USB4ハブの性能を検証してみた
はじめに
BenQさんからBenQ beCreatus GR10というUSBのUSBハブをご提供いただいたので,色々と検証してみました.
Amazonで購入が可能です
外観
手前の部分がスタンドになっていて,引き出すとスマホなどを立てかけることが可能です.
ここにゲーム機をセットしてハブと接続するとゲーム機のIOを強化することができます.
あいにくちょうど良い機器を持ってなかったので,iPhone14を置いてますがType-Cじゃないので接続できません...
本体には2つのUSBポートと,2つのUSB-Aポートがついています.
USB-Cの1つはPDの入力専用です.
また,映像出力はHDMI 2.1が1つと,通信用に2.5GbEのRJ45ポートが1つついています.
USB4とは?
今回のハブで採用されているUSB4について,そもそもどうゆう企画なのかを解説します.
まず,USB (Universal Serial Bus)はPCに周辺機器を接続するための標準規格です.
ややこしいですが,USB Type-CやUSB Type-Bはコネクタの物理的な規格の名前です.
似たような規格として,ThunderboltがありますがこれはUSBとは全く別の規格です.
ただ,どちらも規格を制定している会社が同じようなこともあり,仕様作成に大きく影響を受けています.
以下にいくつかUSBの規格を紹介します.
最大通信速度 | 名称 | 規格名 |
---|---|---|
40Gbps | USB 40Gbps | USB4 Gen3x2 |
20Gbps | USB 20Gbps | USB4 Gen3x1 USB4 Gen2x2 USB3.2 Gen2x2 |
10Gbps | USB 10Gbps | USB3.2 Gen1x1 USB3.2 Gen2 USB3.1 Gen2 |
50Gbps | USB 5Gbps | USB3.2 Gen1 USB3.1 Gen1 USB3.0 |
480Mbps | USB 2.0 | USB 2.0 |
さて,今回USBハブに採用されてるのUSB4は2019年に登場したUSBの規格です.
USB4はその前身であるUSB 3.xシリーズよりも大きく仕様が変わり,IntelのThunderbolt 3技術をベースに策定されています.
表から分かる通りUSB4と言ってもいくつか種類があるかと思います.
同じUSB4でも「Gen3x1」や「Gen2x2」など複数の組み合わせが存在しています.
"Gen"と"x"の意味
- Gen(Generation): 電気信号の世代(Gen3 = 20Gbps, Gen2 = 10Gbps)
- x1 / x2: レーン(Lane)の数(x2なら二つのレーンを同時に使うことで帯域幅が2倍)
なので,USB4 Gen3x2だとGen3(= 20Gbpsレーン)を2レーン用いるため,最大40Gbpsまで転送可能になります.
一概にUSB4と言っても,必ず40Gbpsの通信が行えるわけではないので注意が必要です.
今回はのハブは,USB4 Gen3x2なので40Gbpsの通信に対応しています.
また,USB4で特徴的なのが「トンネリング技術(Protocol Tunneling)」です.
異なる通信プロトコル(たとえばPCI ExpressやDisplayPortなど)を1本のケーブル上で同時に扱うための仕組で,それぞれのプロトコルをカプセル化することで通信を行なってます.
これにより帯域幅を動的に割り当てができ,例えばDisplayPortの映像転送が優先的に帯域を使い,大きなデータ転送が走り始めるとUSBデータなどに再配分をすることが可能です.
※USB4のルーティング制御についてより引用
USB4の通信速度検証
それぞれが10Gbpsの帯域で通信でき,全体で最大40Gbpsの帯域で通信が可能となっています.
本当に10Gbpsの帯域で通信できるのか確認しみましょう.
今回はCorsairのMP600 COREというPCIE Gen4 x 4 NVMe M.2接続のSSDを以下のようなM.2 SSDの変換ボードに接続して検証してみました.
SSDの速度は,シーケンシャルリードで最大4,950MBpsです.
変換ボードはUSB3.1 Gen2に対応しているので,データの最大のデータ転送速度は10Gbpsです.
データ通信速度が10Gbpsなので,理論上は最大で10/8=1.25Gbps=1250MBpsの速度が出るはずですね.
以下はAmorphousDiskMarkを用いてM3 MacBook Proで測定した結果です.ファイルシステムはAPFSを利用してます.
シーケンシャルリードで最大942.13MB/sの速度が出ています.これは,bpsに直すと7,537Mbps=7.5Gbpsぐらいです.
何回か測定すると多少変わるかと思いますが,この速度であればそこまで限界的な性能が求められる用途でなければハブがボトルネックになることはないかと思います.
PDの電力供給
USB PDに対応していて,100Wパススルーが可能です.
ただし,本体が15Wを消費するので接続した端末へは最大で85Wの供給が可能です.
実際にPCで出力されているか確認してみます.
65WのPD対応の充電器からハブのPD Inputに接続して,ハブの入力とPC側の入力それぞれで何W出てるのかを確認してみました.
-
ハブの入力
-
PCの出力
ハブで39.12-31.41=7.71W程消費されていることがわかります.
ハブで若干消費されてしまうので,もしPCを急速充電したい場合などちょっと余裕を持った充電器を選定した方が良さそうです.
映像出力
HDMI 2.1に対応しているので,48Gbpsの通信速度に対応しています
HDMIのバージョンと通信速度は以下の通りです
バージョン | 通信速度 | 最大解像度 |
---|---|---|
1.4 | 10.2Gbps | 3840×2160(4K)/30Hz 1920×1080(Full HD)/60Hz |
2.0 | 18Gbps | 5120×2880(5K)/30Hz 3840×2160(4K)/60Hz |
2.1 | 48Gbps | 7680×4320(8K)/30Hz 3840×2160(4K)/120Hz |
手元で使っているのがM3 MacProなので実際にEizoの4K 27インチのモニターに接続してみました.
USBでデータ転送しても映像がちらつくことなくスムーズに利用できました.
ちゃんと60Hzで接続できており,他の機器をハブに接続しても問題なく利用できました.
ネットワークの通信速度
ちょうど自宅に10GbEの通信環境が整備されていたので,ハブを使って接続してみました!
今回は対抗を2.5GbE対応のポートにしました.
Macを使ってますが,接続してみると以下のようにちゃんと2.5GbEで認識されてますね
実際に2.5Gで通信ができるのかを試すために,2.5GbEで接続した状態で10GbEで接続されたiperf3サーバに接続して帯域を確認してみました
上り下りどちらも2.15Gbsなのでほぼ理論値通りの数字で,ちゃんと2.5GbEで接続できてますね!
HDDのNASなら2.5Gあれば十分高速に使えるので,良さそうですね
$ iperf3 -c 192.168.100.21
Connecting to host 192.168.100.21, port 5201
[ 5] local 192.168.100.15 port 65157 connected to 192.168.100.21 port 5201
[ ID] Interval Transfer Bitrate
[ 5] 0.00-1.01 sec 80.2 MBytes 670 Mbits/sec
[ 5] 1.01-2.01 sec 276 MBytes 2.32 Gbits/sec
[ 5] 2.01-3.00 sec 276 MBytes 2.32 Gbits/sec
[ 5] 3.00-4.00 sec 277 MBytes 2.33 Gbits/sec
[ 5] 4.00-5.00 sec 275 MBytes 2.30 Gbits/sec
[ 5] 5.00-6.01 sec 276 MBytes 2.32 Gbits/sec
[ 5] 6.01-7.01 sec 275 MBytes 2.31 Gbits/sec
[ 5] 7.01-8.00 sec 276 MBytes 2.32 Gbits/sec
[ 5] 8.00-9.00 sec 275 MBytes 2.31 Gbits/sec
[ 5] 9.00-10.01 sec 277 MBytes 2.32 Gbits/sec
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
[ ID] Interval Transfer Bitrate
[ 5] 0.00-10.01 sec 2.50 GBytes 2.15 Gbits/sec sender
[ 5] 0.00-10.01 sec 2.50 GBytes 2.15 Gbits/sec receiver
iperf Done.
まとめ
今回はBenQ beCreatus GR10というUSBハブを検証してみました.
ネットワーク,USB,PDといった各要素を検証してみました.
検証環境の都合で製品の公称値の最大まで検証することはできませんでしたが,逆に言えば普通ハブを利用して作業する範囲では十分な性能があると言えるのではないでしょうか.
今後も継続して利用して色々と試してみようと思います.
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