RobloxベイブレードXコンテストで行った挑戦と振り返り
先日Roblox ベイブレードX クリエイターコンテストが開催され、結果タカラトミー賞受賞という結果をいただきました。
こちらでは、今回のコンテストに臨むにあたり取り組んだチャレンジ(狙いや技術要素など)を、コンテストを振り返りながら述べていきます。
ちなみに、コンテストの各コンテンツは今も以下の「BEYBLADE PARK」にて遊べます。
挑戦①:競技性も高い「ガチンコベイブレードバトル」を
みなさん、ベイブレードXの公式の謳い文句知っているでしょうか?
(公式サイトより引用)
↑のように公式サイトにも出ているのが
「ベイブレードはスポーツへ」「GEAR SPORTS BEYBLADE X」
ベイブレードは遊びからスポーツ/競技へと進化していく、そんな思いがBEYBLADE Xには込められています。
これを見て、さらには実際に自分でベイブレードバトルしてベイバトルの激しさや魅力を知り、
作るなら、ベイブレードバトルの魅力が詰まった、「競技性の高いガチンコPvPベイブレードバトル」にしたい
さらには、リアルがギアスポーツなら、ゲームはeSportsが目指せるものにしたい、という思いで制作しました。
その上でできたのが、今回の「BEY BATTLER X」。
ベイブレードバトルの基本的な形を4人に拡張したPvPとして作りつつ、そこにプレイヤーとしての技術介入性や戦略を設け、
アニメや漫画で見るような、ベイにブレーダーの意思が宿るような、ベイとプレイヤー一体となったベイブレードバトル体験
を目指し作り上げました。
時間が足りず、まだまだ未熟な部分もありますが、
- 「3,2,1 GO SHOOT!」の掛け声で開始
- シュートの技術で回転性能が決まる
- プレイヤーが動いてベイをサポート
- 攻撃、ガード、スキルを使う戦略性
- ベイ同士のぶつかりあい自体見てて楽しい
- Xらしい必殺技
などのコンセプトに沿った要素が詰まった形にはなったかと思っています。
結果、プレイヤースキルを高めて連勝するプレイヤーも出たり、それと競い合うプレイヤーも現れたり、一部ではまさに本気で競い合うバトルが展開されました(制作者のぼくも刃が立たない強者もいました)。
プレイヤースキルによる競技性が高く、なおかつベイらしい予測不能な挙動もあいまった、ベイブレードバトルらしいPvPバトルができたと思います。
挑戦②:スマホでも操作しやすく
Robloxは、特に日本では、小さい子どもたちの利用も多く、モバイルデバイス(スマホ、タブレット)からの利用も多いです。
なのですが、開発をPCで行うことや周囲(関係者や配信者)もPCでプレイすることが多く、
開発サイドからだと、実際にはモバイルでの操作性というのは、二の次になってしまうことが多かったりします。
ベイブレードは子どもたちにこそたくさん遊んでほしいゲームでもあるので、今回しっかりモバイル操作対応も予め検討して開発しました。
ということでモバイルでの操作性も予め意識した上でゲームデザイン設計をしました。↑画像が実際のスマホ操作時画面。
具体的には、
- ぱっと見でわかるボタンによるバトル操作
- バトル中はカメラ操作をなしに
- 結果、左手で移動、右手側でボタン、のみの操作に集中
という形にしました。
個人的な感覚として、モバイルで操作に難を感じやすいのがカメラ操作だったので、
メインとなるバトル中はカメラを固定した見下ろしビューにして、カメラ無しで移動が単純化されるようにデザインしました。
結果家族・子どもとも何度もテストプレイしましたが、各自モバイルデバイスで、しっかり操作してプレイをすることができていました。
(また、実際には完全な対応はできてないのですが、PS4/PS5にもRobloxが展開されるのも踏まえ、コントローラーのボタンにもマッチしたボタンUIも意識しました)
挑戦③:LIVEビューモニターのあるバトルスタジアム
上述もしてきたとおり、競技性のあるeSportsのようなゲームを目指したということもあり、マップのデザインは
「eSports大会場のような、エレクトリックでサイバーなスタジアム」 にすることを決めて制作していきました。
会場全体は、ネオンやビームライトなどを組み込みサイバーな雰囲気を作り、
ステージ周囲や観客席でバトルを観戦してるだけでも過ごせる場作り、ができたかなと思います。
ただこの観覧できる場を構成するに当たり、技術的に大きな要素となったのが、「ベイバトルのLIVE スクリーン」 の実装です。
↑こんな形で、バトル場の上のスクリーンにはベイバトルが映し出されるようにしました。
これはRobloxの技術機能でいうとViewportFrameという機能で実装できるのですが、今回は
- ベイは激しく動くので、常時描画更新が必要
- ベイのモデルがハイポリなため、描画負荷が高い
- ステージ数分となる3枚のモニターに対してライブビューしたい
という点で、負荷の懸念がかなり大きいところが課題となりました。
ですが、どうしてもこのeSportsスタジアム風にするには入れたい要素だったため、
- バトル中などスクリーンが映らないタイミングではViewport更新を止める
- ベイの一部のパーツのみを同期して描画する
- 高負荷端末ではオフにする
といった負荷対策も入れた上で、3枚のライブビューを最終的には組み込みました。
一応通常プレイを阻害するようなことなく、ライブビュー機能が入れられたかと思います。
Robloxではただゲームをする場だけでなく、コミュニケーションの場として過ごせることも重要と考えており、
こういった、ただ観戦したりおしゃべりして過ごしたりするような余地をいれる、のは大きなテーマと考え実現しました。
挑戦④:カーブによるレール移動や演出
↑こちらの外周にある緑のレール、これにのってライドレール移動ができるようにしました。
デザインとしては、ベイブレードスタジアムのXラインをモチーフとして外周に設置、Xダッシュのような高速移動でスタジアムを一周できる、というものです。
これは元々は、Fortniteにて、グラインドレールというのが今春に実装され、それが気持ちいい&見栄えもいい、ということでRobloxにもほしいなということで、自前でプロトタイプ実装していたものです。
自前で、カーブ生成、カーブ移動、両方の実装をしており、物理依存でもないので、
- どういった形、粒度のカーブにするか
- どういった速度、加減速するカーブ移動にするか
といったことも自由自在です(どんなに高速でも安定して動く)。
そのため、外周のレール移動だけじゃなく、バトル中の必殺技「X Attack」も同じカーブ生成、移動で動いています(↑画像)。
ベイがカーブに沿って、加速しながら移動して、ベイブレードのエクストリームダッシュのごとき必殺技演出としたものです。
カーブ移動で様々な動き・演出を取り入れることができました。
挑戦⑤:チームで開発
これまで、Robloxは個人でしか制作してこなかったのですが、今回はチームでの制作に挑戦しました。
そうした理由としては以下です。
- チームで制作したほうがコンテンツのクオリティが上がる
- 今後チーム開発の必要性も高まると考えている
- ちょうどDEVLOX Academyにより周りにもRoblox向けアセット制作者が増えた
大前提としてチームで作る方が1人以上の成果を出しやすく、当然チームでやる効果は大きいです。
ただそれでも、ToolBoxなどの活用により、1人でもある程度作れるのがRobloxであり、チームは連携や管理等で少なからずコストがかかる側面もあります。
そういったことも踏まえ、個人で作るケースが多いと思うのですが、
ただ今後は、Robloxの盛り上がりとともに、クオリティやオリジナリティの必要ラインがあがり、チーム開発の必要性も高まるんじゃないかと考えています。
それゆえ、信頼できる方々とチームで制作する経験はそれ自体が大きな価値があると思い、また周囲の状況もあり、今回チーム制作にトライしました。
当然、制作物の依頼、要件の伝達、スケジュール管理、納品物チェック、などもろもろのやりとりや管理をしますが、それ以上の多大な価値をもたらしてくれました。
また一緒に制作したいと思うような良きチーム開発経験ができたと思います。
まとめ:全体を振り返る
というわけで、約40日間に渡って、開発、デバッグ、調整、プレイとしていきたベイブレードX制作、
実はこんな考えや狙いを踏まえて作っていました、という振り返りでした。
こうゆう風にみると、バチッと理想物を作ってきたかのように思うかも知れませんが、その10倍くらい苦労もたくさんでした。
多くは語りませんが、やはりPvPゲーム(しかも物理や負荷との戦いもあり)のゲームバランス調整はめちゃくちゃ大変で、それを最後まで時間かけていた印象は大きいです。
ですが、結果PvPとしてバトルを楽しんでいただけてたように思うので、ギリギリまで調整してよかったと思うところです。
今回制作したゲームは以下の「BEYBLADE PARK」より遊べます(入って左側の島にあります)ので、よかったらやってみてください。
以上です、おつかれさまでした!
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