小規模データサイエンスチーム向け:SSOT実現へのステップ0 はじめに

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0章:はじめに ─ 小規模データサイエンスチームがSSOTを目指す理由

🎯 このシリーズの目的

この連載は、小規模なデータサイエンスチーム(3〜5名規模) が、
限られたリソースの中で「SSOT(Single Source of Truth)」を実現するまでの過程を、
実際の技術構成(dbt・GitHub・Docker・Redshift・CI/CDなど)とともに整理していくものです。


💡 背景と課題意識

多くの小規模チームでは、こんな悩みを抱えています。

  • メンバーごとにSQLが違う
  • どの数値が“正”かわからない
  • TableauやRedashの裏側で似たようなクエリが乱立
  • 「あのクエリ、誰が書いたんだっけ?」という属人化

これらはすべて、「再現性と統一性の欠如」に起因します。
データが組織の中で“ひとつの真実”になっていない状態です。


🧭 SSOTとは何か

SSOT(Single Source of Truth)とは、
「誰が見ても、どこから見ても同じ“正しい数値”にたどり着ける状態」 のことです。

  • クエリの定義がコードで一元管理されている
  • どの指標も同じロジックで集計される
  • 変更履歴がGitで追える

これが実現すると、分析チームの文化は劇的に変わります。
**「再現性のある分析」**が当たり前になり、意思決定のスピードも精度も向上します。


🧩 小規模チームが抱える制約

ただし、小規模チームには特有の事情があります。

制約 内容
人手が少ない 専任のデータエンジニアがいない
予算が限られる SaaSのフル導入は難しい(例:dbt Cloud)
スピードが命 分析と開発を並行で進めたい
属人化リスク 「その人しか知らないSQL」が多い

このような環境でも、再現性のある仕組みを構築できるのがdbtの強みです。


🧱 このシリーズで学べること

この連載では、以下の6ステップで「チームがSSOTを実現していく過程」を紹介します。

ステップ テーマ ねらい
1 dbt Core × SQLite Macローカルでdbtを動かし、Data as Codeを体感する
2 Redshift接続 クラウド環境で共通スキーマを共有
3 Docker × GitHub チーム全員が同じ環境で開発できる仕組みづくり
4 GitHub Actions CI/CDでdbtを自動実行、品質を担保
5 Semantic Layer KPI・メトリクスの定義をコード化
6 運用定着 SSOTを文化として根付かせる

🧠 コンセプト:「Data as Code」

このシリーズ全体の根底にあるのは、
データ分析もソフトウェア開発のように「コードで管理する」文化を根付かせる という思想です。

dbtを使えば、

  • SQLの再利用
  • テスト(data test)
  • ドキュメント自動生成
  • 変更履歴の追跡

がすべてコードベースで実現できます。
これが「Data as Code」という考え方です。


🧩 この連載の読者イメージ

タイプ 向いている理由
小規模スタートアップのデータ担当者 チームで分析の共通基盤を整えたい
シェアモビリティ・MaaSなどの現場分析者 オープンデータやリアルタイム分析を整備したい
dbtを使い始めたいデータサイエンティスト dbt Cloudなしで最初の一歩を踏み出したい

🚀 このシリーズで得られる変化

Before After
個々の分析者が好きなSQLを書いていた 全員が同じモデル・定義に基づく
修正が属人的 Gitでレビュー・履歴管理できる
数値の信頼性が曖昧 “HELLO CYCLINGの指標”として一本化されたKPI
変更に不安がある dbt test / CI で自動検証される

💬 最後に

SSOTはツール導入ではなく、チーム文化の変革です。
そのためには、最初の一歩として
「dbtを自分の手で動かして理解する」ことが何より大切です。

このシリーズが、
同じように小規模チームで奮闘している分析者・データサイエンティストの方々にとって、
再現性あるデータ基盤づくりの一助となれば幸いです。


👉 次のステップ1では、
Macでdbt Coreを動かし、SQLiteを使って最初のモデルを作る手順を紹介します。


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