行って良かった Microsoft AI Tour Tokyo
2024年2月20日、東京ビッグサイトで開催された Microsoft AI Tour Tokyo に行ってきました。行ってみてとても良かったです。感想や学んだことを書きます。
会場の雰囲気
予想以上に多くの人が参加している、という印象でした。キーノートの開始一時間前に到着したのですが、入場パス発券待ちの行列に30分近く並ばなくてはいけませんでした。そして人数以上に印象的だったのが、多くの参加者が非常に真剣だった、という点です。一つのセッションが終わるとすぐに次のセッションに移動して並んで待つ、という感じで、ワークショップによっては受付30分前からすでに行列ができ始めていました。生成AIとその活用に多くの人・企業が高い関心を持っていることを感じられました。
学んだこと
Microsoft Copilot Studio
今回の目玉の一つ、だったかと思います。ローコードで自分の Copilot を簡単に作れるようにするサービスです。Azure AI Studio はプロコード向け、という住み分けがされているようです。このイベントのタイミングに合わせて(?)日本語対応が開始したとのことです。
Copilot Studio で独自の Copilot を作るワークショップに参加しました。数クリックで、既存のWebサイトの内容を基に回答を返す Copilot を作成し、Teams から使えるようにできました。さらに、ASP.NET Core で作成した Web API のエンドポイントを Copilot に登録し、Copilot のチャットから注文情報の照会や登録ができました。
今のところ会社の業務でローコードツールを使うことはほとんどないのですが、個人的にはとても可能性を感じます。Web API のフロントエンドとして、構造化されたWebアプリだけではなく(或いはそれに代えて)、Teams や LINE といったツールを使う(それも自然言語で)、という選択肢がより現実的になる気がしています。
ちなみに Microsoft Copilot Studio は以下のページから誰でも簡単に試せます。
Azure AI Service
Speech と Vision のデモが印象的でした。あらかじめ自分の音声を学習させておけばテキストを自分の音声で読んでくれる、というだけでなく、自分の姿をしたアバターが音声に合わせて話してくれます。そのアバターの口や手の動きが予想以上に自然でした。音声の質は、登壇者曰く、自分で聞いたら違和感があるが、家族が聞いてもすぐには識別できないレベル、ということです。
Copilot という名前
キーノートセッションの中で Copilot の名前とロゴに言及されていました。ロゴは握手をモチーフにしていること、名前は Autopilot ではなく Copilot としていること、これらは主役が人であることを強調していること、などです。AIでもできることはAIにさせ、人はもっと人にしかできない仕事に取り組めるようにする、という Microsoft のメッセージが込められているようです。
プロンプトエンジニアリング
今回のイベントで個人的に最も学びが欲しい分野の一つでした。プロンプトエンジニアリングについてのワークショップが良かったです。Zero-shot プロンプト、Few-shot プロンプト、Function Calling、Jailbreak など、理解が深まりました。Function Calling は、今後業務で多用していくだろうと思っています。
Azure AI Studio と OpenAI を使用してコンテンツを生成するセッションの中で紹介された、以下の画像生成プロンプトのヒントも良かったです。
- Describing the subject of the image and the action
- Providing environment details
- Defining artistic style and colour schema
- Asking changes or variations of an input image
太字にしてあるところの情報を明確に渡す、ということですね。デモでは「馬に乗っているウサギ、手にはロリポップ(飴)を持っている、絵本の画像風で」というようなプロンプトを使っていました。ちなみに帰宅後早速、来週登壇するオンラインセミナーのプレゼン資料に載せる画像を生成AIに描かせたところ、何度かの試行の後に満足のいくものができました。
非構造化データ
キーノートセッションに登壇された Honda の河合氏が、日常の一般業務で蓄積される非構造化データ(例えばワードやエクセル)を Copilot によって横断的に活用できることに言及されました。そこから、今更ですが腑に落ちた点があります。スキーマを持つシステムに非構造化データを当てはめようとすると、いろいろと無理が生じやすいですが、生成AIは、構造化されたシステムと非構造化データをつなぐ役割を果たせる、少なくともその可能性を持っている、ということです。ソフトウェアエンジニアとして、これは重要な視点である気がしています。
全体の感想
キーノートセッションで語られた「AIを語る時代から導入する時代」の転換点にいることが体感できました。キーノートセッションに登壇されたサイバーエージェントの長瀬氏が、今AIを活用している企業としていない企業が3年後どうなるかを考えてほしい、と言われたのも印象的でした。個人的には、インターネットが当たり前になり始めた時、また皆がスマートフォンを持つようになり始めた時と同じ時代の空気を感じます。インターネットもスマホも出たばかりの頃は、何に使えるか分からないおもちゃのように見る人も少なくありませんでしたが、今では無くてはならないインフラの一つです。生成AIも同様で、ソフトウェア開発に携わるエンジニアとしては、生成AIを何にどのように使うか主体的に考え始めなくてはいけない時に来ているように思えます。
リアルに開催されるカンファレンスに久しぶりに参加しましたが、オンラインイベントでは得られない良さがある、と改めて感じられたのも良かったです。次回 AI Tour が開催されたらぜひまた参加しようと思います。
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