「Winny」の感想
2023年3月10日に公開された映画「Winny」の感想です。
特に技術的な話はありません。
Winnyとは
Winnyとは、金子勇氏が作ったP2P技術を利用したファイル共有ソフトです。
P2P方式は、クライアント・サーバー方式と異なりサーバーが存在しません。
そのため、サーバーが不要かつ匿名性も高い実用的なソフトウェアとして人気を博しました。
一方で、匿名性が災いし、違法アップロードや情報窃取などの違法行為に利用されてしまったことにより、問題視されるようになってしまった。
感想
心に残るとても良い映画でした。
Winnyがどのようなソフトウェアで、なぜ問題視されるようになったのかについて劇中で説明がありますが、技術や法律に関する専門的な話は最小限に抑えられており、「出る杭が打たれない社会を」という主題を訴えるために上手にエンタメ化されています。
また、「専門的な話を映画としてエンタメ化する」という構図は、劇中での「裁判官に技術をわかりやすく説明する」と言うシーンと重なるものがあり、どんなに凄い技術や作品だとしても、わかりやすく大勢の人に伝えて初めて大きな価値を持つのだと感じさせられました。
ちなみに、「裁判官に技術をわかりやすく説明する」という場面は、檀さんと金子さんの一問一答が小気味良いテンポ感で繰り広げられており、この映画の中で好きなシーンの一つになっています。
この映画の見どころは、なんといっても裁判です。
パンフレットには、弁護士の檀先生ご本人からのコメントが次のようにあります。
これまでの日本映画の中で、法廷シーンのリアリティはこの映画がナンバーワンですよ。
私は法廷のリアルを知らないので、リアリティの評価は一切できません。
ただ、映画の中で好きなシーンをあげてと言われると、法廷での裁判のシーンに集まります。
壇さんと金子さんの一問一答もそうですが、裁判の最中、金子さんがアイデアを思いついてプログラミングに熱中してしまうというシーンは、壇さんの言う「プログラム馬鹿」と言う金子像が生き生きと表現されています。
また、ベテラン弁護士である秋田弁護士が尋問するシーンは最高にかっこよく痺れました。
リアリティを保ちつつ視聴者に魅せる法廷のシーンだけでも、この映画を見る理由として十分に足ると思います。
金子さんを演じる東出昌大さんにも触れておきたいです。
私は、金子さんの人物像は分かりませんが、東出さんの演技は「プログラミング大好き人間」そのものでした。
金子さんを演じる東出さんの姿を見て、お姉さんが号泣されたというエピソードがありますが、本当に憑依したかのような素晴らしい演技です。もちろん、そのほかの俳優陣も実力は揃いで、見ていてなんの違和感も感じることがありませんでした。
最初は、エンジニアの端くれとして見ておこうかな、と言う軽い気持ちで映画館に行きましたが、そこにあったのは想像以上に素晴らしい作品で、この映画に関わった全ての人の熱量が感じられました。(映画の感想を初めて書いてしまうくらい)
AI技術による社会問題が懸念される今、より現代社会に刺さる映画となっています。
AIの話と関連付けて、エンジニアとしての心構えがどうのなど書こうとも思いましたが、端くれのエンジニアが説教くさい話を書いてもしょうがないので、この辺で終わりにしようと思います。
とにかく素晴らしい作品をありがとうございました!
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