Chaos Engineering Toolの比較
はじめに
こんにちは、Sea Otterです。今回はエンタープライスやOSSで開発が盛んな Chaos Engineering Tool群について主要なツールを比較してみました。
Chaos Engineeringとは、本番環境でソフトウェアシステムに故障を注入することで、システムの信頼性を高める方法論です。複雑なシステムにおける混沌を受け入れ、実験を通してソリューションがそれに対処できるかどうかの信頼性を高めることができます。
Chaos Engineering Tool 比較
Chaos Engineeringのツールは多くありますが、主要な所では、Azure Chaos Studio / AWS Fault Injection Simulator / Chaos Monkey / ChaosMesh / Litmus Chaos などが挙げられると思います、いずれもChaos Engineeringのツールです。それぞれのサービスの長所と短所については、以下のように分類してみました。
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Azure Chaos Studio: Azure上で動作するアプリケーションやサービスのレジリエンスを測定・理解・改善するためのマネージドサービスです。Azure Kubernetes Service (AKS) クラスター上でChaos Meshフォルトを実行することができます⁸。Azureリソースに対して様々な故障を注入する能力があります。
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長所: Azure環境に最適化されており、操作が容易です。Azure上で稼働するアプリケーションやサービスに対して故障注入実験を簡単に設定し実行することができます。故障注入実験の結果をApplication InsightsやAzure Monitorなどの監視ツールと統合することで、アプリケーションのパフォーマンスや可観測性や回復力を向上させることができます。
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短所: プレビュー版であるため、機能や安定性が限られています。
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AWS Fault Injection Simulator: AWS上で動作するアプリケーションやサービスのレジリエンスを測定・理解・改善するためのマネージドサービスです。AWSリソースに対して様々な故障を注入する能力があります。
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長所: AWS FISは、さまざまなAWSサービスに対して制御された故障注入実験を設定し実行するプロセスを簡素化します。故障注入実験の結果をAWS X-RayやAmazon CloudWatchなどの監視ツールと統合することで、アプリケーションのパフォーマンスや可観測性や回復力を向上させることができます。
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短所: AWS FISは故障注入実験によって発生するコストや影響を事前に見積もることが難しい場合があります。
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Chaos Monkey: Netflixが開発したオープンソースのChaos Engineeringツールです。AWS上で動作し、EC2インスタンスやAuto ScalingグループなどのAWSリソースに対してランダムな故障を注入します。
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長所: Chaos Engineeringの先駆者的存在であり、豊富な経験と知見があります。また、システムの弱点や脆弱性を早期に発見し、修正することができます。
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短所: 故障を発生させるタイミングや範囲を適切に制御しないと、本番環境でのサービス品質や顧客満足度に影響を与える可能性があります。
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ChaosMesh: PingCAPが開発したオープンソースのChaos Engineeringツールです。Kubernetes上で動作し、コンテナやポッドなどのKubernetesリソースに対して様々な故障を注入します。
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長所: Kubernetes環境に最適化されており、多様な故障種類や可視化操作があります。特別な依存関係がなく、minikubeやkindを含むKubernetesクラスターに直接デプロイすることができます。ChaosMeshはコンテナやホストやプラットフォーム(Amazon EC2やApache KafkaやAzureなど)に対して故障注入実験を行うための豊富なライブラリを提供します。
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短所: Kubernetes以外の環境では利用しにくく、クラウドプロバイダー固有のリソースへの影響は限られています。ChaosMeshは現在アルファ版であるため、安定性や互換性に問題がある場合があります。
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Litmus Chaos: Mayadataが開発したオープンソースのChaos Engineeringツールです。Kubernetes上で動作し、コンテナやポッドなどのKubernetesリソースに対して様々な故障を注入します。Litmus SDKを使ってカスタムな故障を作成することもできます。Chaos Control Planeという中央管理ツールで、Litmus chaosのワークフローを構築・スケジュール・可視化することができます。
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長所: Kubernetes環境に最適化されており、多様な故障種類やカスタマイズ性があります。現代的なChaos Engineeringの実践に基づいており、コミュニティと協力しています。Litmus ChaosはChaosCenterというダッシュボードを備えており、そこから故障注入実験を管理したり、結果を視覚化したり、分析したりすることができます。
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短所: Kubernetes以外の環境では利用しにくく、クラウドプロバイダー固有のリソースへの影響は限られています。
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まとめ
以上、各サービスの長所と短所を比較してみました。クラウドサービスマネージドなサービスを利用するかOSSを利用するかは組織の判断で変わってきますが、実際に利用する場合はPoC環境でそれぞれの製品をハンズオンで触ってみて、自分のニーズや環境に合わせて適切なサービスを選択いただければ幸いです。
以上、Chaos Engineering Toolについての記事でした。ありがとうございました。😊
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