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初心者向け:開発環境構築の基本ガイド - 仮想環境・Docker・クラウドを理解しよう

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1. はじめに

皆さんこんにちは!プログラミングを学び始めた方やこれから開発環境を整えようという方にとって、環境構築はちょっと敷居が高いですよね。「突然動かなくなった」「自分のPCでは動くのに、友人のPCでは動かない」「設定を共通化したいのに、何が違うのかわからない」なんてこともあるでしょう。

そんな問題を解決してくれるのが 仮想環境やDocker、そしてクラウド環境 です。
本記事では、これらの概念や基本的な使い方をわかりやすく解説しつつ、初学者でも扱えるような簡単な方法を紹介します。一緒に学んでいきましょう!


2. 開発環境構築の基本的な概念

まずは基本から。そもそも開発環境って何?と思っていませんか?

開発環境 とは、アプリケーションを作成・実行・テストするための環境のこと。少し言葉が難しいですが、エンジニアがプログラムを書いて動かすために必要な「場所」や「道具一式」のことです。具体的には:

  • OS(オペレーティングシステム):Windows、macOS、Linuxなど
  • プログラミング言語:Python、JavaScript、Javaなど
  • ライブラリやフレームワーク:実際の開発で使用する部品や仕組み

などが含まれます(場合によって、エディタやネットワーク構成なども含むでしょう)。
これらが適切に設定されていないと、プログラムは正しく動作しません。

3. 開発環境の種類と選択肢

目的に合わせて構築する開発環境を選択することも重要です。
ここでは、大きく分けて5つの環境構築の方法について紹介します。

--時間がない人向けの比較表--

構築方法 メリット デメリット 代表的なツール
ローカル 高速パフォーマンス
初期導入が簡単
環境汚染
環境差異
---
仮想環境 言語レベルの環境分離
導入が比較的簡単
言語に限定
管理がやや煩雑
Python:venv, conda, pipenv
Node.js:nvm + npm ci
仮想マシン OSレベルの環境分離
セキュリティ
リソース消費が大きい
設定の複雑さ
VirtualBox, WSL2,
Parallels Desktop
コンテナ 移植性と一貫性
スケーラビリティ
学習コストの高さ
デバッグの複雑さ
Docker, Podman
クラウド ゼロセットアップ
どこからでもアクセス
スペックの自由度
協業が手軽
インターネット依存
データセキュリティ
GitHub Codespaces, AWS Cloud9

3-1. ローカル環境

自分のPCに直接インストールする従来の方法。
特別な技術を必要としないため環境構築は容易ですが、プロジェクトごとのバージョン管理が困難です。理解せずに使っていると、いわゆる「突然動かなくなった」や「私のPCでは動きます」が発生する原因になります。

  • メリット:
    • 高速なパフォーマンス(オーバーヘッド[1]なし)
    • 導入が簡単
  • デメリット:
    • 環境汚染(異なるプロジェクト間の競合、システム全体への影響、クリーンアップ困難)
    • 環境差異(環境の再現性が低い → 別の端末で動作しない現象)

環境競合
環境競合の問題
環境差異
環境差異の問題

3-2. 仮想環境

言語レベルでライブラリ依存関係を分離する方法。
例えば、Python 3.8で動作するアプリAとPython 3.11で動作するアプリBがあったとき、ローカル環境では同時に両方の環境を維持するのは困難です。あまり理解しないまま、ローカル環境に変更を加えてしまうと、正常に動作していたはずのアプリが急に動作しなくなることがあります。
仮想環境を使えば、1つのPC上で複数の独立した環境を構築(プロジェクトごとにライブラリを管理)でき、プロジェクトに合わせて環境を切り替えることで環境競合を回避できます。また、バージョン管理/環境構築用ファイルを利用することで複製/共有も可能です(例、Python系: requirements.txt, Node.js(nvm): .nvmrc)。一方、あくまでも言語レベルの関係しか保持できず、OSレベルの依存関係には対処できないので、環境差異の問題を解決できない可能性がある点には注意が必要です。

  • メリット:
    • 言語レベルの環境分離(プロジェクト間の独立性、クリーンな状態維持)
    • バージョン管理(複数バージョンの環境を管理)
    • 導入が比較的簡単
  • デメリット:
    • 言語に限定(OSレベルの依存関係には対応できない)
    • 管理がやや煩雑(複数環境の把握、環境の切り替え忘れ問題)
  • サービス例:
    • Python系:venv, conda, pipenv
    • Node.js系:nvm(※厳密には異なる[2]
    • 全般(複数言語対応):asdf

仮想環境
仮想環境のイメージ

3-3. 仮想マシン(VM)

PC上にOSレベルで独立した環境を作成する方法。
1つのPC上で複数の独立した環境を構築することができます。例えると、1つのPCの中で複数の別のPCを起動できると言ったところでしょうか。OSレベルで完全に独立した環境を作成できるので、セキュリティ面を求める場合やOSレベルでの検証を行いたい場合の選択肢になります。
実現方法には"ホスト型"と"ハイパバイザ型"があり、個人利用なら設定の容易なホスト型、大規模利用ならよりオーバーヘッドの少ないハイパバイザ型を利用すると良いでしょう。

  • メリット:
    • OSレベルの環境分離(複数OSでの検証、高いセキュリティ)
  • デメリット:
    • リソース消費が大きい(起動時間、ディスク・メモリ容量消費)
    • 設定の複雑さ
  • サービス例:
    • VirtualBox, VMware, WSL2, Parallels Desktop

VM
仮想マシン比較(左)ローカル環境(仮想化なし)、(中央)ホスト型、(右)ハイパバイザ型

3-4. コンテナ環境(Docker)

アプリケーションとその依存関係をパッケージにまとめる仕組み。
仮想マシン(VM)と比較されることが多いですが、実現方法が異なります。
VMのイメージが「PC上で別のPCを丸ごと起動する」のに対し、コンテナは「必要な部分だけを切り出して動作させる」イメージです。もっとかみ砕くと、仮想マシンが集合住宅(ゲストOSごとに独立)に対し、コンテナ環境はシェアハウス(ホストOSのカーネルを共有)でしょうか。シェアハウスの一部屋(コンテナ)まるっとお引越しすれば別の家(PC)でも同じ動作をするはずですよね。それでいて家(VM)ごと準備するよりは楽というわけです(余計分かりにくい...?)。

この特徴から、どの環境でも同じように動作する移植性と一貫性が高く、VMに比べて軽量で高速な点も魅力的でしょう。
一方で、学習コストが高い点や、コンテナをまたいだ処理など、用途によってはデバッグが複雑化する点には注意が必要であり、すぐに開発をスタートしたい人には向きません。

  • メリット:
    • 移植性と一貫性(どの環境でも同じように動作、開発・本番環境の統一)
    • 軽量(VMと比較して高速起動・低リソース)
    • スケーラビリティ(Kubernetes など)
  • デメリット:
    • 学習コスト
    • デバッグが複雑
    • Linuxカーネル前提(Windows, MacではDocker Desktopを利用)
  • サービス例:
    • コンテナランタイム:Docker, Podman
    • 開発支援(Windows/Mac):Docker Desktop, Podman Desktop
    • オーケストレーション:Kubernetes

コンテナ
コンテナ型

3-5. クラウド環境[3]

インターネット上の環境で開発する方法。
インターネット上で開発環境が提供されるため、このサービスを利用すれば開発環境を用意する必要はありません。インターネットさえあればどこからでも同一環境にアクセス可能になります。開発に必要な機器の更新作業がなくなる点も魅力的です。
一方で、サービスに大きく依存する点には注意が必要です。また、秘匿性の高いデータを扱いたい場合にも注意が必要です。

  • メリット:
    • 設定不要
    • どこからでもアクセス
    • スペックの自由度(目的に合わせてスペックを変更可能)
    • 手軽な協業(リアルタイム共同編集)
  • デメリット:
    • インターネット依存(オフライン作業不可、通信速度に依存)
    • サービス依存(カスタマイズに制限、ベンダーロックイン)
    • データセキュリティ(機密データはローカルで暗号化しておくなど追加の対策が必要)
  • サービス例: AWS Cloud9, GitHub Codespaces

4. 構築方法の選択基準

これまでの内容から、環境構築について少しは理解が深まってきたのではないかと思います。それぞれの特性を踏まえて、利用シーン別に簡単な選択基準を設定してみました。
(※あくまでも一例です。用途に合わせて選択してください。)

シーン 推奨環境 理由
プログラミング学習 クラウド or ローカル 最初は手軽にスタート(ネット環境によって選択)
個人開発[4] 仮想環境 or クラウド コスト効率とパフォーマンス
チーム開発(プロトタイプ) クラウド 環境統一と協業効率、速度重視
チーム開発(本格運用) コンテナ
仮想マシン
環境統一と協業効率、開発・本番環境の一致
セキュリティ重視

次回は、具体的な構築方法について、簡単な例をもとに紹介する予定です。


参考文献

公式

記事

その他

脚注
  1. オーバーヘッド:余分なリソースや時間のこと。パフォーマンス低下につながる。仮想化では仮想化ソフトウェアの経由、クラウドでは通信の発生などが原因で発生する。 ↩︎

  2. バージョン切り替え用のツールであり、厳密には仮想環境ではないが便利なので併記。npm ciとの併用が推奨。 ↩︎

  3. ここではクラウドIDEを想定している。 ↩︎

  4. OS依存の考慮など、用途によってはVM/コンテナも有力候補。 ↩︎

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