こんにちは。秋田県のIT企業、北日本コンピューターサービスのR&Dチーム「AUL(アウル)」に所属しています。トラフクロウです。
ちょっと前からChatGPTのメモリ機能が強化され、過去の会話履歴をすべて参照できるようになりました。また、同じころに、CopilotなどのAIアシスタントに特定の人格(ペルソナ)を設定してペアプロ等をやってみた、という記事をいくつか見かけました。
これらにインスパイアされ、自分でもやってみましたというのが今回の内容です。
仕事やプライベートで、おもしろいことを思いついたときに、「誰かと議論したい」、「もっと考えを深めたい」と思う場面は多々あると思います(少なくとも僕はあるのです)。
ですが、「キミの頭は営業中かい?」と突然議論を持ちかけられられて「もちろんさ」と受け入れてくれる人は、そうそういません。相手からすれば、忙しいときに面倒な議論に付き合わされるほど迷惑なことはないでしょう。
「ワイワイ話したいけど、相手がいない」
以前の僕はそんな風に思うことがあったわけですが、
- ChatGPTのメモリ強化
- AIアシスタントにキャラクターを設定
の2つを見て思いつきました。
「相手がいないのなら造ればいいんじゃないか」と。
というわけで、僕が普段使いしているChatGPTでペルソナを3人分作りディスカッションをしてみました。個人的にかなり楽しかったのと、納得のいく結論を出して会議を終えられたので記事にしてみようと思ったわけです。
この記事は、ChatGPTのペルソナたちと僕の議論風景をまとめたものです
今回の記事は、ChatGPT(モデルは4o)のペルソナ(3人分)と僕の議論の様子をまとめたものです。ペルソナに持たせた個性や、議論を進めるために付与した設定なども紹介したいと思います。
以下、今回のお品書きです。
- ペルソナたちの紹介
- ペルソナの個性と設定へのこだわり
- 議論のテーマ紹介
- 議論風景の紹介
ペルソナたちのプロフィール
今回議論に参加してもらったペルソナたちは下の3人です。
個々がもつ特徴、人格などは、議論をする中で気になった点などを踏まえ適宜微修正しています。名前はChatGPTが適当につけてくれました。
また、彼ら3名には、個別の個性以外に次の共通の設定をしてあります。
- ユーザー(トラフクロウ)の意見に賛同するのではなく、自分なりの立場や観点から意見を述べる
- 議論中は必要に応じてペルソナどうしでも話し合いを行う
ペルソナの個性は、議論を盛り上げるように設定しました
ここでは、ペルソナの個性や特徴をどうやって決めたのか簡単にお話しします。ベースになっているのは「僕が他者との議論でほしいと感じるもの」です。それは次の3つになります。
-
僕の考え方とは違う視点で意見をくれる人(ひとりで考えると視点が凝り固まってしまう)
-
議論を広げる斬新な視点(僕はこれが苦手です)
-
場にある意見を懐疑的に眺める人(調子に乗っている僕にストップをかける人)
まずは1つ目の「違う視点での意見」ですが、これを実現するには、僕とは違うタイプのペルソナを用意すればいいのではと思いました。そこで、ChatGPTにこれまでの会話履歴から予想される僕自身(トラフクロウ)のペルソナを考えてもらいました。結果は次のとおりです(自称ではなく、あくまでChatGPTが考える僕の姿です)。
この僕自身のペルソナを踏まえて、「僕と発展的な議論をするために、どのような個性を持ったペルソナが必要か」をChatGPTに考えてもらいました。
最初は適当な設定のペルソナが作られるので、それをさらに微調整します。僕がペルソナたちに求めた個性は次のとおりです(他にも細かい注文は付けましたがとりあえず簡単に)。
-
論理的な視点で冷静に現場を見れる人(僕の持つ先入観を排除して論理的に考える人)
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突拍子もない発想の飛躍で視点をズラし、議論を発展させる人(僕の苦手な発想の転換担当)
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周囲に迎合せず、批判的な立場で立ち止まり再考を促す人(僕の暴走を止める人)
こんな経緯で上で紹介した3人は生まれました。
しかし、試しに議論をしてみると全然思い通りにしゃべってくれません。特に気になったのはペルソナたちが僕の意見をやたらと肯定することです。どんな話をしても「なんて素晴らしいんだ!」と感嘆してくれます。
これでは議論相手ではなく、承認欲求を満たすだけの存在になってしまいます。そこで、次の特徴を全ペルソナに共通で付与しました。
- トラフクロウの意見に賛同するのではなく、自分なりの立場や観点から意見を述べること
- 議論中は必要に応じてペルソナどうしでも話し合いを行うこと
2つ目の要望は、ChatGPTだけにディスカッションさせるとどうなるんだろう、と興味半分で設定しました(あまり効果はありませんでした)。
今回は「英語の勉強方法」を議論しました
さて、ペルソナがそろったので実際に議論をしてみたいと思います。
今回のテーマは「英語の勉強方法について」です。
というのも、恥ずかしながら、僕は中学高校の英語教育で惨敗した人間です。中学校1年生のとき、三人称単数の単元でコテンパンに打ちのめされ、それ以来、英語からの逃亡を余儀なくされてきました。
しかし、IT企業、ましてや研究開発チームに所属するとあっては、いつまでも甘えていられません。本腰を入れて克服せねば!と一念発起した矢先、みごとに返り討ちにあっているというのが現在という状況です。
最近の勉強もマンネリ化してきていたので、打開策をペルソナたちと考えることにしました。
想像以上にちゃんと考えてくれるペルソナたち
ここからは、僕とペルソナたちの議論の様子を紹介します(不要な会話もあるのでダイジェストでいきます)。
こんな質問をしたら、生成AIが返しそうな内容は
- 学習のレベルがあってない
- 練習する内容を1つに絞るべき
とかですかね。
実際の回答は次のようになりました。
おおむね予想通りの回答ですね。
特に「コンテンツのレベルがあっていない」というのは僕も自覚していて、すでにいろいろなレベル、分野の英文を試していました。それでも「なんかうまくいかない」。このモヤモヤを聞いてみることにしました。
それぞれの視点でより具体的なアイデアが出てきました。さらに発言を続けるように促すと次の対策を考えてくれました。
- 1日1回、「読めた!」と思った英文をメモして、1週間後に振り返る(マコト案)
- 英語ニュースを声に出して読む(シャドーイング)(スミレ案)
- 理解できなかったポイントを1文だけでも分析して記録する(ハルカ案)
「なんかそれっぽい!」と思いましたが、実際に勉強するのは僕です。面倒なことや、やりたくないこともあります。そこで、いくつか注文をつけてみました。
「そこは頑張れよ!」と言われそうですが、継続のためにも、できるだけラクをしたいのです。
ペルソナたちは、このワガママな注文にどう返すのでしょうか?
おー、怒らずに丁寧に答えてくれましたね。
今回の回答には正直驚きました。てっきり、表現を変えて以前の提案の焼き直しがくるのかと思っていましたが、注文を聞いて新しい方針で意見を考え直してくれています。
特に、理解を○×で記録するという方法は、少なくとも僕にとっては、完全に想定外の回答でした。取り入れやすいし、ゲームみたいで面白そうです。ただ、×がそのままになるのが気になります。
「×の何がわからなかったのか分析して解決する方がいいでは?」と思ったのでペルソナたちに提案してみました。
すると、ハルカからツッコミがきます。
この発言にもビックリです。これまでChatGPTは僕の発言をすべて肯定的に受け止めてきました(上の会話でもその気配がわかると思います)。そのため、今回も「いいね。そうしなよ。」という回答を予想していました。
しかし、今回のハルカの発言は、完全な否定ではありませんが、僕の考えの至らなさを指摘し、補足するものです。あいまいだったイメージを具体的に言語化され、思わず「なるほどな...」と思ってしまいました。
これをありがたく採用させてもらうと、次の学習方法が見えてきました。
この結論が得られた時点で、結構感動しました。
「こんな簡単なこと」と思われるかもしれませんが、これは少なくとも僕ひとりでは思いつきもしなかった勉強方法なのです。ペルソナたちとの会話を通じて 「なんか勉強がうまくいかない」、「次に何をしたらいいんだろう?」という状態から、「具体的にこれをやる」を定めることができた のです。
ここからさらに議論が続きますがメッチャ長いです。興味のある方だけご覧ください。
ここまででも当初の予想以上の結果ではありましたが、ふと気になったことがありました。
「面倒なこと考えるなよ」って感じですが、こんなことにもペルソナたちは付き合ってくれます。
想像以上に論理的な回答をしてくれましたね。キーワードは
でしょうか?
これらをベースに解決策も考えてもらいましょう。
ペルソナたちの個性が爆発してますね。僕だけでは収集がつけられなくなってきたので、それさえも丸投げしてみたいと思います。
ペルソナたちに互いの意見をについて思うところを話してもらいました。
これまたビックリですが、どのペルソナも他のアイデアをきいて「自分ならこう」という独自の落とし込みをしています。これは人間どうしの話合いで普通に行われるプロセスですが、生成AIでも再現できるとは思いませんでした。
もし本当に他者のアイデアを自分事に落とせているのなら、気づきを踏まえたブラッシュアップができるはずです。ペルソナたちたちにも自分の意見をブラッシュアップしてもらいましょう。
少し弱いかなと感じる部分もなくはないですが、どのペルソナも、自分自身の気づきをベースにアイデアの再構成ができています。
「自分自身で感じたことのみ」をアイデアに反映させるのではなく、他のペルソナからの指摘事項も反映できている点はすごいなと感じました。プロンプトからの文章生成だと思えば当たり前のような気がしますが、これだけでグッと「ちゃんと考えている感」がでますね。
さて、「成功体験の蓄積」や「メリハリをつける」という点で少しずつ意見がまとまってきました。さらにこの後、「毎日じゃなくて週3日程度しか学習時間がないとしたら?」という追加条件や、ペルソナ間での討論を数回行いました(流れは上とほとんど同じなので割愛します)。そしてなんやかんやで会議も大詰めです。
意見が出そろいました。しかし、彼らの意見はどれもそのまま実行する気になれません。どれも絶妙にやりたくないことが含まれています(最後までワガママですね)。
それでも、「おっ、これはいいかも」という部分もたくさん散らばっています。そこで、個人的にいいなと思う部分をピックアップして組み合わせてみました。それが次の方法になります。
もともと課題になっていたことは
- 英語力が向上している実感が得られない
- 英語を読むうちに集中力が切れてしまい継続できない
の2つです。
上の学習方法であれば、制限時間や正答率を見ることで、ゲーム性を取り入れつつ、短時間でのメリハリのある学習ができそうです。また、苦手な個所の特定もすぐにでき、正解数から英語力の向上を直感的に把握できます。
最初は、「なんか英語の勉強がうまくいかないな」という悶々とした状態でしたが、長い議論を経て次に実行すべきアクションを決めることができました。個人的には大満足です。
まとめ(というよりも所感)
- ペルソナの個性があふれていて見ていると楽しい
- 個性あるキャラクターを設定することで会話に没入感がでる
- 思いもしなかったアイデアを出されることもありビックリ(僕はこれを求めていた)
- 気軽に相談したら、あらぬ解決策が見つかるかも?
- ペルソナどうしでの意見交換や、アイデアのブラッシュアップができるのはおもしろい
最後まで読んでいただきありがとうございました!
図もない文字だらけの記事を最後まで読み進めていただきありがとうございました。
ペルソナとのディスカッション、想像以上におもしろかったです。ときどき「そうきたか」と思わせる発言もあり、自分ひとりで考えるより思考が加速した気がします。
相手に遠慮がいらない点や、やりたくないことをバッサリ切れる点で、場合によっては、生身の人間と議論するよりもいいなと思いました。
形式上「議論」と言ってはいますが、感覚としては自分の考えを整理して追加情報をもらいながら、ひとりで再考し続けるという作業に近い気がします(結局はひとり相撲)。ペルソナが質問の答えをポンッとくれる便利ツールにはならなそうですね。
ですが、「自分の考えに別視点の意見や批判がほしい」、「思いつくままダラダラ議論したい」という僕の要望はバッチリ叶えてくれたので、とってもハッピーな検証でした。提案してもらった英語学習も実際にやってみましたが結構楽しいです。しばらく続けてみます。
ちなみに数学に関してのディスカッションも試してみましたが、うまくいきませんでした。少なくとも今使っているモデルでは複雑な証明や考察は難しいようですね(ちょっと残念)。
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