【DAY53】完成したWebシステムを改修して、技術の全体像を掴む方法
Webシステムを“改修”することで得られる、本質的な技術理解
一つのWebシステムを完成させた段階では、「作ったぞ」という達成感と同時に、「これは本当に理解できているのか?」という問いが生まれる。特にバックエンドから構築した場合、APIやデータ処理、認証などに集中する一方で、「セキュリティ対策」「設計の見直し」「インフラ構成」などの周辺技術には十分手が回っていないことも多い。
そこで有効なのが、既存システムの“改修”を通して技術を深掘りすることだ。ただ作るのではなく、完成したものに対して構造的な視点で手を加えていく。これによって、以下のような各技術領域の理解が一気に深まる。
フロントエンド:状態管理とUXの最適化
改修の対象としてまず検討できるのが、UIの整理と状態管理の見直し。単に表示されるだけのページから、ユーザーの操作に応じたフィードバックやローディング制御などを加えると、ReactやVueなどのライブラリを導入する価値が見えてくる。結果として、技術選定と体験設計の視点が育つ。
バックエンド:ルーティングと責務分離の見直し
初期段階ではAPIの設計や処理の配置が混在していることも多い。改修においては、ルーティングの整理、コントローラー/サービス層の切り分け、バリデーションの共通化などを実施することで、「コードを動かす」から「保守しやすい設計にする」方向へと認識が変わる。
データベース:スキーマ設計とパフォーマンス最適化
実装初期は「とりあえず保存できればOK」だったDB設計も、後から見ると非効率な点が多い。改修では、正規化/インデックス/リレーション設計を見直し、さらに検索パフォーマンスやクエリの最適化にも着手することで、データ構造の設計力が鍛えられる。
セキュリティ:意識しなければ一切育たない領域
改修で特に意識すべきはセキュリティ。ログイン周りの処理やCookieの扱い、CSRF対策、入力バリデーションの強化などを追加することで、「脅威に備えるコード設計」が可能になる。この領域は、触れずに完成だけを目指していると完全に置き去りになってしまう。
インフラ/運用:開発者から“提供者”へ視点を変える
Firebase HostingやVercelでのデプロイに加えて、環境変数、エラーログ、モニタリング、パフォーマンスチューニングなどを意識し始めると、アプリを“公開して終わり”ではなく、“運用して育てる”という視点が得られる。
結論:完成したものを育てることで「理解の深さ」が変わる
Webシステムを一度作っただけでは、全体の技術は見えても、十分に理解できているとは言い難い。しかし、それを素材として改修・設計改善を繰り返すことで、技術全体が線でつながり始める。
改修とは、既存コードの不完全さを自分の手で発見し、それを潰していくプロセス。まさにそれこそが、総合的なエンジニアリングスキルを育てる最短ルートだと実感している。
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