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トラ技2019/7月号でカルマンフィルタを学ぶ(4)-倒立振子の物理パラメータを算出する

2024/12/22に公開

部品の物理パラメータを測定

倒立振子で使う部品の物理パラメータを測定します。なお、「前後方向寸法」「縦方向寸法」については、参考書の通り以下とします。

「前後方向寸法[m]」は,倒立振子が直立した状態における前後方向の寸法です.
「縦方向寸法[m]」は,倒立振子が直立した状態における縦方向(鉛直方向)の寸法です.

また、参考書では半分のサイズの倒立振子が2つ結合していると見なしているので、これに従っていきます。

タイヤ

項目
質量[kg] 0.013
半径[m] 0.031
回転軸から重心までの距離[m] 0

ギアボックス

項目
質量[kg] 0.017
前後方向寸法[m] 0.016
縦方向寸法[m] 0.027
回転軸から重心までの距離[m] 0

シャーシ

項目
質量[kg] 0.047
縦方向寸法[m] 0.17
回転軸から重心までの距離[m] 0.076

電池ボックス

電池ボックスには4本電池が入るものとします。

項目
質量[kg] 0.120
前後方向寸法[m] 0.015
縦方向寸法[m] 0.056
回転軸から重心までの距離[m] 0.043

制御基板

項目
質量[kg] 0.048
前後方向寸法[m] 0.010
縦方向寸法[m] 0.072
回転軸から重心までの距離[m] 0.11

本体の質量

「本体」はシャーシ+ギアボックス(2個)+電池ボックス+制御基板です。

\begin{aligned} m_p &= \dfrac{1}{2}(m_{plate}+m_{gear}×2+m_{battery}+m_{circuit}) \\ &= (0.047+0.017×2+0.120+0.048)/2 \\ &= 0.249 \\ &= 0.1245 \end{aligned}

本体の慣性モーメントを算出する

各部品の物理パラメータを測定できたので、次に本体の慣性モーメントを算出します。
本体の慣性モーメントは各部品の慣性モーメントを足し合わせれば良いです。

  • 板の慣性モーメント
    I=\dfrac{1}{12}my^2

  • 直方体の慣性モーメント
    I=\dfrac{1}{12}m(x^2+y^2)

  • 円盤の慣性モーメント
    I=\dfrac{1}{2}mr^2

  • 平行軸の定理
    部品の慣性モーメントは「車軸まわり」の慣性モーメントを考える必要があります。部品の重心での慣性モーメントをI_G、部品の質量をm、部品の重心から車軸までの距離をr_Gとすると、部品の車軸での慣性モーメントIは以下となります。
    I=I_G+mr_G^2

シャーシは板形状なので慣性モーメントは以下となります。

\begin{aligned} I_{plate} &= \dfrac{1}{12}×0.047×0.17^2+0.047×0.076^2 \\ &=0.000384664 \end{aligned}

ギアボックス・電池ボックス・制御基板は直方体とみなして慣性モーメントを算出します。

\begin{aligned} I_{gear} &= \dfrac{1}{12}×0.017×(0.016^2+0.027^2)+0.017×0^2 \\ &= 0.000001395 \end{aligned}
\begin{aligned} I_{battery} &=\dfrac{1}{12}×0.120×(0.015^2+0.056^2)+0.120×0.043^2 \\ &= 0.00025549 \end{aligned}
\begin{aligned} I_{circuit} &= \dfrac{1}{12}×0.048×(0.010^2+0.072^2)0.048×0.11^2 \\ &= 0.000601936 \end{aligned}

本体の慣性モーメントについては以下となります。

\begin{aligned} I_p &= \dfrac{1}{2}(I_{plate}+I_{gear}+I_{battery}+I_{circuit}) \\ &= (0.000384664+0.000001395+0.00025549+0.000601936)/2 \\ &= 0.000621742 \end{aligned}

本体の重心位置

参考書より。

重心とは,大きさを持つ物体(剛体)において,全質量がその1点に集中していると見なせる点のことでした.空間中の1点に質量 が集中したもの,すなわち「質点」の慣性モーメントIは,回転軸から質点までの距離を使って次式で表されます.
I=mr^2
これを変形して
\sqrt{I/m}

したがって、

\begin{aligned} r_p &= \sqrt{0.000621742/0.1245} &= 0.070667614 \end{aligned}

タイヤの慣性モーメントを算出する

ホイールを含むタイヤの慣性モーメントは円盤の慣性モーメントの式に代入して求めます。

\begin{aligned} I_w &= \dfrac{1}{2}mr^2 \\ &= \dfrac{1}{2}×0.013×0.031^2 \\ &= 0.000006247 \end{aligned}

モータの物理パラメータを測定する

モータの回転子に関するパラメータ

参考書を見るとバラして測定しています。もうバラすしかありませんが、バラしたものをもとに戻して同じように動かせる自信は自分にはないので壊すためにもう一つ買うという富豪的解決法を取りました。

項目
モータ回転子の質量[kg] 0.002
モータ回転子の半径[m] 0.0041
モータ回転子の慣性モーメント[kg・m^2] 0.000000017

倒立振子の状態方程式における定数の値

上記で測定した値をまとめます。モーターの電気系のパラメータについてはまだ分かっていません。

定数名 説明
m_w タイヤ1個分の質量[kg] 0.013
m_p 倒立振子本体の質量÷2[kg] 0.1245
r_w タイヤの半径[m] 0.031
r_p 車輪から車体の重心までの距離[m] 0.070667614
I_w 車輪周りのタイヤ1個分の慣性モーメント[kg・m^2] 6.247×10^{-6}
I_p 車輪周りの、車体の慣性モーメント÷2[kg・m^2] 0.000621742
I_m モータ軸回りの、モータ回転子の慣性モーメント[kg・m^2] 0.000000017
n ギアボックスのギア比 150
k_t モータのトルク定数[N・m/A] -
k_b モータの逆起電力定数[V・sec/rad] -
R モータとモータ・ドライバの等価直列電気抵抗[Ω] -
V_{offset} 摩擦トルクの影響による実効的なモータ電圧のオフセット[V] -
g 重力加速度[m/s^2] 9.8

まとめ

モーターの電気系のパラメータについてはまだ分かっていませんので、次のこのあたりを求めたいと思います(まだ参考書を読んでます)。

まだまだ道のりは長く遠い。

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