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【生成AI】GPT-5登場。これからどうなる...?

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はじめに

先日、OpenAIからGPT-5がリリースされました。コーディング能力はもちろんのこと、ほぼすべての能力が向上しています。この圧倒的なパワーに筆者自身も熱狂する一方、私たちコーダーは冷静にこの影響を捉える必要があります。GPT-5がコーディングの世界に新たな道筋を与えてくれたと同時に、その力がもたらす「手軽さ」の罠に注意を払わなければなりません。

この記事では、これからの時代における我々「開発者」の在り方について、個人的な目線から思うことを書いていこうと思います。

GPT-5の登場と、これからのコーディングライフ

GPT-5。出ましたね。

私の周りでも「もうコードを書く必要がないのでは?」といった声が見受けられます。半分はその通りかもしれませんが、もう半分は「いや、話はそれほど単純ではない」と感じています。

率直に言って、生成AIを使えば、今まで苦労して書いていたコードが、ものの数秒で生成されるのは事実。個人開発や小規模なツールであれば、専門家がいなくても「動くもの」が作れてしまう時代が既に一般的となりつつあります。その結果、レビューもされていない、いわゆる「粗雑なサービス」が世に溢れる未来も、想像に難くありません。

しかし、そこで悲観するのはまだ早いということです。AIにコードを書いてもらうこと自体は、むしろ歓迎すべきことでしょう。問題は、私たち開発者がこれから「何を自らの価値としていくか」です。

今までも言われてきましたが、これからの時代は、コードをゼロから「書く」スキルよりも、AIが生成したコードを深く「理解する」スキルの方が、何倍も重要になります。そして、その上で、さまざまな分野の知識や経験を武器に、システム全体を俯瞰できる人が、一歩リードしていくでしょう。

GPT-5の驚くべき性能

悔しいことではありますが、まず認めなければならないのは、GPT-5が非常に優れたものであるという事実です。OpenAIのCEOが「博士号レベルの専門家」と評していたのも、あながち大げさではないと感じています(博士号をお持ちの皆様...どうでしょうか?)。

しかし、今井翔太さんが以下の動画内で述べている通り、「博士号レベルの専門家」としての回答が、必ずしも便利であるとは限りません。自身の知識レベルを大きく超えた回答に対しては、内容を深く検討せずにコードを採用してしまう人が増えてくるのではないかと懸念しています。

https://youtu.be/QflZFw4J21k?si=SFSUkCkHqcghlpuG

特にフロントエンドの領域では、人間が作成したかのような洗練されたUIを一度で生成することができるようになりました。GPT-5では更にデザイン性も向上し、簡単なプロンプトを投げるだけで、センスの良いUIが返ってくるようになりました。

「ハルシネーション」も大幅に減少したという資料が公開され、「生成された文章やコードは正しい」という認識が広まることで、出力を完全に信頼してしまう状況は容易に想像できます(もちろん、数値が示す通り、ハルシネーションが減少したのは紛れもない事実です)。

要するに、私たちの手には、またしても強力なツールが与えられたのです。

「とりあえず動く」がもたらす未来

しかし、この強力なツールは、便利すぎるがゆえの懸念点も内包しています。「Vibe Coding」という言葉も浸透してきましたが、これはプロンプト一つで誰でもコードが作れる一方で、品質やセキュリティが後回しにされがちであるという側面を示唆しています。

私がよく参考にさせていただいているKyoheiさんが動画内で述べていることは、まさにその象徴です。私が愛用しているSupabaseでは、キーが公開用に設定されているため、RLS(Row Level Security)を適切に設定しなければ、セキュリティが脆弱になってしまいます。

https://youtu.be/CkrrDvhQSOQ?si=VpD9I4ocDkmvd4iY
https://zenn.dev/hand_dot

GPT-5においては、バックエンド部分まで含めてプロジェクト全体を生成できるようになりました。開発者自身が多少の修正を加えないと動かなかったり、バグ修正に逆に時間がかかったりした世界は過去のものとなり、非常に容易に動作するものを作成できるようになったのです。

この「開発が速くなった気がする」という感覚は、非常に危険です。この「感覚と現実のズレ」が、私が懸念している「粗雑なサービス」を生み出す根源になると考えています。

これからあるべき開発者の姿勢

これからの私たちの主な仕事は、AIという非常に優秀(しかし、時折誤りを犯す)な部下が書いてきたコードをレビューする、編集者や監督のような役割に変わっていくのだと思います。

AIのコードは生成プロセスが掴みずらい「ブラックボックス」のようなものであるため、「本当にこれで問題ないか?」と常に疑いの目で見る必要があります。ロジックの穴、潜在的なバグ、いわゆる「コードの匂い」を嗅ぎ分ける能力。それこそが、私たち人間にしかできない仕事になるはずです。

もう一つ、生成AIがもたらす危険なギャップとして、「自身の能力以上のコードを生成できてしまう」点が挙げられます。これは、コードが動くことへの「自信」と、それを本当に理解し検証できる「能力」との間に、大きな溝を生む可能性があります。

例えば、暗号化にあまり詳しくない開発者が、GPT-5に「優れた認証機能を独自に実装してほしい」と依頼したとします。コードは一瞬で生成され、ログインも問題なくできるでしょう。しかし、その裏で非推奨のアルゴリズムが使われていたり、権限設定に不備があったりすることに、果たして気づけるのでしょうか? このギャップを埋められるのは、やはりコードを深く「読む」力だけなのです。

以下は、SupabaseのDOCSに記載されていたデモコードにセキュリティホールがあった例です。
https://zenn.dev/keisho_tech/articles/f19396bf5c4992
生成AIには関係しませんが、脳死でコードのコピペはいかなる場合においても、絶対にしてはいけません。

結局、どのような開発者でありたいのか

私が思うに、これからの時代で輝くのは、単にコードが書ける・読めるだけでなく、より広い視野を持つ開発者です。

「トータル・システム・シンキング」という言葉が、この考えを的確に表現していると感じます。要は、自分が担当する一部分だけでなく、プロダクト全体がどのように動作しているのか、ビジネスとしてどう成り立っているのかまでを理解する力のことです。

データベースのスキーマ変更が、フロントエンドの表示速度やユーザー体験にどう影響するか。スティーブ・ジョブズのように、どこまで自分なりのこだわりを持てるか。そういった、分野をまたいだ繋がりを想像し、開発者としての個性を発揮する。そのような人だけが、AIを単なる道具としてではなく、オーケストラの指揮者のように操れるようになるのだと思います。

AIは「どのように(How)」コードを書くかは教えてくれます。しかし、「なぜ(Why)」この機能が必要で、「もし(What if)」これが失敗したらどうなるかを考えるのは、私たちの仕事です。

これらは、一面的な知識だけでは対応が難しいでしょう。バックエンド、フロントエンド、さらにはビジネスや実際に使うユーザーの気持ちまで、多くの知識と想像力が求められます。

まとめ

GPT-5は革命的なツールですが、使い方を誤れば、質の低いサービスを増やすだけの結果になりかねません。今後、コードのチェックすらされていない、サービスがもっと増えていくでしょう。そんなサービスに個人情報を預けるのは非常に恐ろしい...。

そして、AIがもたらす変化は、仕事を奪うものではありません。私たち開発者を、より面白く、よりクリエイティブな仕事へと押し上げてくれるチャンスなのです。さらには、開発効率を圧倒的に高めてくれる優秀な右腕でもあります。

変化を恐れずに、コーディングライフを楽しんでいきましょう。

立命館慶祥高等学校【K-Tech】

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