この文書は Lissajous Curve - Math Images のBasic Description, A More Mathematical Explanation節の和訳である.
基本的な説明
物理学において, 調和振動または単振動とは, 復元力が変位に比例する周期的な運動の一種である. 調和振動について知らない人は読み進める前にこのページを読むとよい. この概念は後ほどのリサジュー曲線の議論において非常に重要となる.
リサジュー曲線, またはリサジュー図形とは, 垂直線に沿った2つの調和振動を重ね合わせたときにできる美しい図形のことである. 次のアニメーションは, リサジュー曲線を生成する方法を示す.
図1. リサジュー曲線の生成方法
上のアニメーションで, 点 X, Y は x 方向と y 方向の単純な調和振動子である. 両者の振幅はともに10であるが, 角周波数は異なる. アニメーションから分かる通り, 点 P が始点から終点まで動く間に, x-振動子は3往復, y-振動子は2往復する. 実際にこれらの振動子はそれぞれ x=\sin{3t}, y=\sin{2t} の運動方程式に従う.
ここで, この2つの振動の重ね合わせを求めてみる. この重ね合わせを得るには, X を通り x 軸に垂直な線と Y を通り y 軸に垂直な線を引き, その交点 P を求めればよい. P の x 座標は X の x 座標と, y 座標は Y の y 座標と等しいため, P の運動は X と Y の運動を組み合わせたものになる. 図1に示すように P の軌跡は複雑で美しい曲線になり, これを"リサジュー曲線"と呼ぶ. 厳密には, 他の角周波数や位相を持つリサジュー曲線も同じ手法で簡単に生成できるため, 多くのリサジュー曲線のうちの1つといえる.
数学的には, 点 P の運動は2成分振動からなり, その運動方程式はすでに知られているため, P の運動のパラメトリック方程式は簡単に得られる.
\begin{align*}
x&=A\sin{(at+\phi)}\\
y&=B\sin{bt}
\end{align*}
ここで, A, B は調和振動の振幅, a, b はその角周波数, \phi はそれらの位相差である. これらの用語に馴染みがなければこのページを参考にされたし.
図1のリサジュー曲線は, A=B=10, a=3, b=2, \phi=0 となっているが, 前述の通り, これらのパラメータを変更することでより多くのリサジュー曲線を得ることができる. 次の画像にこれらの画像の一部を示す.
図2-a. a=1, b=2
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図2-b. a=3, b=4
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図2-c. a=5, b=4
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より数学的な説明
リサジュー曲線の構造は何によって決定されるのだろうか.
この問いに2つの方法で答えることにする. 最初の方法は, 簡単かつ直接的であるが, いくつかの特殊な場合に限られる. もう一つは, ほとんど全てのリサジュー曲線に適用されるが, 結果は繊細かつ複雑なものになる.
方法1: t の直接消去
リサジュー曲線は次のパラメトリック方程式で定義される.
\begin{align*}
x &=\sin{(at+\phi)} \\
y &=\sin{bt}
\end{align*}
原理的には三角関数の公式を用いて, これらの方程式から t を消去して x と y の関係を求めることができる.
(注: 以下の全ての例では, A=B=1 と仮定する. これらは変化しても曲線が水平もしくは垂直方向に拡大または縮小するだけであり, リサジュー曲線の構造には影響しない.)
例1: 線分
A=B=1 に加えて, a=b=1, \phi=0 とすると, 方程式は以下のようになる.
\begin{align*}
x &=\sin{t} \\
y &=\sin{t}
\end{align*}
すなわち
さらに, -1\leq\sin{\theta}\leq1 より
これらから, 図3-aが得られる.
図3-a. リサジュー曲線1: 線分
例2: 円
(この節から, 方程式を解くのに三角関数の公式を使用する. これらについて知らなければこのページを参考にするとよい.)
この例では, a=b=1, \phi=\frac{\pi}{2}とする.
\begin{align*}
x &=\sin{(t+\frac{\pi}{2})} \\
y &=\sin{t}
\end{align*}
三角関数の公式 \sin{(t+\frac{\pi}{2})}=\cos{t} より
\begin{align*}
x &=\cos{t} \\
y &=\sin{t}
\end{align*}
\sin^2{\theta}+\cos^2{\theta}=1 であるから
となり, 図3-bに示すような円となる.
図3-b. リサジュー曲線2: 円
例3: 放物線
a=1, b=2, \phi=\frac{\pi}{4}とすると, 次の方程式が得られる.
\begin{align}
x &=\sin{(t+\frac{\pi}{4})} \\
y &=\sin{2t}
\end{align}
式(1)より
2x^2-1=2\sin^2{(t+\frac{\pi}{4})}-1
三角関数の公式 \cos{2\theta} = 1-2\sin^2{\theta} より
2x^2-1=-\cos{(2t+\frac{\pi}{2})}
\cos{(\theta+\frac{\pi}{2})}=\sin{\theta} であるから
式(2)より
-1\leq x\leq1 であるから, 図3-cに示すような放物線となる.
図3-c. リサジュー曲線2: 放物線
結論: 長所と短所
直接消去法には, 明快かつ正確で理解しやすいという利点があるが, 周波数比が大きくなると計算が複雑になり, これらの利点は得られなくなる.
例として次の方程式が挙げられる.
\begin{align*}
x&=\sin{9t}\\
y&=\sin{8t}
\end{align*}
原理的には, x と y を \sin{t} と \cos{t} の累乗に展開すればよい.
\begin{align*}
x&=\sin{9t}=\sin^9{t}-\frac{9\cdot8}{2!}\sin^7{t}\cos^2{t}+\frac{9\cdot8\cdot7\cdot6}{4!}\sin^5{t}\cos^4{t}-\frac{9\cdot8\cdot7\cdot6\cdot5\cdot4}{6!}\sin^3{t}\cos^6{t}+\frac{9!}{8!}\sin{t}\cos^8{t}\\
y&=\sin{8t}=\sin^8{t}-\frac{8\cdot7}{2!}\sin^6{t}\cos^2{t}+\frac{8\cdot7\cdot6\cdot5}{4!}\sin^4{t}\cos^4{t}-\frac{8\cdot7\cdot6\cdot5\cdot4\cdot3}{6!}\sin^2{t}\cos^6{t}+\frac{8!}{8!}\cos^8{t}
\end{align*}
これらの方程式は, 16世紀のフランスの数学者ヴィエトの一般式により求められる. 詳しくはこのページを参照すること.
これらの式において, \sin{t} と \cos{t} を未知数と考えると, 未知数が2つの多項式が揃い, 原理的には \sin^2{t}+\cos^2{t}=1 より x と y の関係が導かれる. しかし実際には計算が煩雑なため, 方程式を解こうとする人は少ない. さらに, 群論によれば5以上の累乗の多項式は厳密な根で解けるわけではない. よって, 努力しても必ず解に辿り着けるとは限らない. 仮に解けたとしても, x と y の関係が複雑すぎるため, 曲線の形状について有用なことは何も分からないであろう. したがって, 直接消去法とは異なるアプローチが必要である.
方法2: 実験と観察
前述のように, 大きな角周波数を扱うとき, リサジュー曲線を直接解く方法は失敗するため, 別の方法を考えねばならない. その1つは実験と観察により検討する方法である. つまり, コンピュータのソフトウェアを用いてパラメータを変えたいくつかのリサジュー曲線を描き, それらがどのような影響を及ぼすか確認する方法である.
複数の可変パラメータを持つものを調査する場合, これらのパラメータを同時に扱うよりも別々に調査する方がはるかに簡単である. リサジュー曲線には a, b, \phi の3つの可変パラメータが存在する. そこで, 位相差 \phi を固定して角周波数 a, b を調べた後, 角周波数を固定して位相差を調べることにする.
角周波数の調査
\begin{align*}
x&=\sin{(at+\phi)}\\
y&=\sin{bt}
\end{align*}
位相差 \phi を0に固定し, 角周波数 a, b を1から5の範囲で変化させた場合のリサジュー曲線は以下のようになる.
図4-a. 角周波数比の異なるリサジュー曲線
この表には以下の興味深い性質がある.
-
表中の全てのリサジュー曲線は, 2×2の正方形に内接している.
水平・垂直振動の振幅が1に設定されているため, 曲線は x=1, x=-1, y=1, y=-1 に触れるが, それを越えることはできない.
-
a=b=1 のリサジュー曲線は a=b=2, a=b=3 ... の曲線と同一である. 同様に, a=1, b=2 のリサジュー曲線は a=2, b=4 の曲線と同一になる.
図4-b. 性質2
つまり, a と b の比のみが重要で, 同じ角周波数比のリサジュー曲線は同じ構造になる事が分かる.
例えば, a=1, b=2 のリサジュー曲線に t=2uを代入すると
\begin{align*}
x&=\sin{t}\\
y&=\sin{2t}
\end{align*}
より
\begin{align*}
x&=\sin{2u}\\
y&=\sin{4u}
\end{align*}
となり, a=2, b=4 のリサジュー曲線と何ら変わりはない. これは, 記号 t と u のどちらを使用してもここでは問題ないためである. この解析は有理数の周波数比を持つ全てのリサジュー曲線に一般化できる.
-
図4-cに示すように, a=1, b=2 のリサジュー曲線は, a=2, b=1 のリサジュー曲線を直線 y=x について反転したものであると分かる. 実際は, どのリサジュー曲線でも a と b の値を入れ替えると, 直線 y=x について元の曲線が反転した結果となる.
図4-c. 性質3
\begin{align*}
x&=\sin{at}\\
y&=\sin{bt}
\end{align*}
上式の a と b を入れ替えると, 次のリサジュー曲線が得られる.
\begin{align*}
x&=\sin{bt}\\
y&=\sin{at}
\end{align*}
ここで, 元の曲線の x と y を入れ替えても同じ曲線が得られる. さらに, 直交座標系において曲線の方程式中の x と y の交換は, 曲線を直線 y=x について反転させることと等価であるから, a と b を交換させることも, 直線 y=x について反転させることと等価である.
これらの性質から, 角周波数の異なる多くのリサジュー曲線は, 実際は同じものであり, その全てを調査する必要はないことが分かる. 次のような分類ですべてのリサジュー曲線は表現可能である.
\begin{align*}
x&=\sin{rt}\\
y&=\sin{t}
\end{align*}
ここで r は2成分の角周波数比を表す. これには有理数と無理数があるが, ここでは単純な有理数の場合のみ考え, 無理数の場合は後の節で考える. この表現の議論は以下のようになる.
任意のリサジュー曲線を考える.
\begin{align*}
x&=\sin{at}\\
y&=\sin{bt}
\end{align*}
ここで a と b は整数であり, a\leq b と仮定できる. もし a>b ならば, 両者の値を交換し, 性質3より曲線が直線 y=x を中心に反転するだけであり, 曲線の構造には影響しない.
次に, 両式の角周波数を b で割ると, 性質2より曲線は変化せず次式が得られる.
\begin{align}
x&=\sin{\frac{a}{b}t}\\
y&=\sin{t}
\end{align}
この方程式は前述の分類に属している. したがって, 全ての曲線はこの式に還元されるため, この分類のみ調査すればよい.
次のアニメーションは, 周波数比 \frac{a}{b} を0から1まで連続的に変化させた場合のリサジュー曲線の一部を示したものである.
図4-d. 周波数比を変化させたリサジュー曲線
アニメーションを見れば分かるように, これらのリサジュー曲線のほとんどはかなり複雑な構造をしているが, 単純なものも散見される. さらに詳しく観察すると, このような単純な構造が発生する場合, 周波数比は単純な分数でなければならないと分かる. 実際, 周波数比 \frac{a}{b} を単純な分数にすると(すなわち, a と b の最小公倍数が1), a と b が大きくなればなるほど, リサジュー曲線はより複雑になっていく. この現象はリサジュー曲線の生成過程(図1)をもう一度見てみると理解しやすい.
2成分の振動が t=t_0 で始まったとする. 周波数比が有理数である限り, 移動点はやがて始点へ戻り, 閉じたリサジュー曲線を描く. これが t=t_1 で起きたとする. このとき, t_0 から t_1 までの期間がリサジュー曲線の1サイクルとなる. さらに, 始点と終点が一致するため, 以下のようになる.
\begin{align*}
x(t_0)&=x(t_1)\\
y(t_0)&=y(t_1)
\end{align*}
式(3), (4)より
\begin{align*}
\sin{\frac{a}{b}t_0}&=\sin{\frac{a}{b}t_1}\\
\sin{t_0}&=\sin{t_1}
\end{align*}
すなわち
\begin{align}
\frac{a}{b}(t_1-t_0)&=2k_1\pi\\
(t_1-t_0)&=2k_2\pi
\end{align}
となる. ここで, k_1 と k_2 は整数である. また, t_1+t_0=(2k+1)\pi は1サイクル内の交点を表すため省略した. これらの交点では, 位置は重なっていても速度は重なっていない. よって, リサジュー曲線はこれらの点では閉じていない.
式(6)を式(5)に代入して
\frac{a}{b}=\frac{k_1}{k_2}
\frac{a}{b} は既約分数であると仮定しているため(そうでない場合は, 共通因数で割ればよい), この式を満たす最小の k_1, k_2 は k_1=a, k_2=b であり, 式(6)に代入し直すと
つまり, b が大きくなるほどリサジュー曲線が閉じるまでに時間がかかり, 複雑な曲線となる. \frac{1}{2}のような単純な角周波数比の場合, すぐに振動が繰り返されるようになり, リサジュー曲線は図4-aのような単純な曲線になる. しかし, \frac{37}{335}のような比率となると, 曲線はより複雑になる. 極論, 周波数比が無理数であれば, a も b も"無限に大きい"ことになり, 曲線は閉じることがない. このケースについては, 節:角周波数比が無理数の場合を参照すること.
結論として, 角周波数比 \frac{a}{b} は最も単純な分数となり, リサジュー曲線の複雑さを決定する. リサジュー曲線は a と b が大きいと複雑に, 小さいと単純になる. これがリサジュー音叉が音律に適している理由である. 音楽理論では, 重要な音程のほとんどが単純な分数である. 例えば, 完全オクターブの音程は 1:2, 完全5分の1は 2:3, 完全4分の1は 3:4 となっている. これらの音程は全て単純かつ特徴的なリサジュー曲線に対応する.
位相差の調査
前節では, リサジュー曲線の角周波数がその構造に与える影響について把握した. 次は, 角周波数を固定し, 3番目, すなわち最後のパラメータである位相差 \phi について調査する.
\begin{align*}
x&=\sin{(t+\phi)}\\
y&=\sin{3t}
\end{align*}
\phi を 0 から 2\pi まで連続的に変化させたリサジュー曲線のアニメーションを以下に示す.
図5-a. 位相差を変化させたリサジュー曲線
興味深いことに, 上のアニメーションは変化する2次元曲線というよりも, 回転する3次元曲線のように見える. この錯覚の理由はリサジュー曲線のもう1つの定義に関係している. この文書の冒頭で次のような定義を紹介した.
リサジュー曲線は, 直交する2つの調和振動の重ね合わせである.
しかし, リサジュー曲線の定義はこれだけではない. リサジュー曲線は, 円形底面上の3次元調和高さ関数の投影としてみることもできる. 以下の画像はこの定義をより詳細に説明するものである.
図5-b. 調和高さ関数の円形底面
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図5-c. 上昇プロセス
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図5-d. YZ平面への投影
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この調和高さ関数を生成する最初のステップは, 図5-bに示すように, XY平面上に円形の底面を描くことである. この円形の底面のパラメトリック方程式は次のようになる.
\begin{align*}
x&=\cos{(t+\phi)}\\
y&=\sin{(t+\phi)}
\end{align*}
ここでの変数 \phi は, x^2+y^2=1 の関係があるため, 円の形状に影響しない. しかし, \phi の値を変えると円は原点 O を中心に回転する. O は円の中心でもあるので, 動きを見ることはできないが, この回転は後で大きな影響を与える.
次のステップは, 円形底面の各点をある高さまで上げる(または下げる)ことである. この高さは関数によって決定される.
ここで \phi を変化させると, 曲線の回転対称性が崩れるため, 回転が観察可能となることに注意する(図5-c).
最後に, この回転する高さ曲線を図5-dのようにYZ平面へ投影すると図5-aのアニメーションと同じようになることがわかる. つまり, このリサジュー曲線は, この3次元高さ曲線の投影と見ることができる. \phi の値を変えると3次元曲線が回転するため, 2次元曲線も変化する. このため, 図5-aのような3次元の錯視が起こるのである.
代数的な解析もこの結果に一致する. これまで見てきたように, この調和高さ関数のパラメトリック方程式は次のようになる.
\begin{align*}
x&=\cos{(t+\phi)}\\
y&=\sin{(t+\phi)}\\
z&=\sin{3t}
\end{align*}
これをYZ平面に投影するには, X成分を0にすればよい.
\begin{align*}
x&=0\\
y&=\sin{(t+\phi)}\\
z&=\sin{3t}
\end{align*}
この投影を先程のリサジュー曲線と比較すると, 確かに同じものであると分かる.
\begin{align*}
y&=\sin{(t+\phi)}\\
z&=\sin{3t}
\end{align*}
ここでは, a=1, b=3 という特殊な場合で説明したが, この結果は周波数比が有理数の全てのリサジュー曲線に当てはまる. 次の画像にいくつかのリサジュー曲線の3次元高さ関数を示す.
図5-e. a=2, b=3, \phi=3
図5-f. a=3, b=5, \phi=\frac{\pi}{10}
javaアプレットにまとめる
省略
角周波数比が無理数の場合
これまで, リサジュー曲線のうち, 角周波数比が有理数であるものに限って説明してきた. では, 無理数の角周波数比を持つ曲線はどうなるのであろうか? 例として, 次のリサジュー曲線を見て欲しい.
\begin{align*}
x&=\sin{2t}\\
y&=\sin{\pi t}
\end{align*}
\pi が無理数であるのは当然の事実である. よって, ここでの周波数比 \frac{2}{\pi} も無理数となり, この曲線は今までのどの曲線とも根本的に異なるものになる. 下のアニメーションを見れば, それがどのようなものか分かるであろう.
図6. 無理数の角周波数比を持つリサジュー曲線
図6は, このリサジュー曲線の加速度運動における軌跡を示したものである. 最初は普通のリサジュー曲線と同じに見えるが, すぐにその違いが分かる. この曲線は決して閉じないのである. 延々と続き, 最後には2×2の正方形を埋め尽くしてしまう. 実際に, 角周波数比が無理数のリサジュー曲線が閉じないことを示すことができる. 一般性を損なわずにこのようなリサジュー曲線の方程式を考えてみる.
\begin{align*}
x&=\sin{rt}\\
y&=\sin{t}
\end{align*}
ここで, r は無理数である.
ここで, 曲線が閉じていると仮定し, 矛盾を導出することで曲線が閉じないことを示す. 有理数のときと同様に開始時刻を t_0, 終了時刻を t_1 とすると, 次のようになる.
\begin{align*}
x(t_0)&=x(t_1)\\
y(t_0)&=y(t_1)
\end{align*}
よって
\begin{align*}
\sin{rt_0}&=\sin{rt_1}\\
\sin{t_0}&=\sin{t_1}
\end{align*}
したがって
\begin{align}
r(t_1-t_0)&=2p\pi\\
(t_1-t_0)&=2q\pi
\end{align}
となる. ここで, p と q は整数である. また, t_1+t_0=(2q+1)\pi は有理数のときと同じ理由で省略した.
式(8)を式(7)に代入して
この式は, r が無理数であるという条件に矛盾するため, 成りたたない. したがって, このリサジュー曲線は決して閉じない.
Discussion