- テーブルロックがかかった
- 想定原因
- 最大のidも対象になっているのでネクストキーロックの可能性が高い
- ちなみに
id >= {max値-1}
で指定しても(対象件数1件)ロックがかかったので全件指定しているときに限らずである
- WHERE句にidで
id BETWEEN 1 and {max値-1}
を指定してみる- 対象件数は200万件ほど
- 結果
- テーブルロックがかからなかった
- 想定原因
- ネクストキーロックを回避したからかな
- 主キーの指定は一意にデータを特定できるから優先的に行ロックになるみたい
等価検索のみにしてみる
- WHERE句に
fuge_colmun5 = 2
を指定してみる- fuge_colmun5はindexあり
- 対象件数は3000件ほど
- 結果
- テーブルロックがかかった
- 想定原因
- fuge_colmun5はカーディナリティが低い(13パターン)ためindexの効果が薄かった
- WHERE句に
fuge_colmun6 = 2
を指定してみる- fuge_colmun6はindexあり
- 対象件数は3000件ほど
- 結果
- テーブルロックがかからなかった
- 想定原因
- fuge_colmun6はfuge_colmun5に比較するとカーディナリティが高い(587パターンほど)ため
否定形の条件のみにしてみる
- WHERE句に
hoge_table1.fuge_colmun3 != 50
を指定してみる- fuge_colmun3はindexあり
- 対象件数は210万件ほど
- 結果
- テーブルロックがかかった
- 想定原因
- そもそもEXPLAIN結果のTYPEがALLになっていたのでフルテーブルスキャンしている
- 条件に一致する件数が多いため、indexが使用されなかった可能性が高い
- WHERE句に
hoge_table1.fuge_colmun3 not in (10,1,30,51,2,6,8)
を指定してみる- 10,1,30,51,2,6,8は、件数が多い順で上から7個のデータ
- 結果
- テーブルロックがかかった
- 想定原因
- 対象データが比較的少ないからかな
- 否定形の条件でも、対象データ件数が少ないとindexが使用されるみたい
日付カラムを条件に指定してみる
- WHERE句に
updated_at <= '2019-01-30'
を指定してみる(2019-01-30がローカルデータの最古データだった)- updated_atはindexあり
- 対象件数は190万件ほど
- 日付カラムなのでカーディナリティは高いはず
- 範囲指定だとindexの効果弱いか...?
- 結果
- テーブルロックがかかった
- 想定原因
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group by updated_at
してみると、なんとupdated_at = 2019-01-30 17:50:45
のデータが190万件存在していた(おそらくテストデータ😇) - 検索範囲内でデータの偏りがあり、indexの効果が得られなかった(ただしこれはローカル環境でしか起きない事象)
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- WHERE句に
updated_at BETWEEN '2019-02-01' and '2024-09-28'
を指定してみる- 対象件数は32万件ほど
- 結果
- テーブルロックがかからなかった
- 想定原因
- カーディナリティが高いカラムだからかな
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updated_at = 2019-01-30
のデータを除いたので対象データの偏りがなくなったため - ちなみに
updated_at >= '2019-02-01'
で指定すると最新のデータも対象に含まれてしまい、ネクストキーロックになってしまうのでNG - 一部データのupdated_atを更新して
updated_at <= '2019-01-28'
で指定してもテーブルロックかからなかった👍- つまり範囲でも値の偏りがなければ問題なさそう
結論
上記の調査を経て、実際に指定していた条件を再度見てみます。
条件は以下
- hoge_table1.fuge_colmun2 is not null
- hoge_table1.fuge_colmun3 != 50
- hoge_table1.deletes_at is null
- hoge_table3.fuge_colmun1 = 1
テーブルロックになった原因として以下が挙げられます。
- 否定形が多い
- 否定条件に一致するデータ数が少なく、検索対象件数が多くなっている
-
!= 50
のところ
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- indexを貼っていないカラムを条件に使っている
- deletes_atとhoge_table3.fuge_colmun1
上記どれかひとつでも当てはまればテーブルロックになる!というよりは対象を明確に絞れる条件がなかったことが原因のようです。
例えば条件に以下を指定した場合、2つ目の条件でindexの貼られていないカラムが指定されていますが、1つ目の条件が強いのでテーブルロックにならずにすみます。(条件の書く順番を変えても同様)
- fuge_colmun6 = 2
- hoge_table1.deletes_at is null
いろいろ試してみて上記結論に至りました!
詳しい方、悔しい方、卑しい方、アドバイスあればお願いします!!!
学んだこと
- EXPLAIN結果だけだとテーブルロックするかどうかまで分からない
- 実際にやってみてテーブルロックかかるかどうかをローカルorテスト環境で試すべき
- ただしデータ件数などでまた変わってくる
- ID指定が最強
- テーブルロック避けたいなら対象データのIDとってきて、ID指定でINSERT-SELECTすれば安心
- ただしSELECTクエリも重いやつは気をつけて
感想
deleted_at、疑ってすまん。
参考
Discussion