VATSIMのためにレシートプリンターを買った話
はじめまして.
私は普段VATSIMで飛行しており,ヨーロッパ圏のVATSIMにおいてよく用いられているCPDLC(ACARS)のリアリティを出すためにレシートプリンタを導入しました.
受信した内容をレシートプリンタで印刷することにより,実機のようなリアルさを味わえます.
ネットに日本語の記事は皆無でしたので,備忘録的に導入方法を書いていきたいと思います.
abstract
The use of receipt printers in the CPDLC client used by VATSIM is described. This article describes how to install the Hoppie ACARS Client, how to set up the receipt printer, and how to print with the CPDLC. Hoppie ACARS Client is a necessary software for using CPDLC in VATSIM. There are other software packages that support CPDLC, but this software is necessary for printing. The receipt printer was an EPSON TM-T70II was used as the receipt printer. However, any product for which a standard driver for Windows is provided is considered acceptable. Since it is not possible to print from a USB connection, we configured the printer to redirect these to LPT. Finally, this article only briefly describes the use of CPDLC in VATSIM, but it also includes a confirmation of its operation. We hope this article will improve your VATSIM LIFE.
Keywords : vatsim, cpdlc, acars, printer, epson
1. 概要
- X-Plane 11環境のVATSIMにおいてHoppie ACARS(CPDLC)を導入する方法
- レシートプリンタのセットアップ
- ACARSクライアントからの印刷設定
2. 環境
- Windows 11
- X-Plane 11
- EPSON TM-T70II 522
3. VATSIMにおけるCPDLCの概要
3.1 CPDLCについて
本項ではまずCPDLCについて軽く説明したいと思います.
CPDLC(Controller Pilot Data Link Communications)は,航空管制におけるデータ通信のことでACARSというシステムを用いて運用されます.空港におけるクリアランスから航空路における管制移管指示,高度,進路変更指示等の通常音声を用いて行われる航空管制の一部をデータ通信によるテキストをもちいて代替しようというものです.
日本においては大空港におけるクリアランス,エンルートにおける通信移管指示等の限られた項目で導入されています.
3.2 VATSIMにおけるCPDLCの対応
VATSIMにおいては主にヨーロッパ圏の管制官を中心に導入されています.稀に日本においてもCPDLC対応の空港が立つことがありますが,滅多にありません.
なお,VATSIMにおけるCPDLCも現実同様,空港におけるクリアランス,エンルートにおける高度指示,移管指示が行われています.もちろん各管制官がCPDLCに対応している必要がありますが...
また,METARやTAFといった気象情報はインターネットから取得した情報を返信するらしく特にCPDLC対応管制が立っていなくても使用できます.ATISについてもVATSIMのサーバーから直接情報を取得しているようなので,CPDLC対応関係なくATIS局が立っていれば取得できます.
CPDLCによるこれら通信はボタン操作のみで行えますから,特にTWRのみ立っている空港等においては管制官の負担軽減に貢献するものと思われます.また,指示やATIS等の情報を視覚的に確認できるのはパイロットとしても間違いがなく,メモ等の必要もないためかなり楽になります.
3.3 VATSIMで使用できるACARSクライアント
VATSIMにおいては基本的にHoppie氏の開発されたシステム,サーバを用いてACARS通信を行います.Hoppieに対応したクライアントは航空機のFMCに統合されているものから航空機,フラシムの種類関係なく使えるスタンドアロンのものまで様々あります.
Hoppie氏もクライアントソフトを作成されていますが,すでに更新はしておらず,ACARS通信をするためのサーバー管理のみされています.
以下にクライアントソフトの一例を上げます.
- Hoppie ACARS Airborne Client (公式クライアントだが更新されていない)
- EasyCPDLC (VATSIM用の航空機に依らないクライアント,25年2月現在使用不可)
- ToLiss A319/A321/A340
- Fenix A320
なお,今回は印刷をする都合上公式のHoopie ACARS Airborne Clientを使用します.
4. Hoppie ACARSの導入
本記事では一応Hoppie ACARSの導入方法は紹介しますが,具体的な利用方法については詳しく書きませんので,以下動画等を参考にご自身で調べられてください.
気が向いたら説明記事を書くかもしれません.
4.1 ソフトウェアのインストール
4.1.1 Hoppie ACARSのインストール
まずは必要なソフト類をインストールしていきます.
Hoppie氏が必要なソフトを一括でインストールできるインストーラを用意してくださっていますのでそちらを利用します.
下記サイトのサイドバーにあるDownloadからダウンロードし,画面に従ってインストールしてください.for MSFSとありますがX-Planeをご利用のみなさんもこちらをご利用ください.
インストールが終われば以下の4つのプログラムとそれらを一括起動するバッチがインストールされるはずです.
-
ACARS Airborne Station
ACARSサーバーと通信するソフトです.後ほど行うHoppieサーバーへのアクセスキーなどもこのソフトに設定します. -
WFAcars
MSFSやX-Planeなどのフライトシミュレータと通信し,飛行位置等を取得するソフトです. -
MCDU
実際にCPDLCの操作を行うソフトです.見た目はボーイング機に搭載されているCDUですが,ACARS関連の操作しかできないダミーターミナルです. -
747 Broker
上記の3ソフトをまとめ,相互通信させるソフトです. -
Start Hoppie ACARS
上記4ソフトを一括起動するためのバッチファイルです.
4.1.2 XPUIPCのインストール
次に先ほどインストールしたWFAcarsとフラシムとの通信をするプラグインをインストールします.
MSFSの方はFSUPICを,X-Planeの方はXPUIPCをインストールしてください.
筆者はX-Planeユーザのため,XPUIPCのインストール方法のみ説明しますが,MSFS民の方はご自身で調べられてインストールしてください.
どうやら最新版のXPUIPCはX-Plane 11.53では動作しないようなので古いXPUIPC 2.0.3.8をインストールします.
インストール方法詳細
- 上記ページよりXPUIPCをダウンロードします.
- ダウンロードしたファイルを右クリックしすべて展開より解答します.
- 解答したフォルダ内の
XPUIPC
フォルダを選択し切り取ります.
- X-Planeインストールフォルダ内の
Resources\plugins
フォルダに貼り付けてください.
特に設定を変更していなければC:\Program Files (x86)\Steam\steamapps\common\X-Plane 11
にインストールされているかと思います.
- 次にプラグインの設定をします.
その前にPCのIPアドレスをメモしておいてください.おそらくコマンドプロンプトでipconfig
コマンドを実行すると表示されるかと思います. - 先ほど貼り付けたXPUIPCフォルダ内の
XPUIPC.ini
を右クリックし,編集を押してください.
- XPUIPC.ini冒頭にある
Server Address
の項目をPCのIPアドレスに書き換えてください.
XPUIPC Version 2.0.3.1 ini file
[XPUIPC SETTINGS]
Tune value = 00
Server Address = 192.168.1.XXX
XPUIPC2XPUIPC Client mode = No
︙
4.2 Hoppie ACARS アクセスキー取得
hoppie ACARSのサーバに接続するためにはアクセスキーを取得する必要があります.
下記ページに必要事項を記入しRegisterを押すと,メールにてアクセスキーが送られてきます.
なお,Anti abuse riddleの項目はdogです.
4.3 ソフトウェアの設定
4.3.1 互換性設定
レシートプリンタから印刷するうえで,そのままでは動作しなかったため,Airborne Clientに互換性設定を行います.
C:\Program Files (x86)\Hoppie\ACARS-MSFS\prg\acarsair\bin
内にあるacarsair.exe
のプロパティを開きます(右クリック>プロパティ).
互換性タブ>互換モードでこのプログラムを実行する>Windows XP SP3 を選択しOKを押します.
なお,本設定をすることにより当環境では,AirborneClient起動時にタスクバーが激しく点滅するという現象が起きましたが,鬱陶しいだけで動作に影響はないので我慢しましょう.
4.3.2 Hoppieアクセスキー設定
スタートメニューのHoppieフォルダに追加されているであろうStart Hoppie ACARSもしくはACARS AirborneよりHoppie ACARS Airborne Stationを起動します.
次にFile>Setup...より設定を開きます.
Logon Codeに先ほど取得したアクセスキーを入力します.
また,印刷を有効にするためにEnable Printingを有効にしておきます.
※なお,Print Directを有効にするとATCからメッセージを受信した時点で勝手に印刷してくれるはずなのですが,当環境ではうまく動作しませんでした.
5. レシートプリンタのセットアップ
レシートプリンタはWindows用にドライバが提供されているものであればどういったものでも利用できると思います.リアリティを求めるのであれば,80mm幅かつオートカッター無しで自分で切り取るタイプの物を購入すると実物に近いかと思います.
特に何も考えず58mmのプリンタを買った馬鹿者はこの私です.
なお,ここではEPSON TM-T70IIを利用します.
一応トグル内に本機種におけるドライバ等の導入方法を簡単に記しておきます.
これも気が向いたら別記事等で詳細に書くかも
EPSONレシートプリンタの導入方法
- 電源アダプタとUSBもしくはLAN,シリアル,パラレルケーブル等を接続します.
- 当然ロールもセットして説明書に従い,いい感じの場所に設置します.
- メモリースイッチ等を設定する必要は基本的にはありませんが,せっかくレシートプリンタなんてものを誤家庭に導入したので色々遊んでみましょう.
- EPSONの当該製品サポートページに行き,下記の手順に従いましょう.
なお,製品型番はラベル記載の型番+3桁の数字(今回はTM-T70II 522)で探しましょう.
EPSON サポートページ
- 購入した製品のソフトウェアダウンロード画面まで行き,EPSON Advanced Printer Driverをダウンロードします.これが,通常のWindows用ドライバになります.
- また,必要に応じTM-T70II Utilityやファームウェアアップデータ等もダウンロード,インストールしましょう.ただ,ACARSで使用するだけならこのあたりは必要ありません.
- 先ほどダウンロードしたドライバを説明書に従いインストールします.
- Windowsの設定よりEPSON TM-T70II Receiptを開きます.
(EPSON Coupon Generator(TM-T70II)は自作アプリ等で使う用と思われます.) - 以下2項目について購入したロール幅になっていることを確認します.
- 印刷設定>用紙/品質>詳細設定>>用紙/出力>用紙サイズ
- プリンターのプロパティ>デバイスの設定>>インストール可能なオプション>ロール紙幅
- APDを用いる場合プリンタプロパティにおいてESDPRT001ポートを利用していることを確認します.
Airborne StationソフトはLPT1接続のプリンタに印刷する仕様のため,パラレル接続のプリンタ以外の場合はUSB等の接続をLPTにリダイレクトさせる設定が必要になります.
- 使用するプリンタのプロパティを開き,このプリンターを共有するを有効にし共有名をメモしてください.
- コマンドプロンプトを管理者権限で起動し以下のコマンドを実行します.
Net use lpt1: \\localhost\共有名 /persistent:yes
- (オプション) 上記コマンドのバッチファイルを作成
4.を行う場合,このバッチファイルをACARSクライアント一括起動バッチファイルと同じディレクトリに配置してください.
恐らくC:\Program Files (x86)\Hoppie
にあると思われます。
@echo off
set PATH1="%0"
whoami /priv | find "SeDebugPrivilege" > nul
if %errorlevel% neq 0 (
@powershell start-process "%PATH1%" -verb runas
exit
)
echo Starting USB Printer by LPT...
Net use lpt1: \\localhost\共有名 /persistent:yes
- (オプション) ACARSクライアント一括起動バッチ修正
ACARSクライアント起動と同時にプリンタのLPTリダイレクト設定もするために,一括起動バッチを修正します.
C:\Program Files (x86)\Hoppie\start_acars.bat
を編集します.
@echo offの後ろに下記コードを追記します.
echo Setting receipt printer to LPT1...
start LPT_SET.bat
6. 動作確認
- 一括起動バッチより各ソフトを起動します.
- MCDU>ATC>FLT NO に適当なフライトナンバーを入力します.
- Airborn Stationソフト下部,ステータスバーのインジケータが緑色になっていれば準備完了です.
- MCDU>ACARS>REQUESTS>WEATHER>AIRPORTに適当な空港コードを入力し,同ページREQUEST METARを選択します.
- ACARS UPLINKのメッセージを受信したらRECEIVED MESSAGESを選択し,受信したMETARを選択します.
- PRINTを選択しプリンタより印刷されることを確認します.
- なお,他のメニューにおいてもPRINTのオプションが表示されていれば印刷することができます.
また,自動カット機能が搭載されているプリンタでも自動カットされないためどうにかして切り取ってください.
7. トラブルシューティング
- 印刷されない
- プリンタのドライバインストール自体が正常にできていない
→ 各プリンタのユーティリティ等からテスト印刷してみましょう.
それで印刷できなければプリンタ自体のセットアップを見直してみましょう. - LPTへのリダイレクトが正常にされていない
もしLPTへ正常にリダイレクトで来ていればコマンドプロンプトで
ECHO HELLO,WORLD > LPT1
などと入力するとそのまま印字されます.
エラーが出ればこの設定関連が異常ということです.
- プリンタのドライバインストール自体が正常にできていない
8. 終わりに
簡単にではありますが,以上がVATSIM環境においてレシートプリンタを導入する方法でした.
これできっと皆さんのVATSIM LIFEがより素晴らしいものになることでしょう.
もし,わからないことがあればTwitterのDM等でお問い合わせいただければ生きている限りはお答えします.
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