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Google Cloud Next Tokyo ‘25 参加レポート

に公開

はじめに

2025年8月5日、6日に東京ビッグサイトで開催された Google Cloud Next Tokyo '25 に参加してきました。Google Cloud が年に一度開催するこのカンファレンスは、最新技術の発表から企業の活用事例、技術を深く学べるハンズオンまで、多彩なセッションで構成されています。

この記事では、イベント全体の雰囲気や他の Google Developer Expert (GDE) メンバーとの会話、その他印象に残ったトピックについてレポートします。

参加目的と当日の活動

Google Cloud Next Tokyo ‘25 には昨年、一昨年に続いての参加になりますが、今年の個人的なテーマとしては、クラウドサービスや生成 AI の最新動向を知る、ベストプラクティスやユースケースとそれらの技術・業務背景を知る、という点に重きをおいて各セッションを回ったり関係の皆様と雑談したりしていました。また GDE として来場者のご質問にお答えする Ask the Expert での対応や、カンファレンスや各セッションの様子を発信するアンバサダーも担当させていただきました。


Next Tokyo 参加バッジなど

カンファレンスの感想

数あるセッションやデモの中から、特に印象に残った事柄をいくつかご紹介します。

イベント全体の印象

一昨年の 2023 年から続く傾向ですが、今年の Next Tokyo も基調講演、セッション、展示のすべてにおいて生成 AI が色濃く現れる構成になっていました。基調講演は Day 1, 2 とも「生成 AI 事例」「生成 AI × インフラ」「生成 AI × セキュリティ」「生成 AI × データ活用」といったように、あらゆるトピックが生成 AI と関連付けて語られていたと感じます。

Ask the Expert でも AI/ML 関連の質問の大半は生成 AI に関するもので、世の中の生成 AI への関心の高さが見て取れました(カンファレンスのコンテンツが生成 AI づくしだったことの影響もあるかと思いますが)。来場者のご質問にお答えする中で、Google Cloud を利用検討し始めた方から全体像を知るためのリソースが見つけづらい、勉強方法がわからない、という声を頂くことが複数ありました。その場では私からは Google Cloud Skills BoostG-gen さんのテックブログ を紹介していたのですが、そういった声を考慮してか、カンファレンス後に Google Cloud Japan 公式アカウントからも学習リソースのまとめが投稿されていました。ご興味のある方はぜひご参照ください。

https://x.com/googlecloud_jp/status/1953690135175823773

基調講演

Day 1, 2 の両日あった基調講演のうち、私は主に Day 2 を聴講していました。そこで行われた Gemini CLI のデモではコードのトラブルシューティングや理解、自然言語の指示による簡単な修正を行う様子が紹介されました。コード生成はコンテキストやテクニックによって品質変化が起こりがちなのが現状ですが、このデモによってデバッグとコード理解は安定して効果を発揮する用途(=基調講演のような大きい発表でも安定してアピールできる用途)であると読み取ることができます。

私自身のプロダクション含む利用状況としても、デバッグやコード理解は業務で積極的に使う一方で、コード生成は場面によると感じているので、これから Agentic Coding を取り入れたい方にはこのデバッグ、コード理解の用途から試すことをお勧めしたいと改めて感じました。


Gemini CLI デモ

Gemini CLI のデモ以外にも、セキュリティやアーキテクチャモダナイゼーションのサービス紹介、並列処理、分散処理のハードウェアが Pathways, vLLM on TPU としてマネージドサービス(現在プレビュー版)の提供を開始したことなど、生成 AI を支える様々な最新サービスも合わせて紹介されていました。

なお、基調講演のアーカイブは現在も 公式サイト から視聴できます。ぜひ一度ご視聴ください。

各セッション

Google Cloud における生成 AI の活用事例に関して、聴講したセッションの中からいくつかを紹介します。

Cloud Run ではじめる LLM/MCP サーバー運用とセキュリティ対策 では、LLM や MCP サーバーを Cloud Run 上に立てる際の基本的なアーキテクチャや、セキュリティ面の注意点が言及されていました。セキュリティ対策として、ベースとして通常の web アプリにおけるセキュリティ対策と同じことを行った上で、LLM 特有の対策(意図せぬ回答をフィルタetc.)を行う、という二段階が必要という説明で、セキュリティ周辺に苦手意識がある筆者にもとてもわかりやすい整理でした。


MCP サーバーのセキュリティ対策まとめ

次に、これがフルパワーだ!BigQuery のメタデータで Gemini が完全体に では、分析エージェントに必須のメタデータ整備に Gemini を利用した事例が紹介されていました。メタデータ整備は生成 AI の性能を引き出すために必要と頭でわかっていても非常に手間のかかる作業であり、優先度を落とされがちなタスクです。それに対して各カラムの description のドラフトを Gemini で生成し人間はレビュー役に徹することにより作業工数を 90% 削減可能とのことで、機械学習モデルにおける学習データへのアノテーション支援に通ずる効果的な LLM 活用法と感じました。


Gemini によるメタデータ生成

GDE メンバーとの雑談

会場では他の GDE メンバーとの会話する時間も多くあり、その中で生成 AI を活用したデータ分析エージェントについて詳しく話を聞くことができました。私は従来、アナリスト人材不足によるボトルネックを頻繁に経験していたため、この分野に強い関心を持っていましたが、BI プロダクトの既製品が十分に機能することも多かったため自社開発のメリット・デメリットが明確でない状況でした。そこで自社でデータ分析エージェントを開発した事例(関連セッション)について詳細を伺ったところ、データ分析エージェントの必要性は主に利用者のスキルセットとデータのバリエーションに依存することが分かってきました。
具体的には、ビジネスメンバーのようにデータ定義は完全には理解していないものの定量的なインサイトを求める場合や、データが多種多様で利用者が全てを把握できない場合に、既存プロダクトではメタデータ整備や業務固有の背景知識の考慮に限界があるため課題が生じるとのことです。確かに私の周囲で既製品が有効に機能している事例では、利用者がエンジニア中心であったり、データの種類が限定的であったりするケースが多いため、今後データ分析エージェントを検討する際の有益な判断基準を得ることができました。

まとめ

今年の Google Cloud Next Tokyo '25 は、昨年や一昨年に続いて生成 AI に関連するセッションが多かったですが、その内容としては利用の具体に関するものが多く、今までと比べても業務ですぐに役立てられる事例が多かったように思います。また、利活用の裏側の基盤技術についても、これまでは気合が必要だったものがマネージドサービス化していたり(Pathways, vLLM on TPU)、より広い普及に向けて様々な動きが感じられました。2025 年は AI エージェントの年と言われて実際に非連続な変化がいくつも起こっていますが、今後も予想もしない技術やツールが生まれるはずなので、私自身そういった変化を楽しみながら試していければと思います。

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