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AWS負荷試験

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クラウド時代の負荷試験の目的

あくまで一般的な話、細かいところはプロジェクトによって異なる

  1. 各種ユースケースにおける応答性能を推測する
  2. 高負荷時のシステムの性能改善を行う
  3. 目的の性能を提供するためのハードウェアを選定する
  4. システムがスケール性を持つことを確認する
  5. システムのスケール特性を把握する

スケール特性とは「どこを増強すれば性能が向上するか」
以下を把握するとよい

  • いくつかのレベル(100rps・500rps・1000rps)を処理するために最適なインフラ構成
  • 目標値を超えて最大どの程度のスループットを処理できるか
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良い負荷試験が実施されていることを示す指標

  • 試験対象のシステムに負荷が集中している状態
  • ボトルネックを特定できている状態

べき論としては本番環境に近いデータを取得するために、負荷試験環境は本番環境と全く同じものを構築する。
ただ対象以外に引きづられて本来負荷をかけたいシステムに負荷をかけられないのでは良い試験ではない。今まさに負荷をかけたい場所がどこかを見極め、試験対象システムに負荷を集中させるには一部本番環境と異なる構成をとってもいいと考える必要がある。

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攻撃ツールを使う際の注意点

  • 攻撃ツールで観測されるレイテンシは負荷試験対象システムのレイテンシとは異なる
  • 攻撃ツールのクライアントの同時起動数とシステムで処理される同時処理数は異なる
  • 攻撃ツールのクライアントは前のリクエストが完了しないと次のリクエストを発行しない

攻撃ツールで見えている数字はSSLのデコードやネットワークの遅延を含んでいるので、システムが実際に処理した時間は別途確認できるようにしておく

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スケジュールの決定

負荷試験は「システムの改善」の時間が大きくブレる可能性があるため、余裕を持ったスケジュールで臨む必要がある。
フレームワークの再選定になった場合等は手戻りが大きいため、システムの完成を待たずに並行して負荷試験を行うことも検討する。

当然システムの構成変更権限を持たない人が試験を行う場合は、権限を持つ人が行う場合に比べて数倍の期間を要する。

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目的の設定

「クラウド時代の負荷試験の目的」で記載した内容に加えて、具体的にどのようなユースケースに対する試験を行うのかここで洗い出す。

  • サービス利用開始直後にユーザーが大量に登録をする
  • 順調に稼働後データが大量に溜まった
    etc...
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前提条件の整理

  • 試験対象とするシステムの範囲
  • データ量
    • サービス利用者数・想定ユーザー行動・利用期間などから概算で決める
  • 外部システムのレイテンシ、利用するシステムの制約
  • 継続的な性能維持期間
    • 「X時間以上継続して性能を維持すること」などのような期間を決める
  • 負荷のかけ方について
    • どこのネットワークから負荷をかけるのか
    • HTTPSを使うかどうか
  • その他前提条件
    • 本番環境との差異
    • 実施スケジュールの制約等
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目標値の決定

大抵の場合は「スループット」「レイテンシ」の2つの指標について適切な値を検討する。

スループットの目標値

「1日の利用者数」「1人あたりの1日の平均アクセス数」「1日のアクセス数に対する最大ピーク時の倍率」が分かればどの程度のアクセスがあるか概算できる。

1日の利用者数 × 1人辺りの1日の平均アクセス数 = 1日の総アクセス数
1日の総アクセス数 ÷ 1日の秒数 = 1日の平均rps
1日の平均rps × 1日の平均アクセス数に対する最大ピーク時の倍率 = 最大rps

この最大rpsに安全計数として2 ~ 3倍を乗じた数字をスループットの目標値にする。

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利用する負荷試験ツールの選定

手軽さ・複雑なシナリオ作成・高負荷それぞれの得意不得意があるので、それぞれに合ったツールを選定する。

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負荷試験シナリオの決定

負荷試験シナリオに含まれているべきページ

  • アクセス頻度の高いページ
    • 例: TOPページ
  • サーバーリソースの消費量が高いことが想定されるページ
    • CPU例: 暗号化や認証操作を行うページ、画像・動画のコンバートを担うページ、ファイルの圧縮操作や展開操作などを行うページ
    • ネットワーク帯域例: 応答コンテンツサイズが大きいページ、画像・動画のアップロード操作やダウンロード操作を行うページ
    • ディスクIO例: ログ出力内容が多いページ、動的なファイル内の検索などを行うページ
  • DBの参照をするページ
    1. 複数のユーザーが同じリソースを参照し、同じ応答を返すページ
      • マスタ系の参照ページ
      • 全員が必ず最新のユーザー投稿を参照するページ
    2. リソース全体の横断検索をした上で結果を応答するページ
      • ポイントランキングのリアルタイム表示
      • 自分と属性が近いユーザーの検索・表示
    3. アクセスするユーザーごとに異なるソースを参照し、個別の応答を返すページ
      • ユーザー別のマイページ
      • ユーザー属性に依存した結果を表示するページ
      • ユーザーの所有するタイムライン
  • DBの更新をするページ
    1. 複数のユーザーが同じリソースを更新するページ
    2. ユーザーごとに異なるリソースを更新するページ
  • 外部システムと通信するページ(SNSやSQSも含む)
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負荷試験の準備

  • 負荷試験対象環境構築
  • 負荷試験ツールの準備
  • 関連システムの部門間調整
  • クラウド事業者の各種制限緩和申請

負荷試験対象環境構築

実際とは異なり以下の形で準備する

  • 最終的にELBを利用する場合でも、配下のアプリケーションサーバーへの直接リクエストを許可
  • ELBの前に別のルーティングを利用する場合でも、ELBを直接叩くエンドポイントを利用可能とする
  • アクセスログに実行時間を追加するようにする
  • (できれば)HTTPでのアクセスを許可
  • 外部のシステムとの結合ポイントのon/offができるようにスタブなどを用意

また以下の負荷試験専用エンドポイントを追加しておく
そして以下のエンドポイントからリソースを取得するシナリオも作成しておく

  • 静的なコンテンツを返答するだけのURL
  • Webフレームワークを利用したHello Worldページを返答するURL
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負荷試験の実施

1度に全体的な負荷試験を実施してしまうと、負荷試験が妥当なのかの切り分けが難しくなるため段階を追って実施していく。

負荷試験を効率的に進めるための9つのステップ

  1. ツールや環境の検証
  2. Webフレームワークの検証
  3. 参照系の性能の検証
  4. 更新系の性能の検証
  5. 外部サービス連携の性能の検証
  6. シナリオ試験
  7. スケールアップ/アウト試験準備
  8. スケールアップ/アウト試験(1~6の回帰試験)
  9. 限界性能試験(1~6の回帰試験)

ツールや環境の検証

試験対象のWebサーバーに負荷試験ツールをインストールしてローカルホストで負荷をかける。(もしくは同一セグメントからPrivateIPで接続)対象は静的ファイルの取得。攻撃ツール側にボトルネックを作り、かけられる負荷の上限及び計測可能なスループットの上限を計測する。

十便なスループット(数千rps以上)が観測されていれば次の進める。されなければ設定の見直しを行う。

Webフレームワークの検証

Webフレームワークの機能を利用して生成されるHello Worldに対する試験。
ここでボトルネックが見つかった場合は、Webフレームワーク利用部分のチューニングを行える。最悪の場合はフレームワークの選定し直しとなる可能性がある。
Webフレームワークの最速値を計測する。

  • Webサーバーのリソースを十分に使えているか
  • 前のステップと比較して明らかなレイテンシ・スループットの悪化が認められないか

参照系の性能の検証

キャッシュシステムの利用やDBの参照部分にフォーカスした試験を行う

  • Webサーバーのリソースを十分に使えているか
  • DBサーバーのリソースを十分に使えているか
  • 前のステップと比較して明らかなレイテンシ・スループットの悪化が認められないか

更新系の性能の検証

DBの更新処理にフォーカスした試験を行う

  • Webサーバーのリソースを十分に使えているか
  • DBサーバーのリソースを十分に使えているか
  • 前のステップと比較して明らかなレイテンシ・スループットの悪化が認められないか
  • DBに登録されたデータやログは正常か

外部サービス連携の性能の検証

外部API・KMS・S3・DynamoDBなど
外部システム利用時のオーバーヘッドを見積もり、不要なオーバーヘッドがなく、効率的な呼び出しがされていることを確認する

  • Webサーバーのリソースを十分に使えているか
  • DBサーバーのリソースを十分に使えているか
  • 前のステップと比較して明らかなレイテンシ・スループットの悪化が認められないか
  • 外部システムのリソース使用状況は切迫していないか
  • 外部システムのレイテンシに問題はないか

シナリオ試験

ここまではPrivateIPによる接続

スケールアップ/アウト試験準備

ここからはロードバランサー経由の攻撃に変更。
Webサーバーはまだ1台とする。

  • グローバルセグメントからの攻撃が適切に行われることを確認する
  • 独立した攻撃サーバーからかけられる攻撃の限界値を計測する

スケールアップ/アウト試験

ここからが本番
ステップ7まででボトルネックになっていたリソースに関してスケールアップ/スケールアウトを行い再試験を繰り返す。

  • システム性能がスケールアップやスケールアウトに追従して完全することを確認する
  • 今まで負荷がかかっていなかった各サブシステムに適切な負荷をかけてそれぞれのチューニングを行う

限界性能試験

多くの場合は攻撃サーバー1台で十分な負荷をシステムにかけることができる。
目標スループットが高く、攻撃サーバー1台では適切な負荷をかけられないこともある。
その場合には攻撃サーバーをスケールアウトして、複数の攻撃サーバーから同時に負荷をかけることでより強い負荷をシステムに与え、その結果を観測する試験を行う。

  • 単体の攻撃サーバーからでは負荷をかけきれない、より大規模なシステムにおける負荷試験を実施
  • 将来のリソース増強のためのマイルストーンを見積もる