
データの世界を航海する:人文科学・社会科学のためのデータサイエンスの数学入門
現代社会は、情報の海とも言える膨大なデータで満ち溢れています。SNSのトレンドから経済の動向、個人の購買履歴に至るまで、あらゆる事象がデータとして記録され、分析されています。この新しい世界を理解し、航海するためには、新しい種類の地図、すなわち「データサイエンス」という読み書き能力が必要不可欠です。 本書は、これまで数学とは縁遠いと感じてきた人文科学、社会科学、芸術などの分野を専攻する文系学生の皆さんに向けて書かれました。データサイエンスと聞くと、複雑な数式やプログラミングが壁のように感じられるかもしれません 。しかし、本書は、その「数学の壁」に対する考え方を根本から変えることを目指します。 ここで約束するのは、従来とは異なるアプローチです。抽象的な理論から入るのではなく、まず直感を働かせ、具体的な応用例から学びます。数学を、解くべきルールの集合としてではなく、社会の動向を分析したり、経済データを解釈したりといった、興味深い問いに答えるための「言葉」や「道具」として扱います 。データサイエンスで成功するために必要なのは、「数学が得意な人」であることよりも、この新しい言葉を学ぼうとする「好奇心旺盛な人」であることです 。 実は、皆さんが文系の学問で培ってきたスキル、すなわち批判的思考力、文脈を理解する力、そしてコミュニケーション能力は、データサイエンスの世界でこそ真価を発揮します 。データを単なる数字の羅列としてではなく、その背景にある物語や意味を読み解き、他者に分かりやすく伝える力は、これからのデータサイエンティストに最も求められる資質の一つです。 本書は4つのパートで構成されています。この旅は、データを言葉で表現することから始まり、データから学習するシステムを構築するまで続きます。さあ、一緒にデータという新しい世界を探検するための、あなただけの地図を作り始めましょう。