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【Vue Fes Japan 2025】技術カンファレンス人生初参戦レポ

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2025年10月25日に東京で開催された、Vue.jsの国内最大のカンファレンス「Vue Fes Japan 2025」に参加してまいりました!

こういった技術カンファレンスにはいつか行ってみたいな…と漠然と思っていたものの、大きな催しはほとんどが東京開催。大阪在住の私にとっては若干の障壁となっていました。しかし、今回はなんと学生支援制度により旅費とお昼ごはんを出していただけることになりました!本当にありがとうございます。というわけで…

日本の民放でよく見られる提供クレジットのパロディ画像。この記事はVue Fes Japanのスポンサーにより参加した筆者によりお届けしております。
ご覧のスポンサーの提供でお送りいたします
(言ってみたかっただけ)

私が携わっているOSSプロジェクト(Misskey)をはじめとして、関わっているプロジェクトではフロントエンドフレームワークにVueを採用しているものが多くあり、その最先端や実際の企業での活用例を見れるイベントということで非常に楽しみにしていました。


開催は土曜日。張り切って4時台に起床し、新幹線で会場へ向かいます。

天気はあいにくの小雨……とはいえ、がっつり降っていたわけではなかったので助かりました。

受付を済ませ、事前に設定しておくことでもらえるオリジナルのネームカードをつけて会場に入ります。

Vue Fes Japan 2025のネームカード
これは後日撮影したものです

会場に、Evanさん(Vue作者)や、kazuponさん(Vue.js 日本ユーザーグループ代表)が入り、いよいよVue Fes Japanの開演です!

オープニング&キーノート

キーノート開演前の会場の様子

カウントダウンやオープニング映像(めちゃくちゃ凝ってた)、kazuponさんのあいさつの後に、Evanさんによるキーノート(基調講演)がはじまりました。

まずはVueに関するお話がありました。内容をすべてさらうことはできませんが、箇条書きで印象に残ったことを挙げると

  • Vue の Vapor Mode、Suspense, Keep Alive, Transitionなどに対応してる!
    • 以前海外のVueカンファレンスの基調講演を見たときはまだWIPとなっていた覚えがあったので
    • そろそろ完全体でのリリースも近そうですね…たのしみだ
  • Vue 3.6で、内部的なリアクティビティ システムがAlien Signalsになる(特に何もしなくてもパフォーマンスが改善する!)ことは知っていたのですが、3.6が年内にはリリースされるとアナウンスがあり、より楽しみになった

その後、JavaScriptのツールチェーンについてのお話がありました。私たちはなぜビルドツールやバンドリングを行っているのか?その起源から、最近の動向までを軽くおさらいし、なぜRustベースのツール群(oxc系)を統一的に整備することが重要かについて説明がありました。

確かに、lintをするにしてもformatをするにしても、コードに後処理を加える(transformする)にしても、確実に処理をするには一度ASTにする必要があります。しかし、異なる作者の異なるツールを使用していると、どこかしらで別のASTにパースする処理が走ったり、仮に同じASTにパースするようになっていたとしてもツールごとの横の連携がうまくいかずに結局ツールごとにパースとstringifyを繰り返すといった非効率な処理が生まれてしまいます。

統一的なツールチェーンが、ネイティブコードベースで整備されることで、ネイティブコードによるパフォーマンスのアドバンテージに加えて、ツールチェーンの横の連携による無駄の削減もでき、高い効率化が実現できそうだと思いました!

すでにいくつかのツールは正式リリースを迎えているので、今度試してみたいと思います(個人的には小規模なライブラリのビルドにtsdownを使うことを考えています)!

プラチナスポンサーセッション

基調講演の後は、2コマ続けてプラチナスポンサー企業から登壇される講演があります。

プラチナスポンサーセッション①「VueはAIに弱い?そんなの都市伝説です」(メイツトラック)

一つ目は、「VueはAIに弱い?そんなの都市伝説です」(メイツトラック, 株式会社リンクアンドモチベーション)を聞かせていただきました。

https://speakerdeck.com/lmi/vuefes2025-link-and-motivation

私は、今までコーディングにはあまりAIエージェントを使用してきませんでした。コード補完の機能はめちゃくちゃ便利で重宝しているのですが、AIに完全にコードを書かせる「バイブコーディング」は、思ったような出力が得られず結局手で書いたほうが速いじゃん…という経験を多々してきたのです。

特に、巷ではReactなどに比べてVueがAIに弱いという意見もよく聞きますし、興味を持っていました。

おはなしされた事例では、デザインシステムやコーディング規則などのルールを策定してある状態で、暗黙的なルールを含めすべてを言語化し、レイヤーごとにAIに指示を行うことで精度が出るということでした。いわゆるAIの働きやすさが、フレームワークの違いによる影響よりはるかに大きいということですね。

個人開発や小規模な開発では、そこまでしっかりとした規則やデザインシステムを整備することは難しいかもしれません。しかし、そのような明確なルールを定めておけば、AIもある程度精度を出してくれるのかなと考えました。

プラチナスポンサーセッション②「alien-signalsと自作OSSで実現するフレームワーク非依存なロジック共通化の探求」(FitFits with hacomonoトラック)

プラチナスポンサーセッション二つ目は「alien-signalsと自作OSSで実現するフレームワーク非依存なロジック共通化の探求」(FitFits with hacomonoトラック, 株式会社ヤプリ)を聞かせていただきました。

https://speakerdeck.com/aoseyuu/exploring-framework-agnostic-logic-sharing-with-alien-signals-and-custom-oss

特に組織規模が大きくなってきたり、あるフレームワークから別のフレームワークへのリプレイスを段階的に進めていたりすると、複数のフレームワークを使いつつも共通のロジックとしたいときは割とありそう。でも、フレームワークごとの概念や処理の微妙な違いにより、完全に同じ実装にすることができない…そんな悩みを解決してくれそうなライブラリ「sigrea」を開発していらっしゃるというお話でした。

Vueにおけるコンポーサブルを書くような感覚で共通ロジックを関数に閉じ込め、それをsigreaの各フレームワーク用のアダプタで読み込むことで、フレームワークの違いを意識することが最小限になるように作られているのが特長です。

まだ実際のコードなどは確認していないので使用感等はなんとも言えませんが、見た感じVueのコンポーザブルと同じような書き味で処理の共通化ができそうで、期待しています。実際にフレームワークが複数ある場面に遭遇したときに思い出しておけるようにメモ…

学生支援特別セッション

一般の方はここでお昼休憩。学生支援制度利用者は、特別セッションに招待され、ご飯を頂きながら4本のお話を聞きました。まずは学生支援制度スポンサー企業の講演です。

学生支援特別セッションにていただいたご飯(特製つくね弁当)
わたしは特製つくね弁当にしました

学生支援特別セッション①「LINE公式アカウントの技術スタックと開発の裏側」(サイバーエージェントトラック)

ひとつ目は「LINE公式アカウントの技術スタックと開発の裏側」(サイバーエージェントトラック, LINEヤフー株式会社)。LINEとヤフーの統合を進める中で生まれた新たなデザインシステム「toly」を中心としたアクセシブルでフレームワークアグノスティックなコンポーネントづくりをご紹介いただきました。

tolyではWeb Componentsが使用されており(!)、それをベースに各フレームワークでの挙動の際を吸収するためのラッパーの作成にCustom Elements Manifestが使用されているようです。Web Componentsについては今まであまり触れる機会が無く知識も無かったのですが、コンポーネント管理をWeb Componentsベースとしたことや、それのラッパーをCustom Elements Manifestで自動生成させていることなど、Web Componentsベースでの開発でのよい方法についてのヒントを得られる貴重なお話でした。

ちなみになぜ Web Components を採用したのでしょうか…?標準APIをベースにコアのロジックを統一できるからとかですかね…?

学生支援特別セッション②「プレイドのユニークな技術とインターンのリアル」(サイバーエージェントトラック)

学生支援スポンサー企業ふたつ目は「プレイドのユニークな技術とインターンのリアル」(サイバーエージェントトラック, 株式会社プレイド)。プレイドが採用している技術のうち、「KARTE Blocks」や内製システムなどを中心にご紹介されました。

https://speakerdeck.com/plaidtech/plaid-unique-tech-and-internship-life

Vueとは関係ないですが、現在内製検索エンジンを利用できる、逸般的なMisskeyサーバープロジェクトに参加していることもあり、膨大なアナリティクスデータの保管に耐えるためにDBを内製したり、データをリアルタイムで帰す仕組みがあることが興味深かったです(ちなみにその検索エンジンは私ではなく別の マッド・ データサイエンティストの方が開発しています)。

KARTE Blocksについては実演もあり、実際にコンテンツが切り替わる様子を確認できました(エディタで保存してから少し時間がかかったということは、構造化されたデータから on-the-fly でサイトを構築しているのではなく、別個に用意されているサイトコードのビルドが走って出力・デプロイされているということなんでしょうかね…?きになります)

学生支援特別セッション③「Vue.jsを8年間使ってきた会社が今考えていること」(サイバーエージェントトラック)

学生支援スポンサー企業、最後は「Vue.jsを8年間使ってきた会社が今考えていること」(サイバーエージェントトラック, STUDIO株式会社)。Vueをv1系の時代から使い続けてきた古参だからこその知見をシェアしていただきました。

コードがスケールするにつれて、Storeの構造や使い方が複雑になり限界を迎えてしまったと言います。そこで、

  • ページが同じだから同じStoreを使うというのではなく、関心ごとにStoreを持つこと
  • 値の変換はStore内部で行わず、別の関数として切り出すこと(利便性が向上し変更によるSide-Effectが軽減できる)
  • Storeの値の変化をもとに何かをする場合は、Storeを使うコンポーネント側ではなくStore側でその処理をハンドリングすること

をベストプラクティスとしているそう。大規模なStoreを使うプログラムには今のところ出会っていないのですが(Misskeyは値の保存や読み込みなどを組み込み済みの専用設計のStore実装となっている)、将来絶対お世話になることになるのでよく肝に銘じておこうと思います!

学生支援特別パネルディスカッション「kazuponが見つけた才能たち ─ Vue.jsそしてOSSエコシステムを変える開発者発掘術」(サイバーエージェントトラック)

学生支援特別セッションの最後は、kazuponさん・Anthony Fu(アンソニ)さん・ubugeeeiさん(ファシリテーター:Naoki Habaさん)を迎えて行われたパネルディスカッション。それぞれどのような経緯でOSSコミュニティ(Vueコミュニティ)にかかわるようになったかや、その経験をもとに学生にどのようにOSSや開発者コミュニティにかかわっていくとよいかをお聞きできる貴重な機会となりました。

私も一端のOSSメンテナーをやっているということで、参考までにトピックに対する私のエピソードも併記しておきます。

OSSコミュニティとの出会い

kazuponさんは、Vueがv0だった時代に社内で採用した超古参。OSSへのコントリビュートは、まずはコードではなくドキュメンテーションの日本語化から始めていったそうです(Vueは日本語ドキュメントが充実していますよね!とても助かります)。Vue利用者のコミュニティも、小規模な勉強会からどんどんスケールしていき、今のVue Fesが形作られていったそうです。

アンソニさんは、どちらかというと利己的なモチベーション(将来のキャリアのために大学の外で自分のスキルを身に着けようというモチベーション)からオープンソースに取り組んでいったところ、kazuponさんに見つけられて、そこからより精力的に取り組むようになっていったようです。ちょうど数日前にたまたま似たようなことをXで仰っているのを見かけたのを思い出しました。

https://x.com/antfujp/status/1980904013563580623

ubugeeeiさんは、仕事でVueと出会い、その仕組みの理解のために小規模なVueの実装(Chibivue)を社内向けに作ったそうです(すごい)。しかし、それを社内だけで収めるのはもったいないと、オープンな形で見れるWebブックで公開したところ、kazuponさんに発見されたそうです。

https://book.chibivue.land/

その後、Vue FesのアフターパーティーでVapor Modeの作者でKevin氏に会い、Chibivueの話をしたところ、Vueの開発チームに招待されたそうです。


OSSへの関わり方は様々ですし、こういった「他の人に見つけてもらう」ことで活動を広げていけるチャンスとなることに納得しました。そういった意味でも、Vue Fesのような場は大きな意味を持つのかなと考えました。

わたしのVue・OSSコミュニティとの出会い

私は文化祭でインタラクティブなクイズ出題システムを学校支給のChromebookで動かすためにWeb技術で構築する際にVueと出会いました。その際はプレーンなHTMLファイルにVueテンプレートを直接記述し、CDNからVueを読み込む方式にて使っており、まだNode.jsやバンドラを使ったモダンな開発についてはよく知りませんでした(とはいえこんなふうにCDNから読み込んで使えるのがVueの強みですよね)。しかし、HTMLにv-ifv-forなどの属性を付ければあとは変数を書き換えればHTMLに反映されるという直感さにハマりました。

その後いくつかの学校内のプロジェクトや学校外のプロジェクトを経て、徐々にモダンな開発環境やNuxtにも慣れてきたところで、Twitterがイーロン・マスク氏に買収され、プラットフォームの安定性が低下したり仕様が変更されたりといった一連の騒動が発生します。

その過程で、私はMisskeyにたどり着きました。Misskeyの高いリアルタイム性やクライアントの柔軟性に感動した一方で、かなりフロントエンドのバグが目立つ状態でした(当時は v13.10.0 くらいだったと思います)。色々調べるうちに、フロントエンドにはVueが使用されていることに気づき、さらに開発は主に日本語で行われていることを知り、手探りでMisskeyの開発環境を立ててバグ修正を送信しました。

▼ 最初に送ったバグ修正

https://github.com/misskey-dev/misskey/pull/10326

その後もちょくちょく不具合を見つけては修正のPRを送信したりしていると、ある日突然MisskeyのOrganizationへの招待が届き、Misskey Projectのメンテナとして動き出すことになりました。

その後は、Misskeyで見つけたVueのバグ(激レア)Vue本体に報告して修正に協力したり、Misskey公式サイトの構築中に発見したNuxtのバグを報告したりと、Misskey ProjectやMisskey関連ツールの開発を中心にOSS活動をしています。

学生・社会人それぞれのOSS活動の始め方

kazuponさんは、「いきなりライブラリを作ったりするのはハードルが高いが、英語で書かれたドキュメントを日本語に翻訳するなど、本当に小さなことからでも始められるのでそういったことから始めると良い。そのうえで、OSS活動は義務でするものではなく、最も大切なのは自分が楽しみながらできることで、義務感でやると辛くなって継続しにくい」と話しました。

アンソニさんは、まずは自分のために何かを作ってみる(例えば、自分のWebサイトを作ったり、自分で使うためのツールを作ったり)のが良いと話しました。そのうえで、使っているツールにバグを見つけたら、それがコントリビューションチャンス!そこがOSSの活動の入口となると話しました。

ubugeeeiさんは、kazuponさんと同様にプログラミングすることだけがOSSコミュニティに関わる方法ではないことを強調しました。ubugeeeiさん自身、人に会ったのがきっかけでOSSコミュニティに関わるようになったことを踏まえて、すでに活動している人に「自分も参加したい」と話しかけ、教えてもらうという始め方もあると話しました。(そして、そういったことが言える場・そういった人達に会える場が、Vue FesのようなカンファレンスやMeetupであるというわけですね)


私自身、Misskeyのバグ修正、つまり自分の使っているツールのバグ修正という、アンソニさんのお話に近い形でOSS活動をスタートしました。kazuponさんのおっしゃる通り、自分が「楽しい」と思える(あるいは「直したい」と強く思う)ことが継続のモチベーションになっています。

一方で、ubugeeeiさんのお話にあった「人に会って、教えてもらう」というアプローチは、私には少し欠けていたアプローチかもしれません。これまではコードの修正などを中心としてOSSに関わっていましたが、Vue Fesのような場で積極的に交流し、コミュニティ自体に関わっていくことも、OSS活動のまた別の楽しみ方で、重要な側面なのだと気づかされました。

コミュニティ活動(Vue Fes Japan)の裏側

ここでは3人のVue Fesとのかかわりについてのお話がありました。

kazuponさんは、2018年に最初のVue Fesを開催。当時は運営ノウハウが無かったそうですが、沖さんなどのスタッフの尽力によって開催できたとのこと。運営は大変だけど多くのボランティアスタッフに支えられているそうです。

今年東京に引っ越したアンソニさんは、スタッフとしての参加は今回が初めてだそうです。過去にVue Fesにスピーカーに参加した際にスタッフの働きぶりに感銘を受け、恩返しの気持ちでスタッフに参加したそう。ちなみに、昨年度アンソニさんとVue.js日本ユーザーグループが開発・ローカライズしたNuxt チュートリアルが、今回のハンズオンでも使用されているみたいです。

ubugeeeiさんは、今年Vue FesのWebサイトリードを担当。スタッフは基本的にボランティアで誰でも参加できるので、興味があれば運営に参加してくださいとおっしゃっていました。


私は大阪在住なのでVue Fesの運営に直接参加することはなかなかむずかしいかな…と思ったのですが、もしVue Fes Japanが大阪や関西で開催されたりしたら関わってみたいと思いました(東京以外での開催も楽しそう)。

コミュニティ活動 最初の一歩の踏み出し方

最後に、これからOSSやコミュニティ活動を始めたい人へ向けたメッセージを一人ずついただきました。

  • kazuponさん:
    • 楽しみながらやること が最も大事
    • カンファレンスに参加したりブログを書いたりと言った小さなことでもよい。自分が興味を持ったことを楽しみながら続ければ自然と道は開ける
  • アンソニさん:
    • 新しいOSSプロジェクトを探すとよい
    • 新しいプロジェクトでは、IssueやPRへの反応が早く、自分が参加している実感がわきやすい(対してVueなどの巨大なプロジェクトでは反応が遅かったり埋もれてしまったりする可能性がある)
  • ubugeeeiさん:
    • このセッションのタイトルは「kazuponが見つけた才能たち」。つまり、学生は「見つけてもらう」側でもある
    • 見つけてもらうためには、自分が何をやっているかを発信すること
    • コミュニティのメンバーはSNSを見ており、それがきっかけでDMが来ることもある

自分がしていることを積極的に発信するのは良いことだとつくづく感じています。こまめに発信することで、反応をもらえたり、時にはフィードバックをもらえたり…。素敵な化学反応のきっかけになり得ます。これからもたくさんアウトプットしていけるとよいなと思います(実は今学校のシステム開発チームのほうでも記事を書いています…!そのうち公開できるとよいなと思っています)

一般セッション

お昼からは全員参加の通常セッションに戻り、4つの部屋(トラック)で同時進行で講演が始まりました。

Daniel Roe氏「フレームワークを超えて:次の10年のウェブを築く」(FitFits with hacomonoトラック)

Nuxt コアチームリードのDanielさんによる講演。Nuxtに関する話というよりは、変化の速いWebフロントエンド開発をするにあたっての心構えというか、ベストプラクティスのようなものを伝授いただくといった感じでした。

https://roe.dev/talks

大まかには

  1. 自分自身は置き換えられないものであるということ
  2. フレームワークを活用すること
  3. ほかの人と共につくること

が大切であることがわかりました。

フレームワークを活用すると、その下層にあるライブラリやプラットフォームごとの違いを吸収してくれたり、ライブラリ事態をより使いやすくしてくれたりする機能が使えるようになります。例えばNuxtではコンポーネントのオートインポートやファイルベースルーティングなどが提供されるようになっていたり、プラットフォームごとにデプロイのプリセットが用意されていてスムーズにアプリを使用できるようになっています。また、フレームワークを使用することによって、その下層のライブラリの破壊的変更をある程度吸収してくれるかもしれません。そして、このようなフレームワークはベストプラクティスを知り尽くしたオープンソースコミュニティの人々によって日々改善が続けられています。こう考えると、やや高レベルなフレームワークに頼るのも悪くない選択肢だなと思いました。

個人的なプロジェクトでは、SSRが必要なアプリや静的サイトではNuxtを使用し、SPAしか行わないアプリではVite + Vueのシンプルな構成を基本としていました。もちろんNuxtでもSPAを出力することは可能ですが、何らかのオーバーヘッド(SSRやSSGハイドレーション用のコードとか)が含まれるのではないかと思い、よりシンプルなアプリケーションとしていたのです。しかし、ふたを開けてみればNuxt自体のパフォーマンスも非常に高いですし、アプリが重くなる原因もユーザーサイドの実装によるものであることがほとんどです。フレームワークが提供するDX(Developer Experience)のことも考えると、SPAのプロジェクトでも高レベルなフレームワークをして採用しても良いのかなと思えてきました。


Danielさんの講演ではリアルタイムのリアクション機能やアンケート機能などのユニークなインタラクティビティが取り入れられていたのが印象的でした。また、本題の後にNuxt 4.2の軽い紹介が行われ、なんとその場でv4.2.0がリリースされてしまうというサプライズもあり、全体的にとても楽しい講演でした。

Guillaume Chau氏「rstoreとローカルファーストなストア構築の課題」(FitFits with hacomonoトラック)

企業ブースを見に行くために一コマセッションを飛ばして、次はGuillaumeさんのrstoreに関する講演を聞きました。rstoreについては以前にどこかで名前を見たことがあったのですが、それじまい。気になっていたので、この機会に聞いてみることにしました。

https://slides.akryum.dev/2025-10-rstore-vue-fes/

rstoreにはリアルタイムでのデータ同期機能やオフラインでのデータ変更反映処理などが内包されており、フロントエンドではこれらを気にすることなくデータの取得や更新を行うことができる、という優れもの。実際にポケモンのリストを表示するデモアプリのコードをその場で変更しながら、実際の動きをデモンストレーションされていました。

多くの状態管理ではrstoreベースで事足りるかもしれませんね…。良さそう™という感覚はあるので今度遊んでみようと思います。

そしてGuillaumeさんもその場でオフライン作業対応版rstoreとなるv0.8.0をリリースされていました(正確にはネット回線の問題により講演直後にリリース)。皆さんこういうのお好きなんですかね😆個人的にはこういうのわりと好きです。

平沼 真悟氏「Vue 3.6時代のリアクティビティ最前線 〜Vapor/alien-signalsの実践とパフォーマンス最適化〜」(フューチャーアーキテクトトラック)

Vue 3.6ではVapor Modeの試験的導入や、リアクティビティシステムのalien-signalsへの置き換えなど、大きなパフォーマンス改善が予定されています。具体的に何がどう良くなるのかについてもっと勉強しておきたいと思い、こちらの講演を聞くことにしました。

https://speakerdeck.com/hiranuma/alien-signals-noshi-jian-topahuomansuzui-shi-hua

Vueのリアクティビティシステム・DOM操作のしくみがv0からどのように変化してきたかをおさらいし、そのうえでVaporやalien-signalsがなぜ優れているのかを解説されていました。

もともとはDOMを直接管理・操作する方法で要素の制御をしていたのを、高速化のためにVirtual DOMと呼ばれる新たなレイヤを設け、それ経由でDOMを制御するようになって今に至ります。しかし、直接DOMを制御/操作するよりは早い(+改修を加えより早くパフォーマントに進化していった)とはいえ、VDOMというレイヤが追加されているのでオーバーヘッドではあります。そこで、VDOMを廃し、より効率的な方法でDOMの直接操作を実現しようという計画がVapor Modeになります。Vaporモードはパフォーマンスの強化となるだけでなく、出力されるコードの軽量化にもつながるので、今後のリリースに期待したい機能です。ちなみに、VDOMを使用していないフレームワークではSolidなどが有名ですね。

内部構造は大きく変わりますが、互換性が意識されているのもうれしいポイント。VDOM特有の処理などを有していなければ、既存のコードは基本的にはそのままVapor Modeでも動作するそうです。また、VaporとVDOMの両方のアプローチを併存させることも可能で、段階的な移行にも対応しています。最高。

パネルディスカッション「フロントエンドの未来を語る ─ React/Vue.js/Svelte が見据える次の10年」(FitFits with hacomonoトラック)

そして、前々からかなり話題となっていた React × Vue × Svelte の関係者による豪華なパネルディスカッションがやってきました。

パネルディスカッション開始前の会場の様子
強すぎる登壇メンバー

React サイドからは、元 React コアメンバー/元 Bluesky コアメンバーの Dan Abramov 氏。
Svelte サイドからは、Svelte 作者の dominikg 氏(じつは平沼さんの講演で私の前に立って聞いておられました)。
そして Vue サイドからは、Vue 作者の Evan You 氏と、ファシリテーターとして Kia King Ishii 氏が登壇しました。

内容は、バイブコーディングを代表としてAIが台頭しはじめている開発の現場で、今後のWebフロントエンドはどうなっていくか?というところに収束するようなものでした。

フレームワーク自体を作っておられる方々であるというところで、AIがまだできないような高度なコードを扱うことからあまりAIを使用されておられないのではないかな…?と思っていたのですが、予想は一部裏切られることになります。

dominikgさんやEvanさんはバイブコーディングをほぼ・全く使用しないと言っておられたのに対して、Danさんは個人プロジェクトとしてバイブコーディングを活用しつつ新たなAT-Protocolベースのソーシャルアプリを開発しているとのこと。

また、フレームワークなどの設計をAIフレンドリーにする予定はあるか?という問いに対して、人間にとってわかりやすいようにドキュメントや設計を整備することで、それは自然とAIにもわかりやすいものとなるだろうという(おそらく)dominikgさんの言葉が印象に残りました。
もちろん、仕組み自体をAIフレンドリーにするという施策も可能(実際Hono CLIにはコマンド→標準出力でDocsをマークダウンで出力する機能があったりする)ですが、それも、それが可能になる基盤(docsを返すコマンドなら、良質なドキュメンテーション)が整ってこそ。つまり、ドキュメンテーションが揃っていないならそちらを先にするべきだ、ということです。

先のプラチナスポンサーセッションでも「AIの働きやすさ」としてコーディング規則やデザインシステムなどの枠組みの整備が挙げられていたこともあって、新入りの人間が楽にオンボーディングできるような体制が整っていれば、それは自然にAIフレンドリーな体制にもつながるという認識が強くなりました。

Anthony Fu氏「Introducing Vite DevTools」(フューチャーアーキテクトトラック)

最後に参加したセッションは、アンソニさんのVite Devtoolsに関するもの。ちなみにアンソニさんは今回すべての講演で日本語で登壇されていました(すごい)。

https://talks.antfu.me/2025/vuefes

DevTools(=Developer Tools)というのは、開発のためのツールのことを指すこともあれば、ブラウザに搭載されているような「開発のためのツールをよりよく使うためのツール」を指すこともあります。今回は後者の話。

NuxtやVueを皮切りに、Astroなどのほかのフレームワークにも波及し始めている独自DevTools。アンソニさんはそんなDevToolsをViteにも持ち込むとともに、DevToolsのための共通規格を作成してその他のDevToolsを統一的に閲覧できるようにするという壮大な計画を語りました。

Vite Devtoolsでは、今まではViteプラグイン(や、互換性のあるRollupプラグイン)などを利用してバラバラに実現されていたチャンクの可視化やバンドル最適化を一つのツール群として、美しくまとめ上げています。さらにそれだけではなく、Viteの上で動作する各種JSフレームワーク固有のDevToolsも、DevTools Kitという共通のプラグインシステムを用いて一元的に利用できるようにし、さらに利便性が高められる構造となっているようです。DX(Developer Experience)革命とでも言いましょうか…ものすごい話です。

Vite Devtoolsは現在開発中とのこと。今後の進展が楽しみです!

その他

他にも、企業ブースやフリードリンク・縁日コーナーなどがありました。

企業ブース

企業ブースでは、すべてのブースを廻ると景品がもらえる催しがあったのですが、朝4時に起きて疲れていたことや、講演をメインに聞きに行っていたこともあり途中で断念…。でも株式会社コドモン様のブースにてくじ引きをしたところ でかいバスタオル(2等) が当たったり、ストックマーク株式会社様のブースで日頃Misskey開発で鍛えられたVueぢからを試した(Vueのディレクティブを90秒でどれだけ思い出せるかのテストをした)ところ 「Vue 完全に理解した」のTシャツ をいただけたりしたのでホクホクでした。ありがとうございます(?)

フリードリンク・スナックコーナー

コーヒーが苦くて飲めないお年頃なのでスキップ…。お菓子もあったのでそれはもらっておけばよかったかも(水等も配布されていたと風の噂で聞きましたが、行った時にはもうなかったので実際のところはわからない)

縁日コーナー

荷物が大きくて身動きが取れなかったこともあり断念…。型抜き・輪投げ・落書きせんべいなどが楽しめたようです。

アフターパーティー


アフターパーティーのようす

お酒は飲めないのですが年齢的にはいけるとのことで参加させていただきました。コミュ障がくすぶって、誰彼構わず会いに行く…ということはできなかったのですが、すごい方と話をすることに成功しましたよ!

  • Kainoa Kanter氏:かつてMisskeyのフォーク「Firefish」を開発していた人物(aka. ThatOneCalculator)
    • 大変フレンドリーに話していただけました。アフターパーティーにおいて私がボッチになるのを回避してくれた恩人です。
    • 彼は今あたらしいソーシャルプラットフォームの開発に着手しているとのこと。楽しみですね
  • Daniel Roe氏:Nuxt チームリード
    • 以前からちょくちょくBluesky等でいいねを頂いたりしていました
    • なんとMisskeyのことをご存知だったみたいです(!!)
    • Vue Fesの前日にKainoaさんとお食事に行ったそうで、そこで私の話が出たらしいです(!?!?)
  • Dan Abramov氏:元 React コアメンバー/元 Bluesky コアメンバー
    • Kainoaさんが話していてふたりの間で話が弾んでいたのですが、私がそこにうまく入り込むことに失敗し話せず(何やってんだ私…)

海外勢の方とお話できたのは良かったのですが、英語力がやや足りない気がしました…。ほとんどの会話は聞き取れたのですがちょっと油断すると何を言っているのかの情報を失うことが割とありました。あと単純にしゃべるのも下手だったので、もうちょっと英語喋れるようになりたいかも。


その他にも同年代の開発者(=学生)の方ともお話できました!とても楽しかったです!また話しましょう🙌

沢山の方々と貴重なお話ができたのですが、日本語圏のVueコミュニティの人(kazuponさん・ubugeeeiさんなど)とはお話できなかったのが非常に悔しかったです。ので、 数日後にはchibivueのDiscordサーバーに入っていました(前々から「あああアンソニ」などの謎なリアクションがあって気になっていたんですよね)。なんだかとてもまったりした雰囲気だったので、手始めに昨日お昼に食べたハンバーガーの写真を投下しました。本当にこれで合ってるんでしょうか。また適当に絡んであげてください。

「バーガー王」という文字とともにバーガーキングのワッパーチーズJr.が添付されたDiscordのメッセージ。
バーガー王

まとめ

というわけで、初めての技術カンファレンスとして参加したVue Fes Japan 2025でしたが、たいへん濃密な時間を過ごせました!Vueやフロントエンドの最先端の分野に触れられたのはもちろんですが、普段は絶対会えないような人とお会いできたり、実際に企業でどのようなフロントエンド開発が行われているのか、その一端を知る切っ掛けにもなったりして大満足でした。またお会いしましょう!

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