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数式向けOpenTypeフォントの旅2025年春

2025/05/02に公開

 はじめに近年，高品質かつフリーで使えるフォントが増えています．

フォントを開発・公開していただいている方には感謝してもしきれません．

特にここ数年では数式向けOpenTypeフォントがかなり充実してきました．

（Beamerはもちろん）Typstでのスライド作成において，数式フォントにこだわりたい私にとって非常にありがたいことです．
そこで，本記事では数式向けOpenTypeフォントをまとめます．

ここでは，TeXLive2025に収録されているフォント (find /usr/local/texlive/2025/texmf-dist/fonts/opentype -type f -name "*[mM]ath*" によって抽出されたフォント) を対象にして，Typstでスライドを作ってみます．（スライドの本文のフォントはRobotoとNoto Sans JPです）
ぜひみなさんもお気に入りの数式フォントを見つけてみてください．

スライド向けの数式フォントとしては，私はNew Computer Modern Sans Math が一番好きです．

 参考U. Vieth, An updated survey of OpenType Math Fonts, TUG2023
Yarakashi_Kikohshi, unicode-mathでフォントを使いこなしたい, Qiita (2024/03/04)

 数式フォント一覧
 IBM Plex MathIBM社のコーポレートフォント　IBM Plex Serif の数式版です．

小文字の筆記体（カリグラフィック体）もあるのがいいですね．

 Asana Math昔からあるOpenType数式フォントですね．

Paratino系の数式フォントで，総和・積分の記号がコンパクトです．

 Concrete MathOTF版でも提供されていたのを今回知りました．

数式フォントとしては珍しいスラブ系のフォントです．

 Erewhon MathUtopiaベースのフォントで，丸くて太めの親しみやすい形状です．

後輩が修論で使っていました．

 Euler Math日本だと数学ガールのフォントで有名でしょうか．

他にもテンソル分解の論文を読んでいるとたまに出てきます．

 Fira MathBeamerの人気テーマ　Metropolis で Fira Sansとともに採用されていますね．

Firaフォントと一緒に使うと一体感が出ていいなと思います．

 Garamond MathGaramondは長い文章で読みやすさを発揮しますよね．x-heightが小さくて目が滑りづらく好きです．

 GFS Neohellenic Math手書きっぽさのあるヒューマニストサンセリフです．

 KP MathKPフォントの数式向けOTF版です．

KPフォントは直線が多いので1文字1文字がはっきりした印象です．

 Lete Sans MathLatoを数式向けにしたものです．

Latoと一緒に組めば，みやすく，かつ，おしゃれでポップなスライドができそうです．

 Libertinus MathCV系のカンファレンスのプロシーディングでたまに見ます．

セリフ系フォントの中では太めなのと，x-heightが小さめなのとで，長い文章に使うとかなり読みやすいです．

学位論文ではこのフォントを使いました．

 Latin Modern Mathみんな大好きComputer Modernの拡張，Latin Modernです．

さらに拡張されたNew Computer Modernが出てきたので，今後はNew Computer Modernを使うことが多いのかなと思います

 Luciole MathユニバーサルデザインのフォントであるLucioleの数式対応版です．

視認性は数式フォントの中でも一番でしょう．

 New Computer Modern Mathみんな大好きComputer Modernです．

 New Computer Modern Sans Math（数式へのサンセリフが許容できるなら）スライド向けベストフォントです．

視認性，文字・記号の大きさのバランス，Noto Sans JPとの相性の良さ，どれも完璧です．

 Old Standard Mathその名のとおり，Computer Modernが出てくる以前の本・論文で使われているような雰囲気があります.

 STIX MathTimes系の書体であるXITSをベースにした初代STIXフォントです．

 STIX Two Math2代目STIXフォントで，Times系ではなくなりました．

全体的に丸くなって明るい雰囲気になりましたね．

arXivのHTML版ではこれが使われていた気がします．

ディスプレイ用の数式の決定版でしょうか．

 TeX Gyre Bonum MathUnicode数式フォントの先駆けTeX GyreのURW Bookman系のフォントです．

全体的に太くがっしりしています．

 TeX Gyre DejaVu MathDejaVu Serifに合わせた数式フォントです．

元気な印象のフォントなので，たぬき油性マジックと合わせて輪講用のスライドで使っていました．

 TeX Gyre Pagella MathPalation系の数式フォントです．

 TeX Gyre Scholar MathURW Schoolbok系の数式フォントです．

スクリーンに投影しても潰れづらい，数少ないセリフ数式フォントです．

 TeX Gyre Terms MathTeX GyreのTimes系フォントです．

otfでTimes系のフォントが使いたい方はぜひこちらを...

 XChater MathBitstream Chaterの後継フォントです．

フォントが全体的に四角く，x-heightが大きめで，現代的です．

 XITSTimes系のフォントです．

STIX バージョン1のOTF実装ということで，今ではアーカイブになっています．

 Noto Sans Math/usr/local/texlive/2025/texmf-dist/fonts/opentype/* の直下にはありませんが，Noto Sansも数式向けフォントを展開しています．

Google Font等でダウンロードできます．

ちなみにLaTeXでは notomath というパッケージがあり，これを使うとNoto Sansの数字・英字・ギリシャ文字 + Times系の記号でのタイプセットができます．

私がBeamerでスライドを作る際には\usepackage[sfdefault,vvarbb,smallerops,scaled=1.05]{notomath} で使っていました．

サンセリフの数式ながら数式として違和感がなく，Noto Sans JPとも相性がよいのでとても気に入っています．（\mathcal の小文字がないので文字化けしていますが...）