キースイッチレビュー2: Vertex V1
はじめに
打鍵動画
この記事を書いている間の打鍵音をアップロードしています。
ゆったりと記事を読みながら打鍵音を楽しんでみてください。
短いVer.
基本スペック
Vertex Angle などで知られる、Vertex と、現在もっとも勢いが強いであろうキースイッチのマニファクチャである、JWICK(以下 JWK)のコラボで生まれたスイッチです。
Vertex の認定(?)のベンダはClickClack.ioで、これまでも Vertex Angle や、Arc60 などのリードベンダを努めています。
ハウジングは PA66、ステムは POM と、JWK Black Linear に酷似したスペックです。
しかし、この 0.2 ドルの差はとても大きいものがあります。
そのあたりも含めて解説を行います。
Vertex V1(V One) Switches
Vertex V1 スイッチの基本性能は以下の通りです:
- タイプ: リニア
- ピン数: PCB マウント(5 ピン)
- 材質:
- トップ:ナイロン(PA66)
- ボトム:ナイロン(PA66)
- ステム:POM(Longpole)
- トラベル: 4.0+0.3mm
- オペレーション: 50+10gf
- ボトムアウト:62+10gf
- ファクトリールブ: 有無の選択可
- 15mm の非金メッキステンレス製
- 製造元: JWK
フォースカーブ
本家であるClickClackにフォースカーブがあったので、軽く眺めてみましょう。
あまりアテにはならないので軽くになりますが、触っていてもこのフォースカーブと大きくそこまで差は見受けられません。
また、底打ちまでは比較的素直に落ちていく印象があります。
ただし、人によっては滑らかなためか少し軽く感じる人もいるかと思います。
Vertex V1 の誕生について
いきなりにはなりますが、この Vertex V1、バックグラウンドや解説が少し Click Clack に載せられています。
いい機会ですので、これを機にOpenAI Translatorを使ってみます。
V One's story
ロロによって書かれた投稿です。以下はロロのスタイルで説明されます。
VERTEX のロロです。
ついに、VERTEX の最初のスイッチを紹介できます。
JWICK とこのスイッチのデザインで協力できることは非常に名誉なことです。
私たちは長い間スイッチのデザインを考えてきました。ただスイッチの色を変えるだけのテーマデザインは明らかに私たちの望むものではありません。
私たちは、真にカスタマイズされたデザインを求めています。
このスイッチのデザインの目標は、クラシックな MX ステムをベースにし、金型のカスタマイズを通じて性能を向上させると同時に、合理的な価格で市場に提供し、永続的で時代を超越したスイッチのデザインとすることです。
最も重要なステップ: 金型設計
V One スイッチは、JWICK 製造の最高仕様である 8 キャビティの金型を使用しており、すべての内部構造面はミラーサーフェス EDM(電気放電加工)で精密に処理されています。
JWICK のオーナーであるリー氏に敬意を表します。彼は新しい金型設計に向けて、不断の努力を重ねて協力してくれました。
デザインのあらゆる側面が、以前の JWICK の型における欠点を排除するために最適化されています。
何よりも重要なことは、同じなめらかさを保ちながら、ステムとハウジングの間の隙間を 0.025mm にまで減少させた点です。
これはこれまで達成されたことがありません。
最初のバージョンの型は実際にはかなり前に完成していました。その後、型の調整を行い、サンプルの製造とテストを繰り返してきました。
製造プロセス
射出成形
V One スイッチは JWICK の新しい工場で生産されています。
興奮するのは、この大量生産に最先端の住友 SE100EV-A 射出成形機
が活用されていることです。
これは大幅なアップグレードです。
金属部品
V One の動作および静止部分は繰り返し改良され、金パラジウム合金接点が使用されています。
金属のピンと音も最小限に抑えられ、性能と滑らかさに影響を与えることなく設計されています。
組み立てライン
スイッチの組み立ては主に自動組み立てラインによってほぼ完了しています。
潤滑剤の適用については、新しい精密スプレー技術を採用し、クラシックな潤滑プロセスと組み合わせることで、より良い工場の潤滑を実現しています。
自動 QC
組み立てられた V One はまず、以下のようなテストを含む自動 QC マシンを通過します。
- 伝導
- 接触抵抗
- 電圧絶縁強度
- 移動距離
マニュアル QC
V One では、カスタムメカニカルスイッチのタイピング感と音のパフォーマンスの高い期待に応えるため、別のマニュアル QC を実施します。
V One QC を強化し、金属音のスクリーニングを追加した手順を取り入れています。
これにより、V One スイッチはマニュアルルーブなしの目標により近づけるようにしています。
製造能力
JWICK は、V One の生産のために 3 台の射出成形機と新しい自動組立ラインを専用に投入しました。
これにより、我々はローリング生産をサポートできるようになりました。V One の在庫を確保し、継続的な納品を実現できます。
球状ポイント形状のステムボトム
ステムのシングルポイント接触により、よりクリーンで集中した音を実現しました。
型設計の改良とパラメーターの精密な制御により、ボトムアウト時のステムの振動を排除しました。
外観
長々と解説をしましたが、ここからは本題です。
ステムの画像等も含め、Click Clack のほうで見ることができますので、基本はそちらをどうぞ。
外観は上で語られている通り、Cherry 社のカラーマッチングロジックに従っていると記述しています。(ステムの色で基本的にはスイッチの特性やタイプを区別)
ステムの色は、Color of the Year 2022(PANTONE)のPANTONE 17-3938 Very Periだそうです。
ハウジングの色は、CherryMX 同様、不透明の黒です。
個人的にはシンプルかつ明瞭でとてもよいと思います。
オイル系のファクトリールブとのことですが、パッと見で漏れてる様子もなく、また特殊な構造をしているといった部分も特段見受けられません。
黒に対して、少し明るめな紫がアンバランスながらも、落ち着いた雰囲気の色のマッチングです。
音(スイッチ単体)
ピッタリ 70 個 x 2 箱を使い切ってしまった(1 箱で済ませる予定だったのですが、想像以上にいいスイッチで...)ので、残念ながら今回はスイッチの単体レビューはありません!
後日、外すなりなんなりして追記します!
音(取り付け)
今回は、IKKI68 Aurora Mizu と、Tony Studio Alice を使用します。
まず初めに。
Bye Bye JWK Black Linear
これはあまり言いたくなかったのですが、あまりにも置き換えるには理想の音をしていました。
スイッチの素材は大きく似ていますが、あまりにも音という傾向で見たときに優秀すぎます。
Thock 気味ですが、適度なロングポールが故に、綺麗なコトコト感がしっかりと鳴るスイッチという印象です。
うるさいとは感じないながらも、ロングポールのよい部分を活かした Thock 感が出ています。
JWK Black Linear はファクトリールブがないことはまずあげられると思いますが、その上の JWK Ultimate Black Linear と比較しても、性能は十分高いといえるでしょう。
Wobble(ぐらつき)により発生する音も無ければ、スプリングのノイズもなく、また Thock すぎないためにどのキーボードに乗せても十分な性能を発揮してくれる音となっています。
また、ファクトリールブが優秀なことにより、スプリングのノイズや、Stock の Alpaca などに見られるリーフの鳴きなどもありません。
全体的に優秀といえるでしょう。
強いていうのであれば、1U と 2U 以上の大きさの差が少し大きく、2U 以上だと籠りやすいといった部分ですが、ロングポール目当てで買った方がいたとしても、値段を考えればないに等しいと考えられるでしょう。
もちろん、Thock が欲しい方にとってはむしろメリットでしょう。
打鍵感
音という観点以上に打鍵感が優秀です。
私はファクトリールブ版しか購入していないので分からないですが、打鍵感が極まっています。
説明していきます。
- タイトさを一切感じない
これが本当に凄くて、タイトさを感じないけど、Wobble ではないという絶妙なラインを極めています。
タイトすぎると押し込むのが本当に辛いですが、それが一切ない。
個人的には一番嬉しい部分ですね。
- 滑らか
私が滑らか好き好きマンなのを知ってる方は多いと思います。
値段を考えるべきではないんですが、値段がどうしても印象として強いので出します。
値段を考えたら、同価格帯でこれ以上のものは手に入らないと考えていいでしょう。
とくに、ファクトリールブ版は限界まで丁寧に塗られていることもあって、滑らかです。
またその滑らかさという部分に個体差というのがほとんどないのは、特筆すべき事項でしょう。
少なくとも 140 個買っても 1 つもいまのところ感じていません。
- 打ち心地が軽快
これは打鍵音とか関係なしに、打っていて楽しいです。
スプリングが自分にあっているのも要因の 1 つだとは思うのですが、戻りの強さと押し込みの強さのバランスがキレイにとれているのがとてもいいポイントだと思います。
素直な押し込みと、適度に強い戻りがあいまって、次への入力の体験という部分が凄く刺激されます。
すでにここまでで 1 時間近く打っている気がしますし、手も痛いのですが、まだ動く。そんな感覚がありますし、手も比較的自然に動いています。
これまでキーボードオタクとして、いろいろなスイッチを打ってきましたが、初めての感覚です。
- どの方向から打っても、自然に落ちる
Wobble に少し関連します。
Alpaca でもこれはあったんですが、小指で US Enter の端っこを押そうが、2.75U space を真ん中で親指で押そうが、素直に落ちるという体験に大きな差がない。
これが本当にいいです。
自分は打鍵のクセが微妙に強くて、結構普段使いするスイッチを選ぶんですが、これはいまのところ Alpaca 並みにマッチングしていて、本当に嬉しい。
Bye Bye Alpaca
すみません このネタ 2 度目です。
ただ、本当の話です。
なぜ Bye Bye Alpaca なのかというと、Alpaca を嫌いという人が、少なくともこれまで自分が見てきた中ではいなかったことが挙げられます。
一舎員として、Alpaca というスイッチをとても推してきました。
たぶんマジで Alpaca Alpaca うるさいので、Alpaca の人だとか思ってる人もいると思いますが、それだけ私は店舗の対応では、度々推してきました。
そのたびにこれいいねと言ってくれる方がいたりだとか、即買いに走る人を見てきました。
少なくとも後悔させないスイッチという自負が自分の中でありましたし、購入していただいた方たちもそう感じていると思います。
今後も多分それは変わらないと思います。
ではなぜなのか
ただただ、値段が Alpaca より安くて、Alpaca を上回ってしまったから。
これに尽きます。とくに Stock に関しては。
Alpaca って、普遍的に気に入られるスイッチという観点においては頂点にいるとまで自分は思っていました。
- 適度な滑らかさと、適度なファクトリールブ
- 比較的安定した在庫
- オススメしやすい、CherryMX Red に近い(というか上位互換)打鍵感
- Stock でも優秀な音
- 金メッキスプリング
- 常に最新の金型色
- GMK Olivia に合わせて作られるだけあって人気のカラースキーム
- 値段も 1 個$0.5 前後
優秀じゃないわけがないのです。
ただ、Vertex V1 がすべてにおいて上に行ってしまった。
とにかくこれに尽きます。
Alpaca が悪いとかではなく、V1 が良すぎた。
SwagKeys
このレビューを見てくれて、買いたいと思ってくれた方がいればとても嬉しいです。
で、実は Vertex V1 を語るにおいてもっとも欠かせないのが、韓国にある SwagKeys というストアです。
現状、日本での V1 の入手方法がありません。
ただ、この SwagKeys がとても優秀で、スイッチ 150 個程度なら送料が$7 前後と、日本国内での送料と大差ない部分なのです。
PR とかでもなんでもなくて、珍しいスイッチが毎月のように入荷されるので、自分はよく使用しています。
もしよければどうぞ(クーポンとかなにもなくて申し訳ないですが)
海外ストアでの購入にためらいがあるという方がいれば、遊舎工房にリクエスト投げてみるのもいいかもしれません。
ただし、こちらの方法は入荷するは分からないので、確実に入手できるとは言えないです。
総評
基本的にどんなスイッチでも愛しているので、あまり悪く言ったりしない自分ですが(辛口めなときはある)、それでもこのスイッチはまだいいところを探せば出てくると思います。
とにかく優秀。
この一言に尽きるのかなぁと思っています。
ということで、買うか迷ったら買ってみるといいと思います。
1000 個買っても$300 ですからね。
そんなスイッチでした。
P.S. レビュー早く出すために写真とか撮ってない(2023.08.03 時点)ので、あとでいろいろ撮って載せておきます!
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