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将棋AIとGPT──“自己評価”なき知能に未来はあるか?

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ChatGPTを使っていて、「この返答、本当に信じていいの?」と感じたことはありませんか?
出力は一見流暢でも、どこか“腑に落ちない”感覚。実はそこにこそ、生成AIの根本的なUX課題が潜んでいます。

この記事では、将棋AIや情報理論のアナロジーを通して、GPTの「自己評価」欠如という問題と、それをどう乗り越えるべきかを掘り下げます。


将棋AIの“勝率表示”はなぜ安心をもたらすのか?

将棋AIが一般に受け入れられたのは、単に強かったからではありません。
観戦者にとって重要だったのは、「この手の勝率は75%です」といった評価値の可視化でした。

これはユーザーに「AIがどう考えているか」「なぜその手を選んだか」のヒントを与えるものであり、信頼感や納得感につながっています。

→ GPTにはこの“勝率”にあたる情報がありません。


GPTの“確信のなさ”はどこにも表示されない

ChatGPTは、どれだけ自信がなくても確信に満ちた口調で応答します
また、「これは記憶か?予測か?直前の文脈の連想か?」といった生成の根拠がユーザーから見えません

結果として、

  • なぜこの答えになったのか分からない
  • 同じ質問でも回答が変わることに混乱する
  • 過去のセッションから情報が引き継がれているのか不明

といった、UX上の不信や混乱が生じています。


ファインマンがコネクションマシンに求めたもの

1980年代、リチャード・ファインマンは並列コンピュータ「コネクションマシン」に関わった際、こう述べました:

“直感的なアイデアには意味があるかもしれないが、理論的裏付けがなければ信用に足らない。”

これはまさに、今日のGPTにも通じる視点です。

「人間らしい返答」だけでは足りず、**なぜその答えにたどり着いたかを説明できる構造(説明可能性)**が求められているのです。


シャノンはAT&Tの経営に“情報理論”を持ち込んだ

クロード・シャノンは、AT&Tでの業務に「情報密度」「ノイズ」「符号化効率」といった数理的概念を持ち込み、
通信の最適化だけでなく、経営戦略にも大きな影響を与えました。

同様に、OpenAIもGPTの生成において:

  • 出力の「意味の重み」
  • 冗長性の定量化
  • 説得力や一貫性の指標

といった**“情報価値の指標化”を行うべき段階に来ている**のではないでしょうか?


GPTにも“自己評価スコア”を持たせよう

将棋AIの勝率表示のように、GPTにも次のような数値スコアを出力に添えるだけで、
UXが格段に向上すると考えられます:

  • Confidence(確信度)
  • Consistency(前後の整合性)
  • Context-link(過去の文脈依存度)
  • Verification source(検証可能性)

また、Wolfram Alphaのような構造化された論理エンジンをバックグラウンドに活用し、
GPTが「自己チェック」できるようにすれば、より信頼性の高い出力が可能になるでしょう。


結論:信頼されるAIには“自己評価の可視性”が必要

AIが人間にとって信頼できる存在となるには、その思考や判断の“筋道”が見えることが不可欠です。

GPTのような生成AIが社会インフラとなる前に、

  • 「これは確信を持った回答なのか?」
  • 「どの文脈に基づいて答えているのか?」
  • 「どれだけ矛盾が含まれているのか?」

といった情報を自己評価スコアとして明示する機構が求められています。

将棋AIの進化がそうであったように、GPTにも「強さ」だけでなく「信頼される構造」が必要なのです。

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