「レガシーコードからの脱却」を読んで、自分のコードに少しだけ優しくなれた話
「このコード、誰が書いたんだよ…」
「……って俺じゃん!!!!!」
そんな経験、ありませんか?
過去の自分が残した“あのコード”に、今日の自分が頭を抱える。
テストはない、意図も分からない、書き直すにも影響範囲が見えない…
そんな日々を送っていた自分にとって、『レガシーコードからの脱却』という本は、なんというか、「ああ、自分だけじゃなかったんだな」と、少し肩の力を抜かせてくれる存在でした。
「変えたいのに、変えられない」あの感覚
自分がこの本に出会ったのは、「リファクタリングを学ばなきゃ」と思い立ったのがきっかけでした。
でも正直、最初はちょっと警戒してたんです。
「また理想論ばっかりで、現場で使えないタイプのやつじゃないか?」
でも、1章を読んだだけで、考えはガラッと変わりました。
これは“現場の泥臭さ”をちゃんと分かってる人が書いた本だ。
そして、泥だらけの自分たちを励まそうとしてくれてる本だ──そう感じたんです。
現場で戦うエンジニアに寄り添う9つの実践
この本では、9つのプラクティスが紹介されています。
でも、ただ「こうすれば良くなりますよ」って言うんじゃなくて、
- なぜレガシーコードが生まれてしまうのか
- 変えようとするとき、どこで躓くのか
- 何から手をつければ、チームで進められるのか
といった、本当にぶち当たる「あるある」の壁について、ものすごく丁寧に、かつ誠実に解説してくれている。
どれも「そうなんだよ、それが難しいんだよ…!」と、思わず本に話しかけたくなるくらい共感できる内容ばかりでした。
「レガシーは恥じゃない」
まず、めちゃくちゃ救われたのがこの視点。
レガシーコードは、失敗ではなく「結果」である。
今まで、「古いコード=汚いコード=直すべき対象」という風に、自分の中でラベルを貼ってたな…と気づかされました。
でも実際は、ある時点では最善の選択だったこともあるし、状況が変わったからこそ問題が顕在化しているだけかもしれない。
そのコードを書いた誰かを責めるのではなく、今そのコードと向き合っている自分たちが、どう活かすか。
そんな視点が、この本を通して自然に身についていった気がします。
「小さな勝ちを積み重ねる」
レガシーコードと向き合うとき、いちばんつらいのは「終わりが見えないこと」でした。
自分でも、「これは良くない」と分かってる。でも、どこから手をつけていいか分からない。
この本では、「いきなり完璧にしなくていい」「今いる場所からできる一歩を踏み出そう」というメッセージが繰り返し語られます。
たとえば、
テストが書けないなら、「観察コード」から始めよう
依存関係を切りたいなら、まず“知る”ことから
名前を直すだけでも、チームの認識が変わる
こうした「小さくて、でも確かな変化」が、チームにも伝播していく。
それを実感として語ってくれているのが、この本の強さです。
「技術だけじゃない」から難しい、でも面白い
読み進めていて印象的だったのは、テクニックの話だけでなく、人間関係やチームの力学にまで踏み込んでいるところ。
レガシーコードの改善って、「技術的に正しいことをやればOK」じゃないんですよね。
むしろ、周りを巻き込みながら進めていくプロセスそのものが最大の難関だったりする。
本書では、改善の取り組みをチーム文化として根づかせる方法、リーダーシップの在り方、反発があったときの向き合い方など、ソフトスキルに関するヒントもかなり充実しています。
「技術書」として読むよりも、「組織で開発を続けていくための指南書」として読んだほうが、しっくりくるかもしれません。
読み終えて、自分のコードに少し優しくなれた
正直、この本を読んだからといって、魔法のようにすべてのレガシーコードが良くなるわけじゃありません。
でも、「怖い」と思っていたものに、ひとつずつ名前をつけて、「分かること」から始めていけるようになった。
それだけで、コードと自分の関係が少し変わった気がしました。
こんな人におすすめです
- 自分の書いたコードに後悔している(でも捨てられない)人
- 「レガシーコードは良くない」だけでは動けないチームの中にいる人
- 技術だけじゃなく、チームとして改善していきたいと考えているリーダー
- 一人でレガシーコードと向き合い続けていて、ちょっと疲れている人
さいごに
レガシーコードと向き合うのって、ほんとに消耗します。
でも、それでも「もうちょっとだけ良くしたい」と思える気持ちがあるなら、この本は、そんなあなたの隣にそっと寄り添ってくれる一冊になるはずです。
きれいなコードの話じゃなくて、泥だらけのコードと戦う人のための、等身大の本。
自分の中の「何かを変えたい」気持ちに、そっと火を灯してくれる本でした。
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