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OTFSの雰囲気を掴もう!

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はじめに

Orthogonal Time Frequency Space(OTFS)変調について勉強したので、そのアウトプットとしてまとめていきたいと思います。
数学的な厳密性は置いといて、OTFS変調がどのようなものか共有していきます。

概要

救急車のサイレンなどで有名なドップラー効果は、高速移動環境での無線通信でも生じます。現在広く使われているOFDM変調は、そのドップラー効果によるチャネル変動に弱いという特徴があります。
そこで高速移動環境に強い通信方式としてOTFS変調は、提案されました。

基本原理

通信路について

送信機から送信された信号は、直接届く直接波のみではなくて、下の図のようにビルや家などで反射した信号も受信機に届いています。

反射して届いた信号は経路も長くなり直接波に比べて遅延が生じます。また、下の図の例では受信機も動いているため、信号はドップラーの効果も受けます。

OTFSは、このような遅延・ドップラーが存在する環境を想定している通信方式です。(従来のOFDMは遅延は想定しているが、ドップラー効果による周波数方向のチャネルの広がりを制御できない)

データの送信・復調

まず遅延・ドップラー領域のグリッドを用意して、送りたいデータを配置します。
この2次元グリッドにデータを配置するというのがOFDM変調とは異なる新しい提案です。

このグリッドのままだと電波に乗せることできないので、ISFFT(Inverse Sypletic Finite Fourie Transform)という手法を用いて送信可能なデータに変換します。その後、通常のOFDMの技術を用いて電波に乗せて送信します。

受信時には、送信時と逆のプロセスで(OFDM復調→SFFT)で、グリッド上のデータに戻します。
 

例えば、下の図のような2つの経路がある通信路を考えます。

 
(0,0)にデータを配置したとします。

そのとき、今回の例では遅延:2ドップラー:1の経路と遅延:1,ドップラー:3の経路があるので、(2,1)と(1,3)に強いデータが現れます。

利点

このような2次元のグリッドを想定してデータを配置することで、複数のデータを配置したときにドップラー効果の影響を受けたときも、データがグリッド上の異なるマス目にあるため、受信側で簡単にそれぞれを復調できます。

まとめ

この記事では、数学的な厳密性を抜きにして、OTFS変調がどのような考え方で、なぜ次世代通信で注目されているのかを見てきました。

OFDMは、高速で移動する環境では、チャネル(電波の通り道)の影響が複雑に変動してしまうという大きな課題を抱えていました。

それに対しOTFSは、データを配置する場所を「時間-周波数領域」から「遅延-ドップラー領域」へと変換するという、新しいアプローチを取ります。この領域変換により、高速移動によって複雑に変動していたチャネルの影響を、安定した点の情報」として捉えることができるようになります。

これにより、OTFSは高速移動環境やマルチパス環境において、OFDMよりも圧倒的に通信効率と信頼性を向上させます。

Discussion