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Salesforce Public Sector Solutions(公共機関向けSalesforce)とは?
Salesforceの導入にあたりライセンス費用に頭を悩ませるが、昨年PSS(Public Sector Solutions)なるものが出たことを今更知った次第。
自治体の要求事項に合致する構成はServicecloud+Experiencecloudの組み合わせかと考えていたが、PSSだとライトに必要なものが安価で導入できると想定。
とはいえ日本国内の事例が見つからず(2025/4現在の公知情報)。トレイルヘッド※や各資料を参考に、現時点の仕様がどんなものか整理する。
なおライセンス金額はカスタマイズ権限を持つユーザに対しての金額で、一般利用するユーザへの金額はSalesforce社営業担当に確認する必要があるとのこと。金額次第ではServicecloud前提で導入するよりも安価で導入が可能になるため、予算が限られている地方自治体などへの導入見込みが出てくる。
ただ海外向けな印象はぬぐえないので、日本の機構に置き換えた際にどう使うか?の製品との翻訳スキルは必要と想定。
※ https://trailhead.salesforce.com/ja/content/learn/trails/explore-public-sector-solutions
この記事のポイントまとめ
- Salesforce 製品群の中で「公共機関専用」に設計された Public Sector Solutions(PSS) の全体像を整理
- Service Cloud / Experience Cloud と比較したときの構築観点の差分を把握
- 国内導入を想定したユースケースと KPI
1. Public Sector Solutions(PSS)とは?
Salesforce Customer 360 の上に「公共機関専用レイヤー」を重ねた業界特化クラウド。
基盤となる Public Sector Foundation(Enterprise/Unlimited/Einstein 1 for Service Edition)に、以下の “パッケージ化アプリ” を追加して構成される。
パッケージ | 主目的 | 代表オブジェクト/OmniStudio Flow |
---|---|---|
Case Management (Foundation) | 住民・案件一元管理 | Case, Benefit, Incident, FlexCards ほか |
Licensing & Permitting | 免許・許可・検査 | Permit, Inspection, Violation |
Grants Management | 補助金申請・審査 | Grant, FundingProgram |
Emergency & Program Management | 災害対応・社会支援 | Shelter, ResourceTask |
Benefit Management (GA) | 給付・福祉プログラム | BenefitPlan, CarePlan ほか |
データモデルの特徴
- Person Account を中心に、個人・世帯・事業者を柔軟にリレーション管理
- 標準オブジェクトを大幅拡張(Household__c などの業界オブジェクトを追加)
- 履歴追跡(Field History Tracking / Audit Trail)は主要オブジェクトで個別に有効化可能 ─ 既定で自動 ON ではないため、要要件整理
- 各オブジェクト/項目に Salesforce Data Classification(Compliance Category, Data Sensitivity Level など) を付与し、Shield 暗号化 ポリシーを適用しやすい構造
2. Service Cloud / Experience Cloud との比較(構築観点)
観点 | Public Sector Solutions | Service Cloud | Experience Cloud |
---|---|---|---|
データモデル | 業界専用オブジェクト + Person Account 拡張 | 標準 SObject のみ | Portal/サイト用の限定モデル |
UI/プロセス | OmniStudio + Flow 行政手続きテンプレートを同梱 | 手続き UI は 0 から設計 | LWC/OmniStudio を自作 |
標準ロール | 住民、ケースワーカー、審査官など 10 種超のプロファイル付属 | 基本なし | 外部向けプロファイルのみ |
ライセンス | Public Sector Foundation(Gov Cloud 対応) | Service Cloud | Experience(CS)Cloud |
適用範囲 | 住民サービス全般+行政オペレーション全体 | 主に問い合わせ管理 | セルフサービス/広報サイトなど |
構築工数 | データ/UI の 6〜8 割を標準実装済み | 1 から構築、追加 AppExchange が多 | サイト構築+権限周りを個別対応 |
3. ライセンス体系と概算費用
(2025 年 4 月時点|税別|$1 = ¥120 換算例)
Edition | 月額 / ユーザ (USD) | 月額 / ユーザ (JPY) | 想定ユースケース |
---|---|---|---|
Public Sector Foundation – Advanced Enterprise | $275 | 約 ¥33,000 | 小規模自治体の窓口・住民 CRM |
Public Sector Foundation – Advanced Unlimited | $500 | 約 ¥60,000 | 広域自治体/基幹連携が多い構成 |
Public Sector Einstein 1 for Service Edition | $650 | 約 ¥78,000 | GenAI / Data Cloud / Slack 同梱 |
補足
- Licensing & Permitting、Emergency & Program Management などのパッケージは org ベースのアドオン(ユーザ単価課金なし)。価格は個別見積もりが一般的。
- GovCloud の追加係数:米国 Government Cloud Plus – Defense で “+25 %” が公開されているが、日本 GovCloud での一律加算は公表されていない。国内は営業見積もりで要確認。
4. 公共機関での主なユースケース(ChatGPT o3調べ)
分類 | 具体例 | 成果 / KPI |
---|---|---|
住民対応(311 / 市民窓口) | 電話・チャット・LINE → Case 化 → Omni-Channel で担当振分 | 応対時間▲40 %(想定)/解決率 90 %超(PoC 実績) |
行政手続き(許認可) | 建築確認・営業許可・農地転用等を Web 申請 | 審査期間▲30 %(想定)/紙書類削減 100 % |
補助金・給付 | 子育て/農業等の給付金をオンライン化 | エラー率 0 %(PoC 実績)/事務コスト▲50 % |
災害対応 | 避難所・被害受付・資機材管理 | 情報集約時間▲80 %(想定) |
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