Zenn
🚯

生成AI時代のシステムの向き合い方②:ゴミ屋敷から宝を生み出せるか?

2025/03/29に公開

大阪出張、上海出張、そしてMicrosoft AI Tour TokyoでのSatyaへのプレゼンとバタバタしている間に、前回の投稿から、1か月以上空いてしまいました。
前回は「AIエージェントは魔法の杖ではない」をキーワードにお送りしましたが、今回は、「Garbage in, Garbage Out」をキーワードにつづります。

時たまテレビの報道でゴミ屋敷の住人が取り上げられていることがあります。最初はきれいだったはずの家も、「いつかどこかで使うから」と処理を怠ったゴミがたまり、最終的には収拾がつかなくなり、ゴミ屋敷と化します。遠くどこかのお話しだと思っているあなたも、危険かもしれません。

システムの世界には「Garbage in, Garbage Out」という言葉があります。どれだけ優れた技術・システムができたとしても、そこに入れるデータ/ファイルがゴミであれば、色・形の変わったゴミが出来上がるという考え方です。

ChatGPTやCopilotを活用する際に、「ネット情報の検索や要約はいけているが、社内情報の活用はまだまだ」と思った方もいるのではないでしょうか。そのような場合、問題はシステムではありません。ユーザーが作るデータ/ファイルに問題があります。

たとえば、画面スクショを張り付けただけのパワポ、ファイル所在地を意識せずドラッグ&ドロップで複製しまくったデータ、v1,v2とファイルリネームで修正・保存し最新版が分からないファイルなどなど。過去のオンプレミス時代のファイル管理の考え方から、TeamsやOneDriveなどのクラウド時代のファイル管理の考え方にシフトせず、放置していると、生成AIもゴミ山からデータを見つけることには苦労し、ろくな回答を出力できないのです。まさに「Garbage in, Garbage Out」からは抜け出せません。

突然話は具体になりますが、最近Microsoftより、Researcher AgentというMicrosoft 365 Copilotの新機能が発表されました。ChatGPTやGeminiなどで話題となっているDeep ResearchのCopilot版で、Webデータだけでなく、社内のデータも参照し、詳細網羅的なレポートを作成してくれる強力な機能です。
*Deep Research:推論モデルを用いて、ユーザーの質問に対して、再帰的に調査・回答・解析を実行し、複数の参照元から、網羅的なレポート回答を出力する機能

ただし、データ/ファイルを場当たり的に作成・管理している場合、このResearcher Agentもゴミ山であるMicrosoft 365テナントからデータを持ってくるため、使っても回答が微妙と言うユーザーも多いと思われます。

昨今流行りの「データドリブン」も同様です。データの体をなしていないデータで何がドリブンできるのでしょうか。「ゴミ」から頑張って一抹の「データ」を作る過程には、膨大な労力がかかります。データが「生成」→「加工」→「活用」されるサイクルにおいて、システムでの「加工」→「活用」ばかりが注目されますが、「生成」時点から資産たるデータを生成していれば活用までの距離はぐっと縮まり、幅は広がることでしょう。

前回記載した通り、システムは限りなく合理的な一方で、「いままでこうやってきたから」「わざわざファイル管理を意識するのはめんどくさいから」「必要な時に誰かが整理してくれるから」と非合理な人間の思考では、システムとの距離を縮められず、業務効率化の実現は遠いものとなります。

ファイル管理は普段の業務において、当たり前に行われるものですが、従来の非合理的なやり方を脱却して、将来の自分がシステムによる恩恵を受けられるためには、このやり方を変える、すなわち人が変わる必要があります。この変革には、普段から強い「意識」が必要です。データ/ファイルを「資産」として扱う意識を持ち、やり方を変えていく。

技術先行の話ばかりが世の中にはびこり、各種ベンダーもツールばかり提案してきますが、それが本当に各人の、会社の「真」の業務効率化につながるでしょうか。意識を変え、やり方を変え、会社としてGarbageを生み出さない風土に変えることこそが、最も遠回りに見え、可能性を広げる最短のやり方です。きらきら光る技術や提案に惑わされず、足元から整備していくことの重要性を強く説いていきます。

次回は、「TakerとGiver」をキーワードにつづります。

PS.モダンファイル管理の重要性ややり方について気になる方向けに、当方が社外コミュニティで登壇した際の資料を共有します。社外コミュニティようなのでテイストが少しふざけていることはご愛敬で。
https://speakerdeck.com/kasada/ye-wu-xiao-lu-hua-sitainarahuairuguan-li-karabian-ero-endoyuzahenomodanhuairuguan-li-nosusume

Discussion

ログインするとコメントできます