クラウドプロバイダー別データストア比較とDatabricks連携ガイド
1. はじめに
クラウド環境でのデータ分析基盤を構築する際、適切なデータストアの選択は重要な意思決定の一つです。さらに、Databricksのような強力なデータ分析プラットフォームと連携させるためには、互換性の高いサービスを選ぶことが成功への鍵となります。
この記事では、主要クラウドプロバイダー(AWS、Azure、Google Cloud)が提供するデータストアサービスを比較し、さらにDatabricksとの連携が容易なサービスについても解説します。
2. データタイプから見るサービス対応表
まず、主要クラウドプロバイダーが提供するデータストアサービスを、データタイプごとに比較します。
データタイプ | Google Cloud | Azure | AWS |
---|---|---|---|
リレーショナルデータベース | ・Cloud SQL ・AlloyDB ・Cloud Spanner |
・Azure SQL Database ・Azure Database for PostgreSQL |
・Amazon RDS ・Amazon Aurora |
NoSQLデータベース | ・Cloud Bigtable ・Firestore |
・Azure Cosmos DB | ・Amazon DynamoDB ・Amazon Keyspaces |
データウェアハウス | ・BigQuery | ・Azure Synapse Analytics | ・Amazon Redshift ・Amazon Athena |
オブジェクトストレージ | ・Cloud Storage | ・Azure Blob Storage | ・Amazon S3 |
データレイク | ・Cloud Storage | ・Azure Data Lake Storage Gen2 | ・Amazon S3 + AWS Lake Formation |
3. Databricksとの連携
Databricksは、すべての主要クラウドプロバイダー上で動作し、各クラウドプロバイダーのサービスと緊密に統合されています。各プロバイダーのどのデータストアサービスがDatabricksとの連携に適しているか見ていきましょう。
Databricksとの連携が容易なデータストア/サービス
データタイプ | Google Cloud | Azure | AWS |
---|---|---|---|
リレーショナルデータベース | - | ・Azure SQL Database | ・Amazon RDS |
NoSQLデータベース | - | ・Azure Cosmos DB | ・Amazon DynamoDB |
データウェアハウス | ・BigQuery | ・Azure Synapse Analytics | ・Amazon Redshift |
オブジェクトストレージ | ・Cloud Storage | ・Azure Blob Storage | ・Amazon S3 |
データレイク | ・Cloud Storage | ・Azure Data Lake Storage Gen2 | ・Amazon S3 + AWS Lake Formation |
クラウドプロバイダー別のDatabricks連携の特徴
Azure Databricks
Azure DatabricksはMicrosoftとDatabricksが共同開発した一級のサービスで、Azureポータルからワンクリックで起動でき、Azure関連のセキュリティやデータサービスとネイティブに統合されています。特にMicrosoft Fabricとの連携が強化されており、同じオープンDelta Parquetストレージフォーマットを使用しているため、シームレスな連携が可能です。
主な連携サービス:
- Azure Synapse Analytics
- Azure Data Lake Storage Gen2
- Azure SQL Database
- Azure Blob Storage
AWS Databricks
AWS上のDatabricksでは、すべてのS3データをシンプルでオープンなレイクハウスプラットフォーム上で保存・管理できます。AWSのGravitonインスタンスをサポートしており、Amazon EC2上で高い価格パフォーマンスを提供します。PrivateLinkを使用してVPC内にプライベートエンドポイントを確立し、DatabricksワークスペースとAWSサービス間のトラフィックを安全に保つことができます。
主な連携サービス:
- Amazon S3
- AWS Lake Formation
- Amazon Redshift
- Amazon RDS
- Amazon DynamoDB
Google Cloud Databricks
Google Cloud上のDatabricksは、BigQueryやLookerなどのGoogleのデータ製品と統合されたオープンレイクハウスプラットフォームを提供します。特にGoogle Kubernetes Engine(GKE)上でのコンテナ化されたデプロイメントをサポートしており、これは任意のクラウド上で初めてのKubernetesベースのDatabricksランタイムです。Google Cloudのセキュアで管理されたKubernetesサービスを活用することで、より速く低コストでワークロードを実行できます。
主な連携サービス:
- BigQuery
- Cloud Storage
- Looker
4. 選択のポイント
Databricksと連携するクラウドサービスを選ぶ際の主なポイントは以下の通りです:
-
既存の環境との統合:
既に利用しているクラウドプロバイダーがある場合、そのプロバイダー上のDatabricksを利用するのが最も効率的です。 -
データレイク/ウェアハウスの選択:
各クラウドプロバイダーのデータレイクとデータウェアハウスサービスはDatabricksとの親和性が特に高いため、優先的に検討すべきです。- Azure: Azure Data Lake Storage Gen2とAzure Synapse Analytics
- AWS: Amazon S3 + AWS Lake FormationとAmazon Redshift
- Google Cloud: Cloud StorageとBigQuery
-
パフォーマンス要件:
データ量やレイテンシ要件に応じて、適切なサービスを選択しましょう。 -
コスト:
各サービスの料金体系は異なるため、予算に応じた選択を行いましょう。
5. 分析ケースに応じたデータストア選定
ユースケース1:
クレジットカード詐欺検知やトレーディングシステムにおける異常な取引パターンをリアルタイムで検出
データの特性:
- 高頻度のトランザクションデータ
- リアルタイム処理が必要
- 履歴データと現在のデータの組み合わせ分析
推奨データストア構成:
Google Cloud | Azure | AWS |
---|---|---|
・Cloud Bigtable (ストリーミングデータ) ・BigQuery (履歴分析) |
・Azure Cosmos DB (ストリーミングデータ) ・Azure Synapse Analytics (履歴分析) |
・Amazon DynamoDB (ストリーミングデータ) ・Amazon Redshift (履歴分析) |
Databricksとの連携ポイント:
- ストリーミングデータ処理にDatabricksのStructured Streamingを活用
- 異常検知モデルをDatabricks上で開発・デプロイ
- 履歴データの分析にDatabricks SQLを使用
ユースケース2: 工場内の多数のセンサーからデータを収集し、予防保全や品質管理に活用
データの特性:
- 時系列データ
- 多種多様なセンサーからの高ボリュームデータ
- エッジでの前処理とクラウドでの分析の組み合わせ
推奨データストア構成:
Google Cloud | Azure | AWS |
---|---|---|
・Cloud Storage (生データ) ・Cloud Bigtable (時系列データ) ・BigQuery (長期分析) |
・Azure Data Lake Storage Gen2 (生データ) ・Azure Cosmos DB (時系列データ) ・Azure Synapse Analytics (長期分析) |
Amazon S3 (生データ) ・Amazon Timestream (時系列データ) ・Amazon Redshift (長期分析) |
Databricksとの連携ポイント:
- スケーラブルなETLパイプラインの構築
- 予知保全のための機械学習モデル開発
- リアルタイムダッシュボードとアラート機能の実装
6. データストア選定の一般的な基準
様々なユースケースに適したデータストアを選定する際の一般的な基準は以下の通りです:
- データの種類と構造: 構造化データ、半構造化データ、非構造化データのどれが主体か
- データ量: 現在のデータ量と将来のボリューム予測
- クエリパターン: 分析的クエリが主体か、トランザクション処理が主体か
- レイテンシ要件: リアルタイム処理が必要か、バッチ処理で十分か
- スケーラビリティ: データ量の増加に応じてどの程度スケールアップ/アウトが必要か
- コスト: ストレージコスト、処理コスト、運用コストのバランス
- 統合要件: 既存システムや他のデータソースとの連携のしやすさ
- セキュリティとコンプライアンス: データガバナンスとセキュリティ要件の充足度
7. まとめ
クラウドプロバイダーが提供する様々なデータストアサービスを理解し、Databricksとの連携を考慮した上で適切なサービスを選択することで、効率的なデータ分析基盤を構築することができます。ビジネスケースに応じた適切なデータストア選定がデータ分析プロジェクトの一つの鍵となりますので、本記事が参考になれば幸いです。
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