PlantUMLのシーケンス図の書き方まとめ
この記事は、PlantUMLでシーケンス図を書くときに必要になる情報をまとめたものです。
PlantUMLとは
簡単なコードによる記述でUMLの様々な図が作成できるツールです。
UMLを活用する上での課題である「メンテナンスしていくのが困難」という点を、コードで記述するという手法によって解決することを試みています。
シーケンス図とは
一連の処理の実現方法を参加者間の相互作用で表すことができます。
設計時にどのクラスにどういうメッセージ(責務)を割り当てるかの検討や、既存の実装がどういう相互作用で実現されているかを整理するためなど、
色々な使い方ができる図です。
例
インターネット記事投稿サービスの「記事を検索する」処理をどう実現させるかを設計する想定で図を作成してみました。
問題領域寄りの図
フレームワークなど、特定の技術要素に依存しない抽象的なシーケンス図です。
@startuml
/' define participants '/
actor ユーザー
boundary ホーム画面
boundary 検索ビュー
boundary 検索結果画面
entity 記事検索
entity 記事一覧
/' messages '/
ユーザー -> ホーム画面 : access
create 検索ビュー
ホーム画面 -> 検索ビュー : display
ユーザー -> 検索ビュー : input keyword
検索ビュー -> 検索ビュー : validateKeyword
検索ビュー -> 記事検索 : search(keyword)
記事検索 -> 記事一覧 : new
記事検索 --> 検索ビュー : 記事一覧
create 検索結果画面
alt exists 記事一覧
検索ビュー -> 検索結果画面 : display
else
検索ビュー -> ホーム画面 : display with message
end
@enduml
解決領域寄りの図
WEBのMVCフレームワークの「Ruby on Rails」上に適応させたシーケンス図です。
@startuml
actor ユーザー
ユーザー -> "a HomeController" : access
activate "a HomeController"
"a HomeController" -->> ユーザー : rendering 検索ビュー
deactivate "a HomeController"
ユーザー -> "an ArticleSearchResultController" : キーワードを入力して送信
activate "an ArticleSearchResultController"
"an ArticleSearchResultController" -> "an ArticleSearcher" : search(keyword)
activate "an ArticleSearcher"
"an ArticleSearcher" -> "an ArticleSearcher" : validates
"an ArticleSearcher" -->> "an ArticleSearchResultController" : IllegalArgumentException
"an ArticleSearchResultController" -> "a HomeController" : redirect
note bottom : 「キーワードを入力してください」メッセージ
"an ArticleSearcher" -> "an Article Class" : query
activate "an Article Class"
"an Article Class" -->> "an ArticleSearcher" : return Article::ActiveRecordRelation
deactivate "an Article Class"
"an ArticleSearcher" -->> "an ArticleSearchResultController" : return Article::ActiveRecordRelation
deactivate "an ArticleSearcher"
"an ArticleSearchResultController" -> "an Article::ActiveRecordRelation" : order(publish_date: desc)
activate "an Article::ActiveRecordRelation"
deactivate "an Article::ActiveRecordRelation"
"an ArticleSearchResultController" -> "an Article::ActiveRecordRelation" : page(0)
activate "an Article::ActiveRecordRelation"
deactivate "an Article::ActiveRecordRelation"
"an ArticleSearchResultController" -->> ユーザー : rendering
deactivate "an ArticleSearchResultController"
@enduml
記述方法
参加者
参加者は様々なグラフィック要素で定義できます。
@startuml
hide footbox
participant 汎用的な参加者
actor アクター
boundary バウンダリオブジェクト
control コントロールオブジェクト
entity エンティティオブジェクト
database DB
collections コレクションオブジェクト
/' 空白や記号のような通常の文字以外を使いたい場合 "" で囲う '/
participant "a Article:SpecialArticle"
@enduml
参加者の定義を省略してメッセージを記述した場合は「汎用的な参加者」の形になります。
@startuml
objectA -> objectB : message1
@enduml
UMLの参加者の表記のルールは オブジェクト名:クラス名
や 役割名:分類子名
でして、 前半のオブジェクト名か、後半の :
以降のクラス名のどちらかを省略することができます。
上記の「Ruby on Rails」例で書いたような、オブジェクト名を a クラス名
と表現することもよくあるようです。(この場合は :
以降のクラス名を省略しています。)
@startuml
hide footbox
"オブジェクト名:クラス名" -> "オブジェクト名"
"オブジェクト名" -> ":クラス名"
@enduml
メッセージ
様々な種類のメッセージを表現することができます。
基本的なメッセージ
@startuml
objectA -> objectB : 同期メッセージ
objectA ->> objectB : 非同期メッセージ
objectB -->> objectA : リプライメッセージ
objectA -> objectA : 自分へのメッセージ
@enduml
図の外部の要素とのやりとり
@startuml
[-> objectA : 外部からのメッセージ
objectA ->] : 外部へのメッセージ
@enduml
参加者の生成と破棄
参加者を生成するメッセージの前に create 参加者名
と記述することで、生成メッセージを表現することができます。
また、参加者を破棄するメッセージの後に destroy 参加者名
と記述することで、破棄メッセージを表現することができます。
@startuml
participant objectA
create objectB
objectA -> objectB : create message
objectA -> objectB : destroy message
destroy objectB
@enduml
メッセージへの注釈
メッセージの直後に note left|right|top|bottom : メッセージ内容
と書くことによって、メッセージに注釈をつけられます。
@startuml
objectA -> objectB
note right : message1
objectB -> objectB
/' 複数行の注釈 '/
note left
message2
message3
end note
@enduml
アクティベーションバー
@startuml
user -> objectA : call
activate objectA
objectA -> objectB : call
activate objectB
objectB -->> objectA
deactivate objectB
objectA -->> user
deactivate objectA
@enduml
結合フラグメント
繰り返し、分岐など様々な制御構造を表現することができます。
alt
if elseの条件分岐を表現できます。
@startuml
alt x > 0
objectA -> objectB : message1
else
objectA -> objectC : message2
end
@enduml
opt
ある条件が成立した時だけメッセージを送るということを表現できます。
@startuml
objectA -> objectB : message1
return x
opt x > 0
objectA -> objectC : message2
end
@enduml
loop
繰り返し処理を表現できます。
@startuml
/' ループさせる数を指定 '/
loop 記事数
objectA -> objectB : message1
end
/' 最小値と最大値を指定 '/
loop 1, 10
objectA -> objectB : message2
end
/' 無限ループ '/
loop
objectA -> objectB : message3
end
@enduml
break
loopなどのbreakを内包している要素の処理を中断することを表現できます。
@startuml
loop
objectA -> objectB : message1
break break condition
objectA -> objectC : message2
end
end
@enduml
par
複数のメッセージを並行して送ることを表現できます。
@startuml
par
objectA -> objectB : message1
objectA -> objectB : message2
note right : message1とmessage2は並行して送信される
end
@enduml
critical
クリティカルな部分という表現ができます。
例えばpar内にcriticalがあると、その部分だけは並行実行しないという表現ができます。
@startuml
par
critical
objectA -> objectB : critical message
end
objectA -> objectB : parallel message1
objectA -> objectB : parallel message2
end
@enduml
ref
ref over
キーワードで他のシーケンス図への参照を表現することができます。
@startuml
participant objectA
participant objectB
participant objectC
objectA -> objectB : message1
ref over objectB,objectC : message1 details
@enduml
遅延
@startuml
objectA -> objectB : message1
...
objectB -> objectA : replay1
... abount 10 minutes ...
objectA -> objectB : message2
@enduml
間隔
@startuml
objectA -> objectB : message1
objectB -> objectA : replay1
|||
objectA -> objectB : message2
objectA -> objectB : replay2
/' ピクセル数を指定 '/
||50||
objectA -> objectB : message3
@enduml
参加者のグルーピング
@startuml
box "presentation" #LightBlue
participant objectA
participant objectB
end box
objectA -> objectB : message1
objectB -> objectC : message2
@enduml
指定できる色の名前は https://www.w3schools.com/colors/colors_names.asp にあります。
また、 #AABBCC
のようなHEX形式で指定することもできます。
下部の参加者エリアの非表示
@startuml
hide footbox
objectA -> objectB
@enduml
タイトル
図のタイトル
title タイトル名
コード内のコメント
' 行コメント
/'
ブロックコメント
'/
(宣伝) PlantUMLの高機能エディターを搭載したIntelliJ Pluginを作っています
有料プラグインとして出していまして、今後もアクティブに開発を進めていく予定ですので、フィードバックをいただけるととても嬉しいです。
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