🦜
AI-Nativeとは、Nativeの意味論
「AI に最適化された」という意味合いで AI-Native を使っていいんだっけ。ふと疑問を持って調べていたら -Native
の用法に違いがあることに気づいた。結論として、対象が人から技術に変わる中で多義的な意味を獲得している。
代表的な -Native
Digital-Native
デジタル技術が普及した環境で生まれ育った世代を指す言葉。ここでの「Native」は、ラテン語「nativus」(生まれた、生来の)の原義をそのまま保持している。
- 生まれながらにしてデジタル技術に囲まれて育った
- デジタル機器やインターネットが「当たり前」の存在として慣れ親しんだ状態
- 意識的に学習せずとも身につけた能力(≒先天的特性)
Mobile-Native
同様に、スマートフォンが普及した時代に育った世代を表す。
- スマートフォンが生活の一部として存在
- タッチインターフェースが当たり前でキーボードよりも慣れている
- PCよりもモバイル端末での体験を重視するモバイルファースト思考
これら二つは、どちらも人を対象とし「その環境で生まれ育った」という本来の「Native」の意味。
Cloud-Native
「クラウドが当たり前に存在する世代」という意味ではなく、「クラウド環境の特性や利点を最大限活用するために設計された技術」という意味。
- マイクロサービス設計
- コンテナ化
- 自動スケーリング
- DevOps統合
「生まれながらの」という原義ではなく「最適化された」という意味に変化。人ではなく技術を対象とする言葉。
この変化は、「生まれながらの」という原義を隠喩的に拡張し、クラウド環境に「自然に適合する」または「そのために設計された」という新しい意味を付与したもの。メタファー(隠喩)による意味拡張が起きている。言語学でいう「semantic change」(意味変化)。
AI-Native
原義的な意味での AI-Native と、意味変化した最適化されたという意味での AI-Native の多義的な言葉。
世代論としてのAI-Native
- AI 技術が当たり前に存在する時代に育った世代
- AI ツールを自然に使いこなす能力
- AI との協働を前提とした思考パターン
- 「Google ではなく 生成 AI で調べる」
- それをさらに超えて、親や教師よりも AI から学んだ比重が大きい世代
技術論としてのAI-Native
- AI の特性(学習能力、パターン認識、自動化)を最大限活用する設計
- AI が効率的に処理できる形式やワークフロー
- AI との協働を前提とした システムアーキテクチャ
冒頭の疑問に戻ると、「AI に最適化された」という意味合いで、例えば「AI-Native な技術スタック」と言ってもいいんだっけに対する回答は Yes。技術論的な意味合いも持つため、この用法は適切である。
Discussion