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音と振動を「わかっている状態」にするために:復職までの勉強計画(全98単元)

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はじめに:なぜこの勉強をするのか

現在、私は音や振動に関わるソフトウェア開発の仕事に就いていますが、職場を一定期間離れている状況にあります。復職予定は2025年10月。専門性の高い分野だからこそ、復帰後すぐに力を発揮できるよう、体系的な知識を一度きちんと整理しておきたいと考えました。

大学では音響に関する研究をしていましたが、実務では機器の接続や計測の理論、信号処理、さらには評価指標や規格の知識も必要です。現場で「これを知らなかったのか」と感じることもあり、そうした抜けや曖昧さを埋めることがこの勉強の動機です。

学習の目的と方針

今回の学習の目的は、「音と振動の計測・解析に関する知識を、ソフトウェア開発者として必要なレベルでひととおり理解すること」です。

この勉強を通じて達成したいのは、以下の3つ:

  • 実務で必要な基礎・応用知識の習得と定着
  • 技術的な記事や資料を書くための裏付けとしての理論理解
  • 将来的な資格試験(公害防止管理者や技術士)への布石

カリキュラム構成(8カテゴリ・全98単元)

1. 信号処理の基礎

FFT、Z変換、窓関数、畳み込み、フィルタ設計、波動方程式など、音と振動のデータを扱うための基本理論。

2. 音の計測と評価

音圧レベル、A特性、Leq、オクターブ分析、音響パワー測定、ラウドネスやシャープネスなどの聴感指標まで。

3. 振動の計測と評価

加速度センサ、振動レベル、振動モード解析(固有モード)、ハンマリング法など。

4. 計測機器とソフトウェア

マイク・アンプ・スピーカーの接続、電源の順序、取り扱いの注意点など。測定機器や信号解析ソフトウェアの概要も含む。

5. 建築音響と音響環境

残響時間、吸音率、透過損失、ヘルムホルツ共鳴器、音響施設の種類と用途。

6. 規格と標準

JIS・ISO規格の読み方と目的、特に音響パワーや環境騒音に関する測定規格。

7. 応用トピック・事例

音響インテンシティ、FEM、音源定位、走行騒音の測定など、応用性の高いテーマ。

8. 測定設計とデータ解析

実験計画法(DOE)や統計的な思考法の基本。計測条件の最適化に向けた考え方を学ぶ。

学習スケジュールと進め方

  • 期間:2025年5月27日〜2025年9月1日
  • 構成:1日1単元、全98単元を消化
  • 流れ
    1. ChatGPTで単元の解説を受ける
    2. 確認用のミニテストで理解度をチェック
    3. 自分の言葉で要約し、Zennに投稿

日割り学習スケジュール(全98単元)

※以下は、各カテゴリの学習内容を体系的に整理した順序で構成した最新版スケジュールです。

日付 カテゴリ 単元タイトル
2025-05-27 信号処理の基礎 A/D・D/A変換器の動作原理
2025-05-28 信号処理の基礎 DFTとその性質
2025-05-29 信号処理の基礎 FFTの理論と利点
2025-05-30 信号処理の基礎 FIRフィルタと畳み込み
2025-05-31 信号処理の基礎 IIRフィルタと安定性
2025-06-01 信号処理の基礎 STFTと時間周波数解析
2025-06-02 信号処理の基礎 Z変換の定義と応用
2025-06-03 信号処理の基礎 まとめと実践的演習
2025-06-04 信号処理の基礎 アナログ信号とディジタル信号の違い
2025-06-05 信号処理の基礎 インパルス応答の意味と計測法
2025-06-06 信号処理の基礎 サンプリングとナイキスト定理
2025-06-07 信号処理の基礎 スペクトログラムの読み方
2025-06-08 信号処理の基礎 デジタルフィルタの実装例
2025-06-09 信号処理の基礎 フーリエ変換の基礎
2025-06-10 信号処理の基礎 信号処理のトラブルシューティング
2025-06-11 信号処理の基礎 波動方程式と音響の物理基礎
2025-06-12 信号処理の基礎 畳み込み演算と音響応答の合成
2025-06-13 信号処理の基礎 窓関数とスペクトルリーケージ
2025-06-14 信号処理の基礎 量子化とビット深度
2025-06-15 信号処理の基礎 離散時間信号とその表現
2025-06-16 信号処理の基礎 音響伝達関数とその応用
2025-06-17 信号処理の基礎 (追加予定の内容)
2025-06-18 音の計測と評価 1/1・1/3オクターブ分析の基本
2025-06-19 音の計測と評価 CPX法とPass-by Noise
2025-06-20 音の計測と評価 EV騒音と音響警報
2025-06-21 音の計測と評価 ISO 3741/3744の概要
2025-06-22 音の計測と評価 Leq・Lmax・ピークの違い
2025-06-23 音の計測と評価 インパルス特性とその用途
2025-06-24 音の計測と評価 スペクトルの読み方と例
2025-06-25 音の計測と評価 デシベル(dB)スケールの使い方
2025-06-26 音の計測と評価 ハウリングの原因と対策
2025-06-27 音の計測と評価 周波数重み付け(A/C/Z)
2025-06-28 音の計測と評価 聴感評価指標(ラウドネス・シャープネス・ハーシュネス・ソーン)
2025-06-29 音の計測と評価 走行騒音測定の基礎
2025-06-30 音の計測と評価 音の評価指標のまとめ
2025-07-01 音の計測と評価 音圧と音圧レベルの定義
2025-07-02 音の計測と評価 音響パワーレベルの意味と測定法
2025-07-03 音の計測と評価 騒音計の時間重みづけ(Fast/Slow)
2025-07-04 振動の計測と評価 ICP型と電荷出力型の違い
2025-07-05 振動の計測と評価 ハンマリング法とFRFの測定
2025-07-06 振動の計測と評価 ピックアップの設置方法
2025-07-07 振動の計測と評価 加速度ピックアップの原理
2025-07-08 振動の計測と評価 変位・速度・加速度の関係
2025-07-09 振動の計測と評価 振動データのスペクトル解析
2025-07-10 振動の計測と評価 振動モード解析の基礎(固有振動数・固有モード)
2025-07-11 振動の計測と評価 振動レベルのdB表現
2025-07-12 振動の計測と評価 振動計とFFTの連携
2025-07-13 振動の計測と評価 振動評価の総まとめ
2025-07-14 振動の計測と評価 構造物の共振解析の基礎
2025-07-15 振動の計測と評価 計測時のトラブルと対策
2025-07-16 計測機器とソフトウェア A/D変換器とレコーダの違い
2025-07-17 計測機器とソフトウェア アンプ・ケーブルの基本接続
2025-07-18 計測機器とソフトウェア グラウンドループとは何か
2025-07-19 計測機器とソフトウェア スピーカー・PCとの接続構成
2025-07-20 計測機器とソフトウェア ハウリング防止の実践策
2025-07-21 計測機器とソフトウェア マイクを叩いてはいけない理由
2025-07-22 計測機器とソフトウェア マイクロホンの種類と原理
2025-07-23 計測機器とソフトウェア レベル調整の実務知識
2025-07-24 計測機器とソフトウェア 信号経路図の書き方
2025-07-25 計測機器とソフトウェア 取り扱い全体のまとめ
2025-07-26 計測機器とソフトウェア 回転体ノイズ用信号処理ソフトの役割と活用(回転体ノイズ用信号処理ソフト)
2025-07-27 計測機器とソフトウェア 多チャンネルFFTアナライザによる計測と活用(多チャンネルFFTアナライザ)
2025-07-28 計測機器とソフトウェア 統合型計測・解析ソフトの構成と機能(統合型計測・解析ソフト)
2025-07-29 計測機器とソフトウェア 計測トラブル対応の実例
2025-07-30 計測機器とソフトウェア 電源の入切順と理由
2025-07-31 建築音響と音響環境 D値・C値とJISの関係
2025-08-01 建築音響と音響環境 IRと畳み込みで作る仮想音場
2025-08-02 建築音響と音響環境 半無響室の特徴と使い方
2025-08-03 建築音響と音響環境 吸音率と音響材料の効果
2025-08-04 建築音響と音響環境 残響室の構造と用途
2025-08-05 建築音響と音響環境 残響時間RT60とは
2025-08-06 建築音響と音響環境 無響室の構造と用途
2025-08-07 建築音響と音響環境 空気伝播音と固体伝播音
2025-08-08 建築音響と音響環境 遮音性能と透過損失の基礎
2025-08-09 建築音響と音響環境 音響シミュレーション概論
2025-08-10 規格と標準 ISO 1996の環境騒音評価
2025-08-11 規格と標準 ISO 3741の詳細
2025-08-12 規格と標準 ISO 3744の適用条件
2025-08-13 規格と標準 ISO 3745の構造要件
2025-08-14 規格と標準 JIS・ISOの読み方
2025-08-15 規格と標準 標準化の背景と目的
2025-08-16 規格と標準 製品仕様と規格の関係
2025-08-17 規格と標準 規格に基づく計測例
2025-08-18 規格と標準 規格運用の注意点
2025-08-19 規格と標準 音響計測に関する代表規格
2025-08-20 応用トピック・事例 ビームフォーミングの基礎
2025-08-21 応用トピック・事例 ユーザーUI設計視点
2025-08-22 応用トピック・事例 リバーブ除去と空間処理
2025-08-23 応用トピック・事例 有限要素法(FEM)の基礎と応用
2025-08-24 応用トピック・事例 研究的応用と将来展望
2025-08-25 応用トピック・事例 製品評価と騒音基準
2025-08-26 応用トピック・事例 車室内騒音の評価手法
2025-08-27 応用トピック・事例 音源分離と信号処理技術
2025-08-28 応用トピック・事例 音源定位とマイクアレイ
2025-08-29 応用トピック・事例 音響インテンシティとその測定法
2025-08-30 応用トピック・事例 音響インテンシティの計測
2025-08-31 応用トピック・事例 騒音可視化技術の現状
2025-09-01 測定設計とデータ解析 実験計画法(DOE)の考え方と適用

おわりに

この学習計画のゴールは、曖昧だった知識を「わかった」と言える状態にすること、
さらに「説明できる」「人に伝えられる」まで持っていくことです。

次回から、1単元ずつ順に掘り下げていきます。

Discussion