OpenTelemetry を使って収集したトレースと Datadog DBM の情報を関連付けてみる
こんにちは!
Datadog Advent Calendar 2025 の 12/14 担当の逆井(さかさい)です。
ちょっと前に、OpenTelemetry(以下、OTel)のトレースと、Database Monitoring のデータを関連付けするためのドキュメントが生えました。OTel ラバーにとっては待望?の情報です。これがどういうものなのか、なんで嬉しいか、OTel と ddtrace の差分的なところを書いていきます。
想定読者としては、OTel や ddtrace、分散トレース、Datadog Database Monitoring や sqlcommenter を知っていることを想定していますが、テレメトリーシグナルの関連付けに関心を持っている方であれば読みやすいように仕上げていきます!
まず
Correlate OpenTelemetry Traces and DBM を見ると、セットアップはとても容易です。Database へクエリする処理のスパン(データベーススパン)にいくつかのスパンタグを埋め込むように書いてあります。db.system, db.statement, span.type が必須のスパンタグです。トレースと DBM の相関関係はクエリステートメントを基にしているため、これらのスパンタグが必要になります。
OpenTelemetry のデータベーススパンのための計装ライブラリを使っている場合、例えば otelsql を使うと自然とデータベーススパンへ上記のスパンタグが埋め込まれます。otelsql の README に書いてある使い方のように、以下では DB Semantic Cenventions で定義された db.system に postgres をセットしています。
db, err := otelsql.Open("mysql", mysqlDSN, otelsql.WithAttributes(
semconv.DBSystemPostgreSQL,
))
この OTel Semantic Conventions のキーが、Datadog では datadog.span.type としてマッピングされて、otelsql で作られたスパンであっても Datadog の世界でのデータベーススパンとして認識されます(= Datadog APM の画面で SQL Queries にスパンが抽出されます)。OTel Semantic Conventions と Datadog Conventions の対応表は こちら に掲載されいているので、マニアなかたは参照してみてください。

データベーススパンが「SQL Queries」タブにマッピングされる
なかには、データベーススパンを作成する際に otelsql のような自動計装ライブラリを用いることができないケースもあると思います。その場合は、カスタムでスパンタグを付与したり、OTel Collector の Attributes Processor で属性を付与しましょうと書かれています。
ここまでで、OTel のトレースと、DBM のデータがどのように関連付けられているかをふわっと理解しました。
じゃあ、どう見えるんだい
ちゃんと関連付いていると APM 側から DBM のデータ(特に実行計画やクエリコスト)、DBM 側からトレース情報を参照することができるようになります。便利!
APM -> DBM
データベーススパンのオーバビューを開くと、クエリの確認とともに、そのクエリ(DBM が収集している正規化されたクエリ)の実行計画を関連付けて見ることができます。

データベーススパンのオーバービュー
トレースで特定のデータベースクエリに時間がかかっている処理までを特定し、クエリレベルでどこにコストがかかってしまっているかを簡単に確認することが可能です。DBM を開いて探してもいいのですが、画面遷移は少ければ少ないほど嬉しいものです。

データベーススパンから関連づいたクエリの実行計画(DBM 側のデータ)を表示
DBM -> APM
DBM サイドからも APM の関連付けを確認することができます。これは DBM をお使いのユーザーしかイメージしにくいかもしれませんが、以下のように正規化されたクエリから「Upstream」タブにジャンプして、クエリに関連付いたトレースを表示することができます。もちろんこれを押すことで、APM のトレースが確認可能です。いろいろ関連付いてて良いですね。

データベーススパンから関連づいたクエリの実行計画(DBM 側のデータ)を表示
ここまででデータベーススパンにデータベースの情報をスパンタグとして埋め込むことで、DBM と関連付けができ Datadog の使い勝手を向上できるよということを書きました。
ここからはだいぶ余談です
さらにいうと、DBM ではクエリが「どのサービスの、どのエンドポイント」から呼び出されているかを確認するための「Calling Service」という関連付けも用意されています。

Calling Service を見ると、当該クエリは otel-go-dbm サービスの GET で実行されている
この Calling Service の関連付けは ddtrace(Datadog が配布している計装ライブラリ)を使った APM と DBM の関連付け で公式にサポートされている機能です。OTel と DBM の関連付けでは現状公式的なサポートはされてなさそうで、その理由を調べてみたところクエリステートメント一致で関連付けているわけではなく、また別の機構で関連付けているよう仕様のようでした。その仕様は、冒頭伏線をはっておいた sqlcommenter です。sqlcommenter が Calling Service 機能における関連付けの要素で、sqlcommenter でデータベースクエリに対して traceparent と Datadog 独自のタグ(以下)を埋め込んでおり、これによって、DBM 側から Calling Service としてアプリケーションの情報を引けるということです。
ちなみに、急に出てきた sqlcommenter はクエリに対してコメントを埋め込むことができる仕組みで、オブザーバビリティの文脈ではもっぱらトレース ID とかスパン ID を埋め込んでオブザーバビリティバックエンド側で関連付けるために使われます(メトリクスでいうエグザンプラー的な)。詳しくは 間瀬さん の OTel Advent Calendar Day1 のブログ記事 や、Google Cloud の出してる ブログ記事 が参考になります。
今回のサンプルで使った otelsql でもコメント付与がサポートされているので、無理やり ddtrace のタグを参考に埋め込んでみたところ Calling Service にアプリケーションがマッピングされました。実験的に機能検証しただけなので取り扱いにはご留意ください。(とはいえ、付与してる情報は大体スパンから取得できるものなので、コレクターなり、Datadog Agent で自動的にマッピングしてくれると便利そうではあるので、内部でも働きがけてみようとは思います)。
まとめ
データの関連付けはオブザーバビリティにおいて非常に重要な要素です。あらゆるデータを相関させて、より充実した Datadog ライフを歩みましょう!それでは、良いお年を。来年もユーザーグループなどでよろしくお願いします!
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