AIを活用して技術士(建設部門)の試験対策をした話
はじめに
技術士第二次試験は記述式が中心で、対策に多くの労力と時間が必要です。
特に、試験対策の際に、想定問題に対して「白紙から文章を書き始める」のは、知識だけでなく文章力や構成力も問われ、相当な負担になります。誰だって書き始めは辛いものです。
一方で、人が書いたものに対して自分の意見を加えるのは比較的楽です。言い方が悪いですが、人の文章にケチをつけるのは簡単です。
そこで、GPTを使って想定問題に対する記述案を作成し、それを基にブラッシュアップするという方法が有効だと考えました。
この方法で回答案を量産して、その覚え込みでも一工夫加えて記述対策することで、技術士(建設部門)の第二次試験に合格できました。
おそらくzenn記事を読まれる方は情報工学部門を目指す方が多いと思いますが、同じように活用できるかと思います。
この記事では、AIを使った具体的な試験対策の方法を紹介します。
私の生成AIに対するスタンス
私は生成AIを、使用者の知識や経験を補完するツールと捉えています。
また現状のどの生成AIを使っても、使用者のポテンシャル以上に品質が高い文章は生成できないと考えています。
さらに、学習データの特性上、特に数値情報に関してはHallucination(誤情報生成)のリスクが高いと考えています。
以下の試験対策手順はこれらのスタンスを前提に、正しい情報で効率よく試験対策を進められるように工夫したものです。
AIも活用した試験対策の手順
1. 資料収集
技術士試験は、白書や法令、時事ニュースを使って記述問題に答える必要があります。
建設部門の必須科目の場合は、以下の資料が主な参考となります。
国土交通白書
情報通信白書
労働力年報
日本建設業連合会
2. チートシート作り
GPTに想定問題の回答案を作成してもらう際に、参考情報を渡すためにチートシートを作成しました。
今だとDeep Searchなどの機能も利用できますが、引用元の信頼性を確認するには、手作業での情報収集が依然として有効です。
以下は私が必須科目対策で作成したチートシートです。
3. GPTで記述案を作成
試験対策では、過去問や予想問題に対して何度も記述練習をする必要がありますが、最初の一文を書き出すまでが一番大変です。
そこで、chatGPTに以下のような情報を渡し、まずはたたき台を作成してもらいました。
- 想定問題の内容
- 自分で用意したチートシート
- 関連する法令や白書からの情報
GPTに「とりあえず書かせる」ことで、ゼロから書く心理的負担を大きく軽減することができました。
4. サイクルを回す
ここで重要なのは、生成された回答案をそのまま使うのではなく、自分の知見や最新の情報と照らし合わせ、改善のサイクルを回すことです。
実際に生成された文章を見てみると、以下のような問題点に気づきました。
文章構成や論理の展開に問題がある
GPTは高度な文章を記述する能力があると感じていますが、技術士試験の回答案に特化した訓練をしているわけではありません。
そのため、適当な文章構成や論理の展開になっているとは言えない場合があります。
自身の知見や関連情報が不足している
自身の知見や関連情報が不足していることで、作成された文章が適切かどうか判断できない場合があります。
あるいは、チートシートの情報や参照すべき法令や基準が不足していることで、狙った回答案が得られない場合もあります。
自身が書きやすい論理展開ではない
回答案としては適切だとしても、自身が得意な論理展開ではなかったり、苦手分野の情報を元にした回答案だったりすると、書きづらい場合があります。
ですので、
-
生成された回答案を読み返す
初稿に対して、過去の回答事例や参考書と照らし合わせ、文章の論理展開や構成のズレをチェックします。 -
不足情報の補完
自身が持つ知見や最新の文献情報を、チートシートに追記・更新し、GPTへのプロンプト内容を強化します。 -
GPTへのフィードバックと再生成
アップデートしたチートシートや具体例を反映させたプロンプトを用いて、再度回答案を生成します。
このとき、前回の生成結果で問題があった箇所を明示することで、より自分の望む内容に近づけます。 -
自分なりの微調整
生成された文章に自分で加筆・修正を加え、納得のいく最終稿を作成します。
このプロセスを繰り返しサイクルとして回すことで、回答案とチートシートの両方の品質が向上し、結果として試験対策全体の効率が飛躍的に上がりました。
5. 頭にすり込む
作成したチートシートや記述回答案は、すでに自分が必要としている情報の塊となっています。
これを、読み上げアプリに取り込んで繰り返し耳から学習しました。
私はNaturalReaderを使いましたが、テキストを音声化してくれるアプリであれば何でも良いと思います。
移動中やスキマ時間に倍速再生で聞き続けることで、記述内容を頭に染み込ませることができました。
6. 週末の手書き練習も忘れずに
試験本番は手書きですし、丸一日書き続けることになりますので、最後の方は疲労で書けなくなることもあります。
また、いざ書いてみると書けない、といった問題に陥ることもあります。
ですので、実際に手で書く訓練は必須です。
平日は読み上げアプリで知識と表現力を蓄え、週末に時間を計って手書きで模擬練習を行う、といった感じです。
ポイント
課金は大事
chatGPTの無料プランも使いましたが、スピードや精度、長文対応力の面で限界を感じ、すぐにPlusプラン(月20ドル)に切り替えました。
試験対策のために数ヶ月だけ課金するだけでも、得られる効果は絶大です。
Neutral Readerも再生時間に制限がありますので、課金しました。
正直、講習会やセミナーを受講するよりも安いので、ここは遠慮せず課金しましょう。
今ならプロジェクト化も有効
もし今から同じ試験対策をやるなら、以下のようにプロジェクト化して一元管理しておくと、さらに効率的だったと思います。
- チートシートや参考資料(白書、法令) をプロジェクトファイルにまとめて管理
- chatGPT用プロンプト例 をストック
- 作成した記述案 をカテゴリ分けして保存
- フィードバック・修正版の記録 を管理
まとめ
当然、自身の技術者としての能力を高める作業は別途必要だと考えています。
ですが、単純に試験対策ということであれば、この方法は非常に有効だったと感じています。
社会人になると、どうしても試験対策に時間が取れないことが多いですが、AIを活用することで、限られた時間を最大限に活用できるようになります。
読まれた方の参考になれば幸いです。
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