2024年資金移動業者登録状況
資金移動業が三種に別れてから3年半ほど経ちました。
今年10月には、海外送金大手のWiseが今年3月に資金移動業一種を取得し全銀システムへの参加が決まったことがニュースになりました。
まだまだ熱い資金移動業。
公開されている情報から資金移動業者の登録状況を調べ、トレンドについてまとめようと思います。
(今後定点観測的に集計し、資金移動業者のトレンドが測るようにしたい)
資金移動業とは
念の為、そもそも資金移動業とは
という話から始めます。
資金移動業とは
銀行以外の者が為替取引を業として営むこと(一般社団法人日本資金決済業協会より参照 https://www.s-kessai.jp/businesses/funds_transfer_overview.html)
をいいます。
令和3年5月1日施行の改正資金決済法より、資金移動業は三種に分かれました。
元々資金移動業者として登録済みのものに関しては自動的に第二種に分類されました。
三種はシステム観点でいうと
- 資金移動可能金額
- 滞留規制
- 履行保証の供託金
という点で大きく異なります。
(※ 資金移動第一種ではアンチマネーロンダリング(AML)観点で追加で内閣総理大臣の認可が必要だったりしますが、今回はシステム観点ということで説明は省きます。)
三種は大きく分けると
第一種
資金移動の上限額がないが厳しい滞留規制。入金時には送金完了日を確定しておく必要がある。
→ 為替取引を重視。高額な送金サービス等を想定
第二種
一度の送金で100万円まで。
→ウォレットアプリなど買い物のために一時的にお金を入れておくもの
第三種
一度の送金で5万円まで。その代わり資金の保全義務に関する規制は緩和。
→二種に対してより小規模のビジネスを想定
(法律周りで適当なことを書いて嘘だとまずいので)より詳細な情報に関してはこちらを参照ください。
https://www.s-kessai.jp/businesses/faq_01_18_b_answer1.html
https://www.s-kessai.jp/businesses/practice_deposit.html
取得状況調査
本題です。
2024年12月現在の資金移動業のライセンス発行状況を調べます。
資料は以下を参照。
第一種
資金移動業第一種を取得している業者は以下の4社になります。
- 株式会社ウニードス: 海外送金サービス。プレスリリース
- 株式会社シースクェア: 韓国への送金サービス
- ワイズ・ペイメンツ・ジャパン株式会社: 海外送金サービス。プレスリリース
- NIUM Japan株式会社: 海外から日本への送金。プレスリリース
調べたところ、現在一種を取得しているのは海外送金をベースにしたサービスを提供している業者のみという状況です。
第一種の特徴である
- 強い滞留規制
- 高い資金移動可能額
より文字通り資金の移動を重視したライセンスのため、Walletアプリ等のようなお金をチャージして決済や個人間送金を行うのではなく、お金を動かすことを重視した送金系のサービスに利用されています。
しかし、海外送金サービスのみで、国内間での送金を行っている業者はないこともわかりました。
個人間の送金であれば二種での100万円で十分にユースケースが満たせているのか、単に認可が出てないだけなのかは不明ですが、
国内の資金移動のニーズも伸びているので、今後登録業社が増えていくのか気になるところです。
第二種
第二種を取得している企業は現在全体で 80 業者です。
資金移動業として登録済みの業者は全て第二種も取得済みで、第一種を取得している企業も第二種も両方登録されています。
ここ数年は、毎年3~5業者登録が増えていましたが2024年の新規登録企業はありませんでした。
第三種
現在資金移動業第三種を取得している業者はまだ存在していません。
こちらに関しては、そもそもの資金移動業自体のライセンス発行に対する壁が高いが資金移動業二種に対して供託金が低く抑えられるというメリットしかないためあえて取得する業者が少ないことが考えられます。
今後資金移動業第三種のメリットを上手く利用した新たなサービスが登場することが楽しみです。
滞留規制について
資金移動業に関してホットな話題として滞留規制の緩和についての議論が進んでいます。
金融庁の金融審議会にて、資金移動第一種の滞留規制の緩和について話されています。
現状の資金移動第一種の滞留規制では、入金タイミングで資金移動を行う日時を確定しないといけないというルールですが、海外送金等のユースケースでは為替レートをみて資金移動タイミングをコントロールしたいというニーズもあり、現状の規制だとそのユースケースは実現不可能です。
案として、翌月払いの商慣習等を考慮して、1か月程度の滞留を認める方向での規制緩和が議論されています。
とはいえ現状としては滞留規制の緩和についてのリスク評価を行っているという状況であり、確定している状況ではありません。
まとめ
今年は全体としては資金移動業者の登録自体は増えていませんでしたが、第一種を取得している企業は増えてきています。
第一種での海外送金などで求めらている新たなユースケースに応じる形で規制緩和の議論も進んでいます。
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