🙌

RevOps輪読会:第7章「現代のレベニュー組織におけるAI活用 ― AIが創造するインパクト」

に公開

概要

  • 対象読者:「RevOpsって聞いたことあるけど、結局なに?」な人。“AIを入れる前にデータが整ってない”問題に心当たりがある人

  • 内容:datatech-jp RevOps輪読会(第7章)で扱った「生成AIがレベニュー組織にもたらすインパクト」のざっくりまとめ(詳しい話が知りたい人は、本をぜひご覧ください)

序説

みなさん、突然ですが「RevOps(レブオプス)」という言葉をご存知でしょうか? 「聞いたことはあるけど、営業の話でしょ?」「結局なにをする人?」と思っている方も多いかもしれません。

しかし、データに関わる私たちにとって、実は無視できない概念になりつつあります。 昨今、「生成AIを業務に導入したい」という話は多いですが、「AIを入れる以前に、そもそも学習元のデータが整っていない」という問題に直面したことはないでしょうか?

まさにその課題への処方箋となるのが、こちらの本です。
https://amzn.asia/d/02oFCKN

以前datatech-jpの輪読会で自分は第7章「生成AIがレベニュー組織にもたらすインパクト」を担当しました。
https://speakerdeck.com/tyukei/revops-aigachuang-zao-suruinpakutonituite

当時の担当パートを振り返りつつ、「AI×データ×組織」の観点から要点をまとめてみたいと思います。

RevOpsとは

「そもそもRevOpsとはなんやねん」と思うので、まずRevOpsの説明からします。
厳密な定義があるわけではないですが、参考にした本には以下の通り書かれていました。

企業のレベニュー (Revenue) 組織(マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセス)のプロセス・データをシステムで統合・最適化することで持続的な収益成長を目指す概念、役割のこと。最適なシステムの導入、各部門に点在する収益データの統合・分析・管理、ダッシュボードの構築、経営・各部門リーダーへの提案、一貫性のある顧客体験の提供、社内にそのプロセスを浸透させるなどの役割を持つ。

自分の解釈では、RevOpsは Revenue(収益)+ Operations(運用) の略で、
収益に関わる部門(マーケ・営業・カスタマーサクセスなど)を横断して、
収益プロセス全体を“運用”で最適化する考え方/役割 です。

「営業が頑張る」「マーケ施策を増やす」といった部門最適ではなく、
顧客の購買〜継続(解約防止やアップセルまで)を一つの流れとして見て、全体を最適化するイメージです。

例:RevOpsの例

たとえば、こんな改善もRevOpsの典型例です。

  • 定義を揃える

    • 「商談化」の定義が、案件登録なのか初回MTG実施なのか部門でズレている
      → 部門横断で定義を統一して、同じKPIとして議論できるようにする
  • データを揃える

    • 部門ごとに顧客データが散らばっていて、同じ会社が別物として扱われている
      → 顧客IDを統合して、SSOT(後述)を作る

SSOT(Single Source of Truth):正として扱う“統一されたデータ源”のこと
(例:「売上の正はここ」「顧客の正はここ」など、ブレない“正本”を決める)

ここまでがRevOpsの前提です。
そして生成AIの話をするときに重要なのが、「AIは部門の作業を早くする」だけでなく、
部門横断のデータや知識がつながっているほど価値が跳ねやすい、という点です。
次は、輪読会(第7章)の内容として「生成AIがレベニュー組織にもたらすインパクト」をまとめます。

第7章「現代のレベニュー組織におけるAI活用 ― AIが創造するインパクト」

まず、詳しく知りたい方は、こちらの本ぜひ一読してみてください!
https://amzn.asia/d/02oFCKN

ちょっと気になるという方は、以下の輪読会で使用した資料を一読してみてください!〜
https://speakerdeck.com/tyukei/revops-aigachuang-zao-suruinpakutonituite

以上!!!
……とするのも味気ないので、今回はその資料の内容をかいつまんで説明します。

結論

結論から言うと、生成AIは「文章がうまく書けるようになる」みたいな話に留まらず、マーケ・営業・CSをまたぐ情報の流れそのものを変え、“収益”につなげるには、RevOps的な 統合(SSOT)と運用(ガバナンス) が必須となるというお話です。

生成AIとRevOpsの親和度は大きい

生成AIと親和度が高いのは、RevOpsに限った話ではありませんが、レベニュー領域(マーケ・営業・CS)に特に効きやすい、というのがポイントです。

理由はシンプルで、

  • レベニュー領域は「文章」「会話」「提案」「問い合わせ」など、言語情報が中心
  • 顧客接点が多く、ログが溜まりやすい(メール、通話、商談メモ、問い合わせ履歴…)
  • “標準化しづらいが、パターンはある”仕事が多い(例:提案、ヒアリング、FAQ対応)

といった特徴があり、生成AIが得意な領域と親和性が高いからです。

ユースケース

生成AI活用の例は部門ごとに語られがちですが、RevOpsの観点では「地続き」として見ます。
つまり、マーケだけ・営業だけ・CSだけで最適化して終わりではなく、部門をまたいで改善ループが回るところまでが狙いになります。

ここでは、部門ごとに起きる変化をざっくり見ていきます。

マーケ:データ品質×パーソナライズが伸びる

マーケ領域での使いどころは、大きく2つに分けられます。

1) データ整備・補完

マーケ施策は“入力データの品質”にめちゃくちゃ引っ張られます。
たとえば、以下のような地味だけど重要な作業にAIが効きます。

  • 会社名・部署名の表記ゆれ補正(名寄せの補助)
  • 不要データや重複データの検出

こういう整備が進むと、配信対象のセグメント精度が上がって、結果的にROIが良くなります。

2) コンテンツ生成・配信(パーソナライズ)

もう一つは、みんな分かりやすい「文章生成」系です。

  • セグメント別メール文面の生成
  • LP(ランディングページ)文案の作成
  • 広告文のバリエーション作成

ただし、ここで注意点もあって、生成AIによってコンテンツを作るコストが下がるほど、世の中は「コンテンツ過剰」になっていきます。
この話は後で出てくる push→pull(押し売り型から、必要な時に探す型へ)にも繋がります。

営業:会話データが資産になり、タスクが自動化される

営業は、生成AIの恩恵がかなり分かりやすい領域です。
理由は「会話」が仕事の中心で、生成AIが得意な情報(言語)が大量に発生するからです。

例えばこんな変化が起きます。

  • 商談の文字起こし → 要約 → 論点整理
  • 次アクション(メール案、確認項目、宿題)の提案

これまで属人化しやすかった「良い商談の進め方」「良いヒアリング」などが、ログとして蓄積され、再利用しやすくなります。

CS:受け身から“先回り”へ

CS領域では「問い合わせ対応が早くなる」だけではなく、先回りの運用に繋がるのが大きいです。

  • 問い合わせ対応(回答案生成/ナレッジ検索)
  • 解約兆候の検知、アラート
  • 活用提案の自動生成(「この機能を使うと良い」など)

ここが進むほど、「営業が導入前に何を約束したか」「期待値が合っていたか」が解約率に直結しやすくなります。
つまり、CSを強くするにはCSだけを頑張るのではなく、マーケ・営業にフィードバックして全体を改善する必要が出てきます。

RevOpsにおける生成AIのインパクト

pushからpullへ

生成AIでコンテンツ生成が簡単になると、世の中の情報量が爆増ますが、1日24時間は増えません。(当たり前)
じゃあどうなるかというと顧客は

  • 「検索」や「AI要約」で比較検討する
  • ベンダーからの情報をそのまま読まず、AIに噛ませて判断する
    みたいな行動が増えます。
    つまり、従来のような push型(広告を出す、メルマガを送る) だけでは戦いにくくなり、ユーザーは pull型(必要になったら調べる/要約してもらう) に寄っていきます。
    この変化によって
  • どんな情報が顧客に届くか(AIに拾われるか)
  • 社内の提案/ナレッジがどう流通するか
    など考える必要がありますます部門横断での設計が重要になります。

pull型の例:Web検索時に、AIエージェントがpull型で情報を提供する

SSOTの重要性

生成AI活用が本格化するほど、「データが整ってない問題」が顕著になってきます。
例えば、部門ごとに

  • CRMには商談情報
  • MAには行動ログ
  • CSツールには問い合わせ/利用状況
  • さらに通話ログや議事録がバラバラ

みたいにデータが散っていると、

  • AIが学習・参照する情報が偏る
  • 部門内では便利でも、全体最適にならない
  • 施策の効果検証ができない
    という形で詰まります。

だからこそ、RevOpsとしては

  • 顧客IDの統合
  • 主要指標(受注、継続、解約)の定義統一
  • “正本”データ(SSOT)の確立
    が重要になります。

シャドーIT問題

シャドーITとは「企業が公式に許可・把握していないIT機器やクラウドサービスなどを、従業員が業務に利用している状態」のことを指します。
シャドーIT問題が起こると、以下のリスクが高まります。

  • 現場が便利なツールを勝手に入れる
  • 顧客情報を貼り付ける
  • ログが残らない/監査できない
  • どの情報が学習に使われるか分からない

こうなると、AI導入が進むほどリスクも増えていきます。

なので、RevOpsとIT/セキュリティが協力して、最低限は決めておきたいです。

例:

  • 顧客情報(PII)を入力して良いツール/ダメなツール
  • プロンプトや出力の取り扱い(ログ/監査)
  • 人間が最終確認する範囲(Human-in-the-loop)
  • ツール導入の申請フロー

「AIを導入するかどうか」より、「どう運用するか」が重要になる、という話です。

輪読会をやった感想

正直なところ、この本を読み始めた当初は「RevOps?」「カタカナ(マーケ用語)多すぎ…」と面食らいました。
馴染みのない言葉も多かったので、自分用メモも兼ねて頻出用語を置いておきます。

  • CS:Customer Success(カスタマーサクセス)
  • CRM:Customer Relationship Management(顧客情報管理)
  • SFA:Sales Force Automation(営業案件/活動管理)
  • MA:Marketing Automation(マーケ施策の自動化基盤)
  • SSOT:Single Source of Truth(正本データ)
  • CDP:Customer Data Platform(顧客データ統合基盤)

読み終えて感じたのは、今は人間がデータを見て判断していますが、近い将来、マーケティング担当のAIエージェントと、営業担当のAIエージェントが自律的に連携する "Agent2Agent" の世界が来るのかなと思いました。
その時、もし部門間で言葉の定義(KPIやデータの意味)がズレていたら、AI同士も会話が噛み合わなくなってしまうので泥臭いデータ整理は人間がやるのかな。。。いや全体を統括するオーケストラAIがいてそこがデータ統合とかするのか??

いずれにしても、今のうちにRevOpsとして組織横断でデータを整え、「人間だけでなくAIも理解できる共通言語(SSOT)」を作っておくことが、実は最強のAI活用準備なのかなと思います。

結言

この記事は、datatech-jp Advent Calendar 2025の記事になります。
https://qiita.com/advent-calendar/2025/datatech-jp

datatech-jpで今年開催された輪読会やイベントの自分の担当箇所のまとめ
スライドと3行くらいの要約でもOK!

とあり、今年の春に「RevOps」輪読会に参加していたので、3行くらいなら書けるかなと思いアドベントカレンダーに登録しました。
(無事、3行以上書けて良かったです!)

最後になりますが、こうした学びの場(輪読会)やアウトプットの機会(Advent Calendar)を提供してもらい、すごいありがたいです!
また来年もdatatech-jpのコミュニティでればワイワイしていきたいです。

Discussion