IPv4とIPv6の違いまとめ
はじめに
この記事は「小川晃通 著, プロフェッショナルIPv6 第2版, ラムダノート」の2.10節の内容を参考に、IPv4とIPv6の違いをまとめたものになります。
IPv6の超簡単な説明
IPv6(Internet Protocol version 6)は、インターネットに接続するための次世代プロトコルです。
従来のIPv4アドレス枯渇問題の解決策として設計されました。
IPv4とIPv6の違い
ここからはIPv4とIPv6の違いについて説明します。
IPアドレス長
IPv4アドレスの長さが32ビットだったのに対し、IPv6アドレスの長さは128ビットです。
IPv6アドレスは4倍の長さですが、表現できるIPアドレスの数にはもっと大きな差があります。
1ビット増えるごとに2倍になるため、IPv6のビット数で表現できるIPアドレスの数はIPv4アドレスの
IPアドレスのテキスト表記
IPv4アドレスではドット(.)区切りの十進表記です。
- 例: 192.168.1.1
しかし、IPv6アドレスではコロン(:)区切りの十六進表記です。
- 例: 2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334
IPアドレスの構成要素
IPv4アドレスは、ネットワーク部とホスト部によって構成されています。
これに対応するIPv6のユニキャストアドレスは、サブネットプレフィックス(ネットワークを識別する部分)とインターフェース識別子(ネットワーク内の特定のホストやインターフェースを識別する部分)によって構成されます。
これは単なる名称の違いではありません。
IPv6アドレスの割り当て対象がホストではなく、ネットワークインターフェースであることを意味しています。
アドレスのフォーマットの利用方法
IPv6では、さまざまなプロトコルの機能を実現するために、IPv6アドレスのフォーマットが利用されています。
例えば、IPv6マルチキャストでは、スコープやマルチキャストアドレスの構成がアドレスのフォーマットから判別できるようになっています。
IPv4/IPv6共存技術として、IPv4アドレスを埋め込んだフォーマットのIPv6アドレスなどもあります。
IPv4/IPv6共存技術の使用例
- デュアルスタック環境: IPv4とIPv6の両方のプロトコルスタックを持つデバイスで、これらのアドレス形式を使用して両方のネットワークと通信できます。
- トンネリング: IPv4ネットワーク上でIPv6パケットをカプセル化して送信する際に、これらのアドレス形式が使用されることがあります。
- NAT64: IPv6のみのクライアントがIPv4のみのサーバーと通信する際に、これらのアドレス形式が変換プロセスで使用されます。
IPパケット転送の実現方法
IPv4では、IPパケットの転送において、ARP(Address Resolution Protocol)やIGMP(Internet Group Management Protocol)といったIPv4とは別のプロトコルが重要な役割を担っています。
一方、IPv6ではこれらのプロトコルが「近隣探索プロトコル」に統合されています。この近隣探索プロトコルでは、従来のIPv4でエラー通知などに使用されていたICMP(Internet Control Message Protocol)を拡張した ICMPv6が利用されています。
その結果、IPv6においてはICMPの重要性がIPv4よりもさらに増しているといえます。
1つのネットワークインターフェースのIPアドレス数
IPv4では、1つのネットワークインターフェースに設定するIPアドレスは1つだけでした。
これに対し、IPv6では、1つのネットワークインターフェースに対して複数のIPアドレスを設定できます。
この複数のIPv6アドレスを同時に設定可能であるという特徴を使って、サイト全体で利用されているIPv6アドレスを変更するサイトリナンバリングという仕組みもあります。
自動的なアドレス設定方法
IPv4で自動的にアドレスの設定をする場合、IPv4とは異なるプロトコルとして定義されているDHCPを利用するしかありません。
一方で、IPv6で自動的にアドレスの設定をする場合、SLAACというアドレス自動設定のための仕組みがIPv6プロトコルの一部として定義されています。
IPアドレスの運用方法
IPv4では、ISP(個人や企業などに対してインターネットに接続するためのサービスを提供する事業者)から一般ユーザに割り当てられるIPv4アドレスは1つで、それを家庭内やオフィス内で必要に応じてNATを使って運用するのが一般的です。
一方、IPv6では、ISPからアドレスが1つ割り当てられるのではなく、ネットワークプレフィックスを割り当てられるのが一般的です。
そのため、IPv6にはネットワークプレフィックスを割り当てるための仕組みとして、DHCPv6-PDというものがあります。
ヘッダフォーマット
IPv4はヘッダ全体の長さが可変です。なぜなら、プロトコルの機能を拡張するために利用されるOptionフィールドが可変長だからです。
一方で、IPv6のヘッダの長さは40バイトに固定されています。
ここで、IPv6ヘッダにはOptionフィールドが存在しないため、IPv6拡張ヘッダという仕組みが用意されています。
フラグメンテーション
IPv4では、IPv4ヘッダに含まれるフィールドを利用してIPパケットのフラグメンテーションを実現しています。
一方、IPv6ヘッダにはフラグメンテーションのための情報を格納するフィールドがありません。そのため、IPv6拡張ヘッダを利用してフラグメンテーションを行います。
また、IPv4では、IPパケットが経路の途中で利用されるデータリンク層のプロトコルの都合でフラグメンテーションが起きる場合がありましたが、IPv6ではそのようなことがありません。
そのため、IPv6ではPath MTU Discovery(最適なMTUサイズを動的に発見するためのプロセス)が重要になります。
パケットサイズ
IPv4の基本仕様を規定するRFC791では、“All hosts must be prepared to accept datagrams of up to 576 octets”(「最低でも576オクテットのデータグラムを受け取れるように準備していなければならない」)と記述されています。
その上で、受信相手がそれ以上のサイズのデータグラムを受け取れるという保証がある場合、送信側が576オクテット以上のパケットを送信することを推奨しています。
一方、IPv6の基本仕様を規定するRFC8200では、“IPv6 requires that every link in the Internet have an MTU of 1280 octets or greater”(「IPv6はインターネットにおけるすべてのリンクが1280オクテットもしくはそれ以上のMTUであることを要求する」)と記述されています。
そのため、MTUが設定可能なリンクでは最低でも1280オクテットの値を設定することを必須としています。
IPv6はIPv4の576バイトよりも大きいパケットサイズを採用することで、将来的なネットワーク技術の進化にも対応できるようになっているのが特徴です。
ブロードキャストの扱い
IPv6では、ブロードキャストが廃止され、その機能の多くがマルチキャストに置き換えられました。
これにより、特定のノードにのみパケットを送信するため、ネットワークリソースを効率的に使用できるようになりました。
まとめ
表にまとめてみます。
IPv4 | IPv6 | |
---|---|---|
IPアドレス長 | 32ビット | 128ビット |
テキスト表記 | ドット(.)区切りの十進表記 | コロン(:)区切りの十六進表記 |
構成要素 | ネットワーク部とホスト部 | サブネットプレフィックスとインターフェース識別子 |
アドレスのフォーマットの利用方法 | クラス分けにより判別 | アドレスフォーマットからどの機能に使うアドレスか判別 |
IPパケット転送の実現方法 | ARP、IGMPなど | 近隣探索プロトコル |
エラー通知 | ICMPを利用 | 拡張されたICMPv6を利用 |
1つのネットワークインターフェースのIPアドレス数 | 1つだけ | 複数設定できる |
自動的なアドレス設定方法 | DHCP | SLAACなど |
一般的な運用方法 | ISPからアドレスが1つ割り当てられる | ネットワークプレフィックスを割り当てられる |
ヘッダフォーマット | ヘッダ全体の長さが可変 | 長さは40バイトに固定、IPv6拡張ヘッダという仕組みが用意 |
フラグメンテーション | IPv4ヘッダに含まれるフィールドを利用経路の途中でフラグメンテーションが起きる場合がある | IPv6拡張ヘッダを利用、経路の途中でフラグメンテーションが起きない、Path MTU Discoveryが重要 |
パケットサイズ | 最低でも576オクテットのデータグラムを受け取れる準備が必要 | 最低でも1280オクテットの値を設定することを必須 |
ブロードキャストの扱い | ブロードキャストあり | 廃止されマルチキャストに変更 |
こうしてみると、全然違いますね!
さいごに
ここまで記事を読んでくださり、ありがとうございました!
この記事ではIPv4とIPv6の違いについて紹介しましたが、より詳しく知りたい方は「小川晃通 著, プロフェッショナルIPv6 第2版, ラムダノート」や小川晃通氏のYouTube動画などを参考にしてください!
また、プロフェッショナルIPv6のPDF版は無料で利用可能なので、IPv6に興味を持った方はぜひ読んでみてください!
ネットワークは良いですよ!!!
皆さんも素敵なハッピーIPv6ライフを!!!🌸
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