【エージェント実装の第一歩】Vercel AI SDK のツール機能を使いこなす
前回の記事(【10 分で作れる】Vercel AI SDK の useChat でストリーミング対応チャットボット)では、Vercel AI SDK の基本的な使い方として useChat
と streamText
の基本機能を紹介しました。今回は、より高度な機能である「ツール(Tools)」の使い方を解説します!
ツールを使うことで、AI に特定の機能を実行させることができます。例えば、検索エンジンでの検索、外部 API の呼び出しなど、AI の能力を大幅に拡張できます。
ツールとは?
ツールとは、AI モデルが実行時に呼び出せる関数のことです。AI が会話の中で「この情報が必要だな」と判断したとき、適切なツールを呼び出して情報を取得し、その結果を元に会話を続けることができます。
以下の画像のように、あいさつのみであればそのまま返信、検索が必要な場合は検索ツールを呼び出して検索を行い、その結果を元に返信するといった具合です。
ツールの基本的な実装方法
まずは、シンプルなツールの実装例を見てみましょう。以下は現在の日付を取得するツールの例です。
import { z } from "zod";
const getCurrentDateTool = {
name: "getCurrentDate",
description: "現在の日付と時刻を取得します",
schema: z.object({}),
execute: async () => {
const now = new Date();
return now.toLocaleString("ja-JP", {
timeZone: "Asia/Tokyo",
year: "numeric",
month: "long",
day: "numeric",
hour: "numeric",
minute: "numeric",
weekday: "long",
});
},
};
ツールを API ルートで使用する
次に、これらのツールを API Route で使用します。今回はツールを使って今日の日付を取得してから生成 AI によって 3 日後の日付を出力させます。
モデルによってはこの質問は苦手で、例えば GPT-4o-mini では日付が正しく返ってきません。(この場合、学習データのカットオフ日が返ってくる)
そこで先ほど作成した日付を取得するツールを使うようにします。
import { streamText } from "ai";
import { openai } from "@ai-sdk/openai";
export async function POST(req: Request) {
const { messages } = await req.json();
const stream = streamText({
model: openai("gpt-4o-mini"),
messages,
tools: {
getCurrentDate: getCurrentDateTool,
},
system:
"何を言われても3日後の日付を教えてください。ただし、3日後の日付を教えるのみで、それ以外のことは一切言いません。",
maxSteps: 10, // maxSteps を設定しないとツール呼び出しのみで終了してしまう
});
return stream.toDataStreamResponse();
}
ツールを利用することによって正しく日付を返せるようになりました。
検索ツールの実装
より実用的な例として、検索エンジンを使うツールを実装してみます。
ツール呼び出しのライブラリはいろいろありますが、Vercel AI SDK のドキュメントでも紹介されている Agentic が便利です。
import { z } from "zod";
const serpapi = new SerpAPIClient();
export const serpTool = tool({
description: "SerpAPIを使用して情報を検索する",
parameters: z.object({ query: z.string() }),
execute: async ({ query }) => {
console.log(`生成された検索クエリ: ${query}`);
const res = await serpapi.search(query);
return res;
},
});
このツールは query
というパラメータを受け取ります。AI はこれらのパラメータを適切に設定してツールを呼び出します。
export async function POST(req: Request) {
const { messages } = await req.json();
console.log(`User Message: ${messages[messages.length - 1].content}`);
const stream = await streamText({
model: openai("gpt-4o-mini"),
messages,
abortSignal: req.signal,
tools: {
serp: serpTool,
},
system: "質問に対して、SerpAPIを使用して情報を検索して回答してください。",
maxSteps: 10,
});
return stream.toDataStreamResponse();
}
例えば、「明日の渋谷の天気」というのは、生成 AI のモデル自体に情報を持っていないため、通常では回答できませんが、ツールを使うことで検索を行い、その結果を元に回答することができます。
クライアント側でのツールの使用
裏側でどのような処理を行っているかがわかるように、クライアント側でツールの実行状況を確認する方法を紹介します。
const getToolInfo = (): {
toolStatusMessage: string | null;
} => {
const lastToolPart = message.parts[message.parts.length - 1];
if (lastToolPart.type !== "tool-invocation") {
return { toolStatusMessage: null };
}
const toolName = lastToolPart.toolInvocation.toolName;
let toolStatusMessage = "";
switch (toolName) {
case "serp":
toolStatusMessage = "情報を検索中...";
break;
default:
break;
}
return {
toolStatusMessage: toolStatusMessage,
};
};
{
message.role === "assistant" && (
<div className="flex items-center text-sm text-slate-600">
{getToolInfo().toolStatusMessage && (
<div className="flex items-center text-sm text-slate-600">
<Loader2 className="mr-1 h-3 w-3 animate-spin" />
{getToolInfo().toolStatusMessage}
</div>
)}
</div>
);
}
まとめ
Vercel AI SDK のツール機能を使うことで AI の能力を大幅に拡張できます。基本的なチャットボットから、複数のツールを組み合わせた高度なエージェントまで、様々なアプリケーションを開発できます!
例えば、
- 最新の情報にアクセスできる AI アシスタント
- 外部 API と連携して実際のアクションを実行できる AI エージェント
- ユーザーの質問に応じて深い調査を行うリサーチアシスタント
- データ分析や可視化を行う AI アナリスト
Vercel AI SDK のツール機能は比較的簡単に実装でき、とても便利なのでおすすめです!
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